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「結局僕は何を言えばよかったんだ?」
サリドは頭を撫でながら(今も瘤が残っている)、グラムに尋ねた。
ちなみにフランシスカは今はリリーと何でもないようにガールズトークに花を咲かせていた。
「女子って仲直りが早いよなぁ……。なんでだろ?」
「さぁな。女子にならない限り解らん」
「……で、さっきの話だけど」
「あぁ。……たぶん何を言ってもお前の頭蓋にいくダメージは変わらないと思うぞ」
「だよなぁ……」
そう言いながらサリドはまだ痛む頭を撫でた。
「話はまたまた変わるが」
「どうした? 今度は一体なんなんだ?」
グラムの問い掛けに、サリドは少し苛立ちを覚え始めた。
そして、呟く。
「だから……ここは一体何処なんだ?」
言った瞬間、辺りの空気が凍りついた。
†
ジャパニアは北に一つ、それと西に二つ、合わせて三つの島とそれを中心として逆くの字型の島から成り立つ島国である。
だが、歴史は世界の中の何れよりも深く残り、『世界の生まれた地』とも称されている程であった。
「たしか……ジャパニアには神道という宗教が根強く残っているんだったね。『全ての物に神は在る』という考えのもと、八百万神っていうものがあるくらいだ」
「つまり……、何から何まで全てに神がいるってことなのか? 人工物とかもか?」
「人工物もそれに入るよ。僕は詳しくは解らないけど物を長く愛用していくと神が物に堕ちてそれが神へと昇華するらしい。だから人工物にも神は存在する、ってわけ」
サリドとグラムは海岸沿いを歩き、村を探していた。その最中の話である。
「ふぅん……。にしても解らん。異文化、とは言うがよくひとつの世界にここまでの文化が根付いたんだなぁ……」
「グラム。そこは世界の歴史学者の研究テーマのひとつにもなっていることさ。ようは“世界はなぜここまで数多の文化が根付いたのか?”ということ、これが解明されれば世界の謎もまた一歩紐解かれるんだろうね」
「……サリド。あれ、煙じゃないか?」
「君はどうしてそうも簡単に人の話を無視出来るんだ。……あぁ確かにそうだね。……って待てよ。フランシスカたちはどうしたんだ?」
「どうしたも何もお前の後ろにいるだろ?」
グラムが親指で後ろを指差すと、サリドもその方を見た。
すると確かに先程よりは明らかにペースの落ちたフランシスカたちがいた。