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「……それで、ここに来たってわけだ。確かに強いられていますよねぇ」
「皮肉るだけなら殴るぞ」
「ごめんごめん。まぁ、二人ならなんとか早く……終わると思うよ。うん」
「なんかすごい不吉な感じだが大丈夫なんだよな?」
グラムは体調が悪くなったのか、顔を真っ青にして尋ねた。
「んで……、なんでお前一人でここ掃除してんの? LSS関係の掃除は必ず複数人でやる必要があったんじゃねぇのか?」
グラムは大抵床が綺麗になったところで、ガンテが座っていた木の椅子を持ってきて腰掛けて、言った。
「それが僕にも解らないよ。なんせ新型LSSとやらが開発されて、それがルビンだけに適用され、臨床実験も兼ねて起動実験を行った後、全てのヒュロルフタームにそれを適用するっていうんだ。……10号機までの量産決定といい、なんか変じゃないか?」
「そりゃそうだが……軍上層部、しかも四天王からの直々の命令だ。逆らうわけにはいかないだろ?」
「それなんだよ。グラム。『四天王』がなぜヒュロルフターム量産を命じたのか、だ。もう戦争もカタがつき始めて、多分あと神殿協会さえ倒せば全てが終われるはずだからな」
「一気に潰そうと考えてるんじゃないか?」
「ヒュロルフターム、10機も用いて、か?」
サリドはグラムの問いにただただ答え続けた。
「……つまりだ。四天王が何か良からぬ事を考えてるんじゃないか……。そんなことを、考えてしまうんだ」
「サリド。お前の気持ちも解るが、少し考え過ぎじゃねぇのか? もう少し肩の力を抜いて考えてみたらどうだ?」
グラムは項垂れるサリドを宥めるように言った。