行間 Ⅲ
そのころ、シャルーニュ公国。
「はい。つまり……、どういうことですか?」ロズベルグと呼ばれる少女は上司と思しき金髪の女が話していることに疑問を覚えた。
「何か、解んないけど、神殿協会がレイザリー城を陥落させたっぽくて、今はジャパニアに向かってるんだと」女はつまらなそうにタブレットを見て、「そんでうちらもジャパニアに行け、ってわけよ。まぁ、めんどくさいけどねぇ」
「ちょっと、待ってくださいよ。僕一人で? シャルーニュにはヒュロルフタームは一台しかないじゃないですか」
「大丈夫。新しいヒュロルフタームを建造していてね。名前が決まってないけど……仮称6号機に載ってもらう人間が一人居るわ」
「仮称6号機……だって?」
「ええ、今更驚くこともないんじゃない? だってヒュロルフタームは今や全世界で10号機までの製造が決定しているからねぇ」
「……ま、それはおいておいて。どこにいるの?」
「あなたの後ろにいるじゃない」
「なっ……」そう言ってロゼが振り返ると、そこにいたのは、それを待ち構えているかのように立っていた、「初めまして。ウィンド・キッシュホックと言います。以後よろしく」
和かに笑う青年だった。しかしそれが普通と違うのは灰色のノータ・スーツを着た人間だった。
ヒュロルフタームの設計士を目指す学生と、貴族であるのに軍籍にいる軍人。
花の独身貴族の軍人と、母をクーデターで失った軍人。
計画の歯車に乗せられ、父を失ったノータと、一般人からのし上がったノータ。
ディガゼノン聖軍と、すべてを裏切ったレイザリー王国。
暗躍する二つの組織。
そして、男装の麗人と謳われるノータと、謎の青年。
物語は、最後の戦いへ。