ユナ
部屋に初めは小さく、段々と大きくなっていく機械音と共にケント達は目覚めた。
カプセル越しにぼんやりと天井の光を見つめていると、起きているのか
まだ夢の中なのか分からない程、身体は重かった。
意識がハッキリとする頃には、ようやくカプセルの蓋が開きケントは起き上がった。
身体を起こしカプセルの横に立つと、一瞬身体がふらふらと揺れ
一瞬自分の身体ではない様な感覚に陥ったが
すぐに、いつもの自分の状態に戻ったためケントは安堵した。
自分の身体の状態を確かめると次にカプセル横に付いているカウンターを見た。
睡眠に入る前は70を表示していたカウンターは0に変わっていた。
カプセルがきちんと作動した事に驚いたケントだったが
それよりも自分にとっては少し眠った感覚でいたのが
既に70年経っていたという事が不思議だった。
《70年たったのか・・・》
ケントのその想いの中には、両親にもう会う事が出来ないという残念な気持ちと
自分の出した答えは、これでよかったのか?という後悔の念がこもっていた。
他の者達も起きたばかりだったのか、頭を押さえる者、首をぐるぐると回す者
いち早くカプセルを出て外の世界を見ようと、ふらふらと歩き出す者
その中で一向にカプセルの蓋が開かない者がいた。
ユナだった。
変に思ったケントは、ユナのカプセルを見に行こうと考えていた時に
ハルが話しかけて来た。
「あの・・・ケントさん、お、おはようございます。
あの・・・ユナさんがまだ起きてないみたいなんですが、一緒に見て
頂けませんか?」
ハルはケントと同じ事を考えている様だった、
「そうだな。見にいこう。」
その時マリーの悲鳴が聞こえた。
「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!し、死んでる!」
ケントは、ふらふらとした足取りで、マリーが指さすユナのカプセルを見に行った。
見ると、カプセルの蓋は閉まっていて、中を覗くとユナが眠った様に死んでいた。
そして胸の所には銃弾の跡があり、時間が経っていたためか
ユナの身体から出た血液は固まっていた。
ユナが着ていた白い服は、血で真っ赤に染まり遺体の傍らには、薬莢が落ちていた。
カプセルは70年ユナをここに閉じ込め、ユナの遺体を守っていた事になる。
しかし、長い年月が経っているわりには、装置のせいなのか腐敗する事無く眠る様に
横たわっていた。
「うっ・・・・・う・・・・ぐっ・・・」
マリーは部屋の隅に行き、床に手をつき、胃液を吐いていた
ソンはユナの傍に落ちている薬莢を拾い上げ、しばらく見つめると
ポケットに入れた。
「他の人は大丈夫なんでしょうか?」
ユナの遺体を見たジャックが、心配そうにそう言った。
周りを見てみると、今ここにいるのは、マリー、ハル、ジャック、ソン
そしてケントがいた。
「レオンさんが、まだです!見に行きましょう。」
ジャックの呼びかけに、みんなは一斉にレオンのカプセルへと向かった。
レオンのカプセルの蓋は閉まっていた。
「レオンさん!レオンさん!起きて下さい!」
ジャックが蓋を叩く音にレオンは反応せず眠ったままだった。
カプセルの蓋を開けようとした時、レオンが目覚めたせいか
ゆっくりと蓋が開いた。
レオンは両手をあげて大きくあくびをしながら、上半身を起こした。
「ふぁ~~~もうそんな時間?みんな、もう目覚めたのか?」
メンバー達は、身体を起こしたレオンを見てホッと胸を撫でおろした。
「も~びっくりさせないでよね!死んでるのかと思ったわ。」
マリーがレオンの肩を叩きながら言った。
「いたっ・・・・!なんだよ、いったい。」
ソンがユナのカプセルを指さし
「と、とにかく、見て下さい・・・。」
レオンは、ふらふらと起き上がりながらユナのカプセルの元へ向かった。
「こ、これは・・・・!」
レオンはユナの遺体を確認すると、メンバー達に確認する様に言った。
「み、みんなは大丈夫なのかっ!?」
メンバー達の身体に異変が無いことをそれぞれが伝えると
レオンは怪訝そうな顔をしてユナの遺体を見つめた。
「どうして・・・ユナ・・・?」
「ど、どうしますか?」
ソンの問いにケントは
「仕方ない。このまま、ここに眠らせておくしかないな。今どうのこうの
出来るわけではない。落ち着いたら埋葬してやろう。腐敗する事がないだけでも
ユナにはいいんじゃないか・・・。」
みんなは、このままカプセルの中にユナを入れておくのが正解か
どうかはは分からないが、ケントの話を聞いて、そうせざるを得ないと
理解した様だった。