3-12
「遅かったな。何の話をしてたんだ?」
開口一番、グラムにはそんなことを言われたのでとりあえず適当にだが適当には思われない実に微妙なバランスの言葉を言っておいた。
「あぁ。ちょっと話し込んじゃって」
「そうか。とりあえず今オープニングが終わったところだ。歓声が外まで聞こえただろう?」
「あぁ、そういえば、確かに」
「少しは言葉に抑揚をつけて喋りやがれこの馬鹿が」
「ワァァァァァ」
再び歓声が聞こえ、サリドたちはそちらの方を見る。
ちょうど選手達が入場を開始していた頃で、彼等の目は現在優勝の最有力候補であるフランシスカとロゼに向けられていたようだ。彼女たちは多少の恥じらいはあるものの、昨日の“あれ”をものともせず、事情を知らない人間にはそれを感じさせないほど、そこに元気に立っていた。その姿を見て、サリドたちはまたほっと胸を撫で下ろすのだった。
✝
その頃。どうとも形容し難い空間にて。
机が置かれ、椅子と人間の代わりに、柱のような光の棒が7、8個置かれていた。
「……報告をしてもらおう」
一番端の――『FA01』と書かれた光の棒から声が響いた。
「ライジャック、まず君のオリジン私有化について、理由を聞かせて貰いたいな」
ライジャック、と呼ばれた人間は光の棒に囲まれ、鼻をヒクヒク痙攣させた。
そこにいたのは、女性だった。しかし彼女は一糸纏わぬ裸体になっており、紐で体を縛られていた。
「……なぁ、ライジャックくん。我々もこうはしたくないんだ。君だって子供を産みたいだろう? 幸せな人生を送りたいだろう?」
「……オリジン私有化は……私も確認して……いません……」
「ライジャック!!」
「もういいだろう、リリーシャ」
FA01を制したのは隣にいたFA02だった。
「……さて、ライジャックくん。今回の話は仕方ない。保留としよう。……しかし、次の作戦……。よもや忘れてはいまいな?」
「……えぇ、解ってます。必ず、仰せのままに」
「頼むぞ……。総ての平和を求める人へ」
「総ての平和を求める人へ……」
ライジャックはFA02の言葉を復唱した。
それを見計らったかのように周りの背景が、消えた。