21
旧時代の人類はジャパニアの小さな研究施設の地下に住んでいた。
「……もしもし。風間修一はいるかね?」
木隠は着いてすぐ、そばにいた女の子に話しかけた。
中は凡そ1700人ほどの人間がいた。この狭い空間にずっと……、と考えるとサリドは胸が締め付けられそうになった。
「やぁ、シュウイチくん」
闇潜、ストライガーが声をかけたのは男だった。背はサリドよりも高く、白いTシャツを着てジーパンを履いていた。ただ、一番目を惹かれたのは、彼が持つその剣だった。
いったいいつの時代に作られていたのか、彼には解らない。神である使徒たちですら年代の特定は出来なかった。
それは昔は血がこびりついていたのだという。だが、何とかそれを落としたのだとか。彼はどうやって手に入れたのだろうか?
「……あぁ。ストライガーさんですか。どうしたんですか?」
彼は健やかな笑みを浮かべて、言った。
「彼らが会いたいと言ってね?」
「そうですか。……はじめまして。僕の名前は風間修一と言います」
「僕はサリド。サリド・マイクロツェフ。そして隣はグラム・リオールだ」
そう言ってサリドとグラムは修一に握手を交わした。
「……そういえば、お主が持っていたリンゴだったかな、調査を重ねた結果莫大なエネルギーが得られることが解った。資本四国のヒュロルフタームの動力にも近いものがある」
木隠は修一に思い出したかのように言った。
「なるほど。そうなんですか。……じゃあそれがあればエネルギーはなんとかなりますね……」
修一は疲れたように近くの椅子に腰かけた。
「どうも、サリドです」サリドは修一が石に腰かけたのを観て、見計らったように隣に座った。
「あぁ。……君か」
修一は眠たそうに懐から葉巻を取り出し、火を付ける。修一はサリドにも渡そうとしたが――ストックが一個もなかったのか、そのまま手を葉巻の方に回した。修一は気持ち良さそうに白い煙を吐いて、
「……どうした? 何か用か? 用が無ければ話しかけることもないか」
「リンゴ……とはいったい?」
「リンゴ? あぁ。僕が持ってた木の実の事だ」修一は懐から小さなリンゴを取り出す。それは黄金のように光輝いていた。「……恥ずかしいことに僕は記憶喪失でね? 彼女……秋穂に名前をつけてもらったのさ。風間修一という名前をね」
「……それじゃ、ほんとの名前は……?」
「わからないよ。僕が最後に覚えているのは、この剣を持って秋穂とともに冷凍保存をされたってことだけだ」
修一の顔はどこか悲しそうだった。だが、その悲しみをサリドは解るはずもなかった。