レオン
マリーはどうやら、ここに参加をしている人間達の事を
良くは思っていない様だった。
ただでさえ、傲慢でプライドが高いマリーからすれば
選択肢の少ない人生を選ばされているのと
同じことだからなのかも知れない。
「手作りの家具っていいですよね~暖かみがあって。私好きです。
それが出来るなんて、ステキです。」
ハルがそう言うと
「ふん!なんなの?今から、男のご機嫌取りでもしてるの?」
マリーに言われて、ソンの様に落ち込まなかったハルを見ると
案外、鈍感な性格の様に見えていても
まだまだ知らない部分があるのかも知れないと
ケントは思った。
「まぁまぁ、女性陣はそんなにいきり立たなくても、可愛い顔が台無しだぜ。
俺なんて、これから始まる生活にウキウキしてるんだよ。
だって考えてもみなよ、誰もいない世界で
一から人生やり直しが出来るんだぜ?
こんな、いい事だらけの事って無いだろう?」
今発言をしているレオンは、何事も軽く考え、どんな状況下におかれても
楽しめる楽天家な性格の様だ。そして何より、女性に対して口が上手な様だ。
「やり直す?何を?」
「いや~それは色々みんなあるだろう?1つや2つくらい。
失敗したな~って事くらい。無いのかよ?」
みんなが黙っていると、ユナが突然思い出した様に言った。
「あ・・・首の後ろに刺青があります。」
ユナに言われて、全員は誰の事を言っているのか分からず
キョロキョロとお互いの顔を見ていたが
レオンだけは、自分の首の後ろに手をやった。
「やり直したい事って、例えば、そういう刺青の事ですか?
スイマセン。私何でも思った事は口に出してしまうので。
やり直すっておっしゃったから、てっきり、そのヘビの刺青の事だと・・・。」
一瞬しんとなったが、レオンが取り繕う様に明るく言った。
「ま、まぁ、これも、その内の1つだな。
そうそう、当時はこれが格好が良く思えたんだよ。するどいね~ユナちゃんは。
ユナちゃんを嫁にしたらきっと隠し事は出来ないだろうな~」
ユナは真っ赤な顔をして、もじもじと下を向いた。
ユナは細かい所に気が付き、それを周りの空気を考えず相手に問いただす
ある意味自分に正直なのかもしれないが、悪く言えば
自分が疑問に思った事に対しては、相手の反応や立場も考えない
自己中心的な人間なのかもしれない。
「わ、私は出来る限り、旦那様になった人には尽くします!」
あまりにもユナが一生懸命話すので、みんなは笑った。
その事があったおかげで、その場の雰囲気はよくなったが
ただ一人ハルだけはそうでは無かったようだ。
真っ青な顔をして震える手で口元を抑えていた。
「と、どうしたんですか?真っ青ですよ、ハ、ハルさん。」
ソンが心配して話しかけたが、ハルは
「初めて見たので、驚いちゃって・・・。わ、私、用事を思い出したので
ちょっと部屋に戻りますね。」
そう言うと一人部屋に戻っていった。
その後も、みんなの会話は続いたが
食事の時間を知らせるアナウンスを聞いて
食事室に移動していった。
ハルがなかなか部屋から出て来ないので、ソンが呼びに行くと
ハルは一人部屋のベットの上に座っていた。
「どうしたんですか、ハルさん?大丈夫ですか?」
「あ、ハイ。すいません。私、あまり人と接する事に慣れてなくて・・・。
みなさん優秀な方ばかりだし。私なんて、何にも取柄がなくて。」
「そんな事ないですよ。僕だって、物作りが好きというくらいで
他にはこれと言って・・・。気にしなくて、いいと思いますよ。
さ、行きましょう、食事の用意が出来たそうです。」
2人で扉を開けて出ようとした時に、ハルがソンにお礼を言った。
「ありがとうございます。」
ソンは自分が傷つく事が多かった分、人には優しく接する事が
出来る人間の様だった。