検証
ソンが嬉しそうにハルの後ろを歩きながら研究所に向かうのを見送りながら
ケントとレオンとマリーの3人は談話室の上にある温室に向かった。
温室の近くまで来ると、植物独特の緑の葉の匂いが
あたりに充満しているのがわかった。
扉を開けて部屋に入ると、その香りは一層強くなった。
温室の中はありとあらゆる植物が植えられていた。
どれもケント達が見た事のある植物で、オリジンは人間同様、植物も
後世に残すために、コロニーに閉じ込めたんだと思った。
ジャックの日記に書いてあった通り、子供の頃に見た柑橘系の木には
70年経っても実らしき物は見当たらなかった。
「確かに妙だな・・・。70年も経ってたら、実の1つや2つ
付いていてもおかしくはないのにな。
葉の方は、こんなに元気なのに・・・。」
その木だけでは無く、どの植物も同じ状態だった。
「確かに変よね。この木は、私の庭にも生えてたけど小さな花を1年中
つけるんだけど、ここのはまだ、そこまで成長していない。あ・・・これは確か
根っこの部分が、薬の材料に使えたはず。これがあったら、もっと高度な薬が
作れるわ。」
マリーは一生懸命、根の部分を掘り返し始めた。
どの植物も70年も過ぎたというのに、小さなままだった。
その頃、ハル達は研究所で自分達が眠ってからのウィルスのデータを見ていた。
「おかしいなぁ・・・。」
「ど、どうしたんですか?」
「ここのコンピューターによると、ずいぶん前にウィルスが無くなったという結果が
残されているんです。ほら、ここ。」
ハルが指さす所にソンが顔を近づけると、二人の顔はもう少しで
触れ合いそうな距離になった。
「あ、す、す、す、すいません。ぼ、僕!」
「大丈夫ですよ。」
ソンは明らかに顔を赤らめ慌てていたが、それに比べてハルの表情は変わず
データを見つめていた。
「こ、これって・・・ウィルスがな、無くなったって、ど、どうやって
分かるんでしょうね?」
「このウィルスって、人に感染したら、咳とかと一緒に空気中に粒子が飛ぶの。
その粒子って、他の病気、例えば風邪とかに比べて、濃度が高いらしくって
それをこのコンピューターで、調べて数値化している様ですよ。」
「へぇ~そ、そうなんですね。し、知らなかった・・・。あ、でも、ハルさん
く、詳しいですね。」
ハルはハッと驚き、ソンから目を逸らした。
「私の家の近くに製薬会社に勤めている人がいて、その人から聞いた事があって。」
「そ、そうなんですね。凄いなぁ・・・ハルさんって、ウィルスの事は知っているし
機械もこうやって触れるし・・・ぼ、僕なんて何にも出来なくて・・・。」
「そんな事無いですよ、ソンさんは色んな物が作れるじゃないですか?
私なんて手先器用じゃないですから。羨ましい。」
ハルはニッコリ微笑んだ。
「う、羨ましいなんて・・・。ぼ、僕の家は代々メカニック専門の家で。
家にはいつも小さな部品から、お、大きな部品までお、置いてあって。
こ、子供の頃は、い、いつもそれで遊んでいたんですよ。メカニック工場が
遊び場でした。」
ハルは楽しそうにクスクスと笑った。
「そうなんですね。何だか楽しそう。憧れます、そんな家庭って。
子供が走りまわって、それを両親が見ているって光景。私も、そうなったら
良かったな~って思います。」
一瞬ハルの顔が曇ったのがソンは気になったが、触れてはいけない事だと思い
言葉をかけなかった。
2人は必要なデータを持ち帰り、みんなに説明をした。
「なるほど、じゃあ、ウィルスの方は大丈夫だって事だな。」
「ケントさん達の方は、どうでしたか?何か分かりましたか?」
「薬の材料になる植物を見つけた以外、な~んにも見つからなかったわ。
でも、ジャックが書いてあった通り、温室には背の低い植物ばかりで
70年以上経った割には、成長して無かったわね。
それがどうしてだ?と言うのは、ジャックじゃないと解明できないけどね。」
「そうですか・・・。」
「どうしたのハル?」
「い、いえ・・・何も。少し残念でしたね。」
「そうだな。だが、ウィルスが消滅しているのなら
街に探索に行く事は出来る。」
ケント達は明日から街へ探索に出かける事を決めた。




