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「これは違うわ。……ただの読み取り音よ……。全くややこしい感じにしちゃってさ……」
リリーはその事実に気付き、力なく呟いた。
その直後画面にポップアップ――Webページがスクリプトを使って新しいブラウザウィンドウを自動的に開き、別の内容を表示させること――によってウィンドウが生成された。
「めんどくさいタイプねぇ……。起動時にポップアップとか、こりゃまぁよく今まで持ったものね」
リリーはそう言って後ウィンドウに書かれた言葉を読み始める。
「どうでもいいけど、パスワードなんてついてないのね。どうやらこのパソコンでプログラムを起動させること自体が解除コードみたい。……えーと、『第4次空白化計画計画書』」
「ビンゴね」
フランシスカが呟いてロゼにウィンクすると、ロゼもそれに返した。
「……『この計画は今や世界中に感染している科学技術を根底から排除するものだ。これが成功すれば、我々神殿協会も大きな躍進を遂げることだろう』」
「それはまた大きな課題ね」
「フランシスカ。茶々入れないで。えーと……何処まで読んだかな? あぁ、そうだ。ここからだ。『空白化はかつて起きた一次空白化で足りるものではなかった。何故なら人類は残されたがらくたを用いて新たな科学技術を作り上げたのだから』」
「『空白化を実行させるには大きな問題が山程存在する。だが、我々には神から与えられし聖なる力“魔法”がある。科学技術に溺れ、信心を忘れた者に、明日はない』」
「これはまた大きく謳ってるわね……」
「『まずは旧時代の象徴であったオリンピックの復古だ。今やオリンピックは“世界トライアスロン”と名前を改め、スポーツマンシップなどないものだ』」
「……確かにあれはドーピングが認められているし、代理戦争とも揶揄されているしな。そう思うのも仕方ないだろう」
リリーの言葉に、フランシスカは相槌を入れる。
「……肝心の空白化計画の概要が書かれていないわ……。えぇい、一体どこに書いてあるのかしら?」
「まだ続きはあるんでしょ? だったらそれを読んでからにしましょうよ」
とフランシスカ。
「それもそうね。……えーと、『我らが神は一次空白化で方舟に乗れなかった人間の一人で、空白化で街が消えたことに心を痛めたものの、自分を貶める、異種の人間が居なくなったことが解ると今までの自分の諸行が天に認められたのだ、と思ったのだ』」
「これはなんて有りがちな……」
「『だから、我らも今や空白化の時、と決断するに至ったのだ。今はもう一次空白化のように堕落した人間ばかりだ。今こそ二次空白化を実行させる時だ』」