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RITA(リタ)  作者: 虹空
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Rita(リタ)

いくつもの扉を通り、研究所の奥に行くと

外に通じる通路があり、更にそこを進むと

近代的な研究所とは違って

どこか懐かしい外観をした建物の前に出た。

ケントは、ひと目見るだけで、そこがこれから

自分達が住むであろうコロニーだという事が分かった。

長い年月をここで暮らすということを考えると

少しでも今の建築様式を引き継いだ建物の方がいいのではと

考えたのだろうか。

壁の色といい、建物の形といい、ケントの自宅にも似ている気がした。

近付くにつれ、その建物の全体が見えて来た。

そのコロニーは後ろ半分が雪山の中に食い込む様に建ち

全体的にこの研究所から見渡せる様な位置に建っていた。

研究所からそのコロニーに向かうには、1本の通路しかなく

それは、つまり一旦、研究所を通らなければ

外には出れないということになる。

ふと見上げるとコロニーの壁に「Rita(リタ)」と書かれていた。

コロニーという名の建物を見ていると

いつかは懐かしく思うのだろうか?

自分が帰るべき場所マイホームと言えるのだろうか?と

ケントはコロニーを見ながらそう思った。

「さ、ここだよ。みんなお待ちかねだ。」

コロニーの扉は、高い電子音と共に開いた。


中に入ると円形のテーブルを囲む様に6人の男女が座っていた。

ケントが空いているイスに腰を掛けると、オリジン博士がみんなに向かって

話を始めた。

「待たせたね。ここは、これから君達が冷凍睡眠をした後

途方も無い時間を過ごすコロニーRitaだ。

冷凍睡眠の時間はウィルスがこの星から死滅するであろう時間

70年間を予定している。

もちろん、大気の状態は、君達が眠っている間も後ろにあるコンピューターで

常に計測される。ウィルスが無くなったのか、まだ残っているのかを正確に

計測するためだ。

それと同時に君達の身体のデータを集め記録する。

それが研究所に送られて来ると言うわけだ。」

後ろを見ると壁一面に青やオレンジといった、テレビのドラマや

映画の中で見た様な色で光る機械が並んでいた。

「70年後、君達は長い眠りから覚めたら

ここで新しい暮らしを始めてもらうのだが

そのために注意するべきことを話しておく。

まず食べ物に関してなんだが

ある程度の食糧は、コロニーに用意はしてあるが

その食糧が無くなる前に、目覚めたら君達の手で、準備して欲しい。

なんせ、今は用意出来る食糧にも限界があってね。

そこは理解してもらいたい。

野菜など、自分達で育てられる物は、この談話室の上にある温室で

育てられる様になっている。そこは、温度や湿度など育てる物に

合った環境に整えてある。ある程度の物はこちらで、事前に植えて

育ててはあるから参考にしてくれたまえ。

他にもこの星で育っている物であれば、種の状態で用意はしてあるから

好きに植えてくれたらいい。

ここまで何か質問はあるかな?

なければ、ここに集まった幸運な君達の紹介をしよう。

まずルート46地区出身のソン君だ。」

オリジンが指を指すと、その青年はびくびくと周りの人間達の

顔色を気にしながら立ち上がった。

オリジン博士は、手元にある資料を見ながら、話し始めた。

「彼がソン君だ。見て分かる通り、とても気弱な人物だ。

ここに来るまでは定職に就かない・・・いや就けずに

フリーターをやっていた様だ。

同じ年齢の人間が働いている時に、どうしてソン君が

フリーターなんかをやっているかと言えば

子供の頃に自身に起ったいじめが原因で・・・。」

オリジンの言葉を遮る様に、一人の青年がイスから立ち上がった。

「オイ、そこまでにしとけよ。なんでそこまで、みんなの前でバラされないと

いけないんだ?ここに集まった人間達の過去なんて関係ないだろう。」

「おや、君は・・・ルート00から来たレオン君だね。

君には、何かバラされて困る過去でもあるのかな?」

周りの人間達が、ザワザワと騒ぎ始めた。

オリジン博士はレオンの顔を厳しい目つきで見つめていた。

「ルート00って・・・。」

「本当に存在したんだ。」

「身元は大丈夫なのか?ルート00の出身者には、犯罪者が多いって聞いたけど。」

みんなの中でレオンに対しての不安や不信感が言葉となって聞こえてきた。

「静かに!君達の知っての通り、ルート00には

公表していないある施設が存在する。その施設とは、親のいない子供達を集め

大人になるまで面倒をみるという養護施設だ。

そこの運営費は、君達が日頃納めている税金で賄われている。

で、レオン君はその施設の出身者だ。手元にある資料によると、とても正義感が

強く弱い者には慈悲の心を持って接すると書かれてある。

ただ、施設に入った頃は、自分を捨てた親を恨んで随分と荒れていた様だ。

君達が想像する様に、色々警察のご厄介にもなった様だね。

その度に施設の保護者が警察に出向いて身柄を引き取りに行っていた様だがね。

え~っと・・・短所は、他の者より短気で暴力的。

つまり、ここが弱いというわけだ。」

オリジン博士は、自分の頭に人差し指をあて、トントンと軽く叩いた。

「なっ、なんだと!」

レオンはオリジンに掴みかかろうとしたが、まわりにいるボディーガート達に

腕を掴まれ抑え込まれた。

「ふっ・・・これで彼の短気は証明されたな。君達に言っておくが

君達には70年後にここを出て外の世界で次の子孫を残すと言う役目がある。

外に人間が生き残っていれば、いいだろうが

私が計算した所によると、それは不可能に近い。

その時は、その相手は、ここにいるメンバーから選ばなければならない。

時間が膨大にあるわけではないから、わざわざ未来の相手を

選別しなくていい様にある程度の情報を君達に親切に教えておいてやってるのだよ。

とにかく全てにおいて時間がかかる事だからね。

性格や、知能、体力といった情報は君達女性陣には

1番重視する所ではないのかな?どうかな?マリー君。」

オリジン博士がそう言うと、呼ばれた女性は腕を組みながら

立ち上がり、こう言った。

「情報は必要ね。本来なら、自分の将来の相手は、自分で選びたいものだけど

この状況じゃ、それも出来そうにないから、せめて、正確な情報は欲しいものだわ。

他の方はどうかしらないけど、少なくとも私にとっては

相手を知る情報は、ありがたいわ。

特に犯罪の有無は最も重視するものだわ。

犯罪者の子供なんて産みたくもない。

子供を産むんだから、相手は私達女性に選択権がある様なものよ。」

「もっともだな。今、賢明ではあるが、少々自己中心的な考えを

持っている発言をしたのは、ルート8から来たマリー君だ。」

「ルート8!?」

ルート8と聞いて周りが、ざわついた。

この星に住む人間達の場所は、全て国で決定し管理されている。

星に多額の寄付金をする者達は、高台の要塞の様な家が建ち並ぶ

ルート番号の小さい数字の土地を与えられる。

つまり、数字が小さければ小さいほど多額の寄付金をしている

大金持ちという事になる。

「マリー君のお父様は、大手の製薬会社の創立者でもある。

つまりマリー君は社長令嬢と言うわけだ。

家柄、財産、頭脳明晰で申し分がない相手だ。」

オリジン博士の後に次いで、マリーが言った。

「勘違いしないで欲しいのだけど、パパの会社もワクチン開発には力を

注いでいた内の1つなの。

残念ながら効果的なワクチン開発にはならなかったけど・・・。

でも、父がそうだからと言ってコネでこのリストバンドを

手に入れたわけではないから、その点だけは誤解しないで頂戴ね。」

マリーは子供の頃から、父親の立場のせいか

今まで様々な偏見という差別に悩まされてきたのだろう。

親子ではあるが自分とは別の人間の人生で

他人が評価をし、マリー自身のことを判断されてしまう。

彼女の傲慢な発言を通して、それを垣間見る事ができる。

お金持ちという、この星では絶対数が少ない立場の人間に

とってはその偏見と闘いながら、常にその地位に相応しい知識や礼儀作法を

身に付けておかなければならない。

どれだけのストレスを抱えるのかと考えると

どこか人を見下すような話し方をしても

仕方がない事なのかも知れない。

マリー本人からすると、ひとこと言わずにいられない話なのだろう。

「続けていいかな?マリー君からのもっともな意見が聞けた所で

次はルート1Ⅰ8から来た、ジャック君だ。」

ジャックは、大きな体に褐色の肌をした青年だった。

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