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「あぁ。そうだよ。人間の警護網は弱っちいもんだねぇ。……警備の強化を提案するけど?」
「それを言われても困るんだけどね?」
フィレイオは言われ、鼻で笑う。
「……確かにそうだね。その通りだ」
でも、
「もう。ここで終わりだ」
ライズウェルトの方に少しづつ近付き、ライズウェルトは攻撃に備えて目を閉じる。
――しかしながら、攻撃が待ってても来ない。不審に思ったライズウェルトが目を開けると、
そこに広がっていたのは驚きの余りに言葉を失ってしまうほどの驚愕であった。
「……なるほど。やはり、君らも来ていたようだね……? このオリンピアドームに?」
フィレイオはライズウェルトから少し離れた位置に立っていた。しかしながら彼女には一体何が起きたのか、さっぱりと解らずにいた。
「……来たか」
そう言ってフィレイオは、攻撃を受けて口内を傷付けてしまったのか、血の塊を吐いて、言った。
「ヒーローは遅れてやってくるもんなんだよ。燃える事しか能のない阿呆が」
そこにいたのは、サリドだった。
†
「……サリド?! どうしてここに?!」
一番驚いたのはライズウェルトだった(余談だが、実際に意識があったのは彼女だけである)。
「いや~、ごめんごめん。アジト見つけたんだけど戻ってきました。だって、枢機卿……相当の権力を持つ人間が直直に戦場に来ているのだから、心が戦場にいないものを、狙っていった方がいいかな? と」
サリドは笑いながら、答える。しかし、決してどう見てもミスを隠すために笑ったとしか思えない。
「それは解るけど……どうしてここが?」
「リーフガットさんがVMを送ってくれたんで、それで」
サリドの回答に、ライズウェルトは首肯する。
「話はそこで終わりか?」
フィレイオはご丁寧にもサリドとライズウェルトの会話が終わるまで待っていた。だから少し苛々をつのらせていた気がしないでもなかった。
「……へぇ、待っていてくれたんだ……」
「奇襲はしない主義だ」
「なんて律儀な」
サリドはもう呆れるしかなかった。
「……いざ、参る」
フィレイオはそう言って手に炎の剣を産み出した。果たして、これも魔法によるものなのか。
「かかってこい」
対してサリドは構えを取った。武器は持たず、己の身体を武器と為す。
そして、両者が激突した。