20
そのころ。
ライジャックが地下の薄暗い廊下を歩いていた。
周りは石で囲まれているため、少し息苦しい。しかしそれがその空間の尊厳を醸し出しているようにもとれた。
「……国王」
廊下の先には一人の男がいた。ゆったりとした黒い袈裟を着た男だった。
「……なんだ、君か。どうしてここにいるんだ?」
「次に国王が来られるのはここと思い」
「……なるほど。いい推理だ。その様子だと……私が何を見に来たのかも解るな?」
ライジャックの言葉に男は頷いた。
「“知恵の木の実”……ですね?」
男はそれだけを言って、通路の奥へ歩いた。
「しかしまぁ……、ここの雰囲気は本当に慣れない。……慣れないんだよ。なんというか……駭駭しい感じがな、なんとも」
「解ります……。しかし、人類のためにここは使われる時まで保存しておかねばなりません」
「神への挑戦……か。そんなことが出来ると思うのか?」
「シナリオは順調に進んでいます。はじまりの福音書もあと少しで終了です。そのあとは……我等の望んだ世界になる」
男は気付くと笑っていた。
「……だから私がいつまでもこれを保存しておけ、と? あれは神の世界へとシフト出来なかった旧時代の象徴だぞ?」
「だからこそ、です。我々はまだあれに利用価値があると踏み、コピーを作り上げたのです。人造人型兵器……ヒュロルフタームを」
「量産……10号機までだったか?」
「えぇ。ですが最終的にはヒュロルフタームは用済みになっちゃうんで、そんな必要かは解りませんけどね」
その言葉と同時に、男は立ち止まった。
「……まだ、あるんですねぇ。しかも元気なままで! あなたにはほんと感謝しますよ!」
男は見て解るように興奮していた。
何故ならそこにあったのは、
ヒュロルフタームだったからだ。