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RITA(リタ)  作者: 虹空
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ワクチン

「ソンさん、今誰か呼んで来ますから、それ以上しゃべらないで!」

誰かを呼びに行こうとしているハルの服を掴み

ソンは目に涙を浮かべながら言った。

「ハ、ハルさん・・・僕、僕は、あなたの・・・こと・・・す・・・。」

ソンは意識を失いぐったりとした。

「と、とにかくコロニーまで運ばないと!だ、誰か!」

ハルが大声で叫んでいると、そこへマリーが戻って来た。

「どうしたの!?」

「ソンさんが!」

マリーはさっきまでの事を忘れ、ハルと一緒にソンの腕を

自分の肩に回し、2人で運び始めた。

その時少しだけ意識が戻ったのか、ソンがうわごとの様に言った。

「あ・・・・あの銃・・・の・・・音は・・・・ぼ、僕の作った・・・銃だ。

・・・・・・・・・・あれはあの人にわ、渡した・・・銃・・・どうして・・・」

2人は研究所の机の上にソンを寝かせた。

「ハル!ここで待っていてくれる?私コロニーに行って、薬とか持ってくるから

ここでソンを見てて!」

「わ、わかりました。」

ハルはそう言うと、コロニーに向かった。

マリーはコロニーの自分の部屋に入り、持てるだけの薬とありとあらゆる

薬草と呼ばれる植物を持って出た。

《ジャックお願い!どうかソンの命をあなたが育てた植物で守ってあげて

お願い!!》

マリーはそう願いながら研究所への廊下を急いだ。


マリーが研究所に着くとハルの姿は消えていた。

「ハル?」

目をやるとソンを寝かせた机からポタポタと大量の血がしたたり落ち

寝かしたはずのソンの身体はハルと一緒にいなくなっていた。

足元には、ソンを引きずって行ったのか

血の跡がずっと、コンピューター室の奥へと続いていた。

「ハル・・・?どこにいるの?」

マリーが、コンピューター室に入った瞬間

誰かに殴られ、床に倒れた。


ケントがその場に立ち尽くしていると、後ろからか細い声で

杖をついた老婆が声をかけて来た。

「誰かいるの?」

その姿を見た瞬間に、ケントの身体は小刻みに震え、目に涙があふれ出た。

「か、母さん!?」

ケントがそう呼んだ老婆は、おそらく目が見えないのか

両手を前に出し、必死に声の人物を確かめようとしていた。

間違いなくケントの母だった。

ようやくケントの身体に触れた母親は、涙で顔をくしゃくしゃにしながら

ケントを抱きしめていた。

「ケ、ケント・・・ケント!」

「ど、どうして、母さん生きていたのか!?

目、目をどうしたんだ!目が見えないのか!?」

母親は、ケントを抱きしめて離そうとしなかった。

「やっぱり、い、生きていたんだね。母さんは絶対お前が死ぬわけないと

信じていたよ。10年、待っててよかったよ・・・。」

「10年!?」

ケントは、母親の口から出た言葉が何を意味しているのか

すぐには理解出来なかった。


お互いの存在を確認した2人はその場所から動かず、互いの手を握りしめながら

ベンチに腰をかけ、話をし始めた。

ケントがいなくなってから、両親共にウィルスに感染し

父親の方は命を落とし、母親は命が助かったのと引き換えに

視力を奪われたのを知った。

「さっき言ってた10年って?」

母親は視力が無くなった目で遠くの方を見つめながら話を始めた。

「お前がいなくなって5年ほど経った頃

急にテレビのニュースで

ワクチンが出来たってやってて・・・。

それを知って、私と父さんは研究所に毎日の様に言いに行ったよ

お前を返してくれってね。

そしたら、息子さん達がウィルスに感染していないかを

調べてから帰って頂きますと言うばかりで、一向に返してくれなかった。

父さんは言ってたよ。

星の未来を考えて、お前達を行かせたのに、今度は自分達の息子が

ばい菌扱いだって・・・。

そうしている間に、こっちではワクチンの接種が始まって

みんな元気になって、お前たちの事など、忘れていったよ。


父さんが亡くなって、私の目が見えなくなってからは、歩くのも大変で

研究所にもそんなに行けなくなってしまって

そしたらある日

お前がウィルスにかかって死んだって知らせが来て。

研究所はウィルスが蔓延しているからって閉鎖になって

身体を返してもらえないまま10年・・・。

でも、本当に生きててくれて良かった・・・。」

母親はケントの身体を抱きしめ、声を上げて泣いた。

「母さん、死んだって言ったのは・・・・誰なんだ?」

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