レオン=コール
レオン=コール。生まれてすぐ、養護施設の前に捨てられ
そのままコロニーに入るまで、施設で暮らしていた。
レオンと言う名前も当時の養護施設の所長だった人に付けてもらった名で
本当の名はいまだに分からなかった。
本来なら、街に出る必要も会いたい家族もいなかったため
街に出るのは気が進まなかったが
どうしても行かなければいけない場所があったため街に出る事にした。
レオンが育った施設は、オリジン計画が発表された頃には子供の数も減り
経営状態も良くは無かった。
星の要人達は年間いくらかの【寄付】と言う名の援助金は贈って来たが
施設の存在は公表しなかった。
それは、星の存続が危ぶまれた時に、いつでも施設への援助金を打ち切りにする為だった。
それまでは、何かあった時に使える駒として
置いておく必要があった。
いつでも抹消できる慈善事業というわけだ。
ただ、その慈善事業も、いつしか、この星の財政状況を
圧迫する、邪魔な存在となりつつあった。
「別に来なくても良かったと言えば、良かったんだけどなぁ・・・。
まぁ、でも、行かないといけない所がある事には違いないから、仕方ないけどな。」
施設が見渡せる公園のベンチに腰をかけていたレオンの元に
子犬が走り寄って来た。
子犬は、レオンに抱きかかえられると、顔を舐めてきた。
「い、犬だ!おい、お前、生きていたのか!?
よく見ると、子犬はふっくらとしていて、食べ物には困っていない様な
体型だった。
《犬・・・生きているのか・・・》
どこからか、子犬の名前だろうか、呼ぶ声がした。
「ピース~ピース~!・・・あ~こんな所にいたの~?」
声の主は小さな男の子だった。
子供の姿を見たレオンは驚いた。
「お兄ちゃん、こんな所で何してるの?」
男の子はレオンの前に立って不思議そうに顔を見ていた。
「お、お前の犬か?」
レオンは驚きながらも少年に話しかけた。
「うん。ぼくの犬だよ。でもね。み~んなで飼ってるの。」
「みんな?」
男の子は施設の方を指さした。
《ま、まだ他にも生き残っている者がいるのか!?》
「へ~まだやってたんだ・・・。ボロボロだから、てっきりもう誰もいないと
思ってたぜ。」
レオンは男の子に手を引かれながら施設の中に入って行った。
外見とは違い施設の中は綺麗になっていた。
中央には二階に続く螺旋階段があり、その上から誰かがコツコツと降りて来た。
「どなた?」
その姿はレオンが子供の頃よく見ていたシスターの服装をした老女だった。
その老女を見た途端レオンは、きっと他にも生き残っている人間がいるという事を
理解した。
「へ~変わって無いんだな。あ、俺・・・。」
自分の名前を言いかけたレオンだったが、きっと自分の事を知っている
人間がいないだろうと思い、わざわざ愛着の無い名前を名乗る事も無いだろうと
名乗るのを辞めた。
「さっきそこで、この犬が来て。」
「あらあら・・・ピースが又、ご迷惑をかけたのね。
ロンド?外にピースを出すなら、ちゃんと綱を付けてないとダメって
言ったでしょ?
ごめんなさいね・・・何度言っても聞かなくて。
なんせ、ここにいるのは、ロンド一人なものできっと退屈しているんだわ。」
「一人?でも、この犬。」
シスターは、施設には、子供はロンド一人になっている事
犬は、ロンドと自分が飼っている事
名前も知らない人からの多額の寄付のおかげで
施設の設備を綺麗にする事が出来た事などを話し始めた。
そして、自分が居なくなったらロンドが一人になる事だけが
今は心配している事を話した。
「オリジン計画って知ってますか?」
「さぁ~・・・昔テレビで聞いた事がある様な・・・。それが、何か?」
「昔?・・・いや、いいんだ。」
レオンは、ロンドの頭を優しく撫でると施設を後にした。
その後を犬とロンドが追いかけて来た。
「どうした?」
「お兄ちゃん、又来てくれる?」
「そうだな~・・・」
レオンはロンドの首にかかっている布で作られた
手作りのお守りを見つけて驚いた。
「それは、俺と同じ・・・?」
ロンドは首にかけているお守りを胸元から出しながら言った。
「これね、シスターが作ってくれたの。ここに来た子供達は、み~んな
持ってるんだって~それでね、この中には、お父さんとお母さんの名前が
書いてあるんだって~いつまでも、二人の事を忘れない様にだって。」
「そ、そうか。良かったな。じゃあ、又な。」
ロンドは夕焼けの中、レオンに大きく手を振り見送った。




