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さて、そういうわけで二人は、姫様に連れられリーフガットの泊まるホテルのラウンジへとやってきた。フランシスカのマンションと比べてしまうのもどうかと思うが、幾分質素な造りをしていた。
「多分、もうすぐ来ると思う」
姫様はそう言ってソファに腰掛け、二人もそこに座るよう促した。
「来るって……、誰が?」
「リーフガットに、フランシスカ、それに……ロゼ、だっけ? 彼女も来てもらうんだって」
「なるほど。確かに彼女なら、安心出来るね」
サリドはそんな感じに答えを返していた。
「待ったかしら?」
リーフガットがフランシスカとロゼを引き連れてラウンジにやってきたのは、その直後だった。まるでサリドたちが来るのを見計らっていたかのように、リーフガットはサリドのちょうど見える方にある入口から入ってきたのだ。普通なら偶然で対処しそうだが、相手はなにしろリーフガットだ。少し“偶然”という括りだけでは対処しにくい。
「いや、待ってないですよ? 僕も今来たばかりですから」
そう言ってサリドは立ち上がろうとするが、リーフガットはそれを手で制する。
「あぁ、たたなくていいわ。……とりあえず、作戦はただ一つよ」
リーフガットはそう言って、ただ何もなかったかのように、もう一度同じ口調で言った。
「総ての平和を求める人のために、我々は勝利を勝ち取るわ!」
多分、この言葉だけを聞いて、周りの人間が戦争の作戦を考えている会議だとは到底思わないだろう。人が少ないし、何しろ秘匿性がないからだ。
「総ての平和を求める人のために……。なんか聞いたことのあるフレーズですね?」
ロゼがリーフガットに尋ねる。
「……敵の言葉だけど、神殿協会教典の第11節279ページに書かれたものらしいわ。なんとも響きのいいフレーズだから貸してもらっただけ」
「……なるほど」
ロゼは疑問がなくなったのか、途端に静かになった。