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「なぁんだ……。結局やられてしまったのですか」
戦場には拍子抜けな、浮いた声が聞こえた。
「「……誰だ?」」
グラムとリーフガットは同時に尋ねた。
しかし、サリドとフィレイオは全く真逆の反応をしたのだった――。
「……まさか、ここに来るなんてね」
「あら? フランシスカさんにはちゃんとご挨拶したつもりでしたが?」
「……フランシスカはここにはいない」
「ノータだからか?」
「あぁ」
「ノータなら……あんな小さい子を軍籍に置き軍の狗にさせることも容易であるということか」
「違う。進んで自ら軍籍に置く者もいる……。それより、さっさと出てきたら? “姉さん”」
サリドは鋭く尖った氷柱のように冷たい声で言った。
「……あなたは人間を待つ、という心がないんですか? それだから全く成長しない……」
「いいからさっさと出てこい!!」
サリドは獅子の雄叫びのように狂い、叫んだ。
「……仕方ないわね。いいわ。出てきてアゲル」
そう言って影から現れたのは、
神殿協会で四人しかいない、最高権力者。
枢機卿、レイシャリオ・マイクロツェフだった。
「レイシャリオ……、確かに彼女は枢機卿の一人だけどまさか本当にいただなんて……」
そう言ってリーフガットは嗚咽を洩らした。その感じからいくと、どうやら本当に枢機卿がいることを鵜呑みにせず、今の今まで信じていなかったことになる。
「……私はほんとは今回の空白化作戦には参加する気はなかったんだけどね」
レイシャリオは独り言のように呟いた。
「まぁ、あんたがこの作戦に参加するって聞いたから大司教に無理を言って作戦に参加させてもらっちゃった」
「もらっちゃった、って……」
「……ま、そういうことだから、後は解るでしょ?」
「……戦わなきゃダメ、ってことか……!!」
サリドはそう言って苦しそうに歯を軋ませる。
レイシャリオはそれを見て微笑んだ。
「……そういうこと。ってなわけでフィレイオ。あんた下がってなさい」
「私はまだ戦えます! 別にあの青二才、俺一人で……!!」
「フィレイオ。一人称が安定していないわよ。よっぽど動揺しているのかしら? その“青二才”に遺伝子にまで戦いたい本能が刷り込まれたエリートが負けたのを?」
レイシャリオの放った言葉にフィレイオは何も返すことは出来なかった。