この世界はアンバランスで出来ている [episode:ZERO]
あれは、いつの日だったか。
俺は、彼女に出逢った。
これから先、敵対になる……そうとは、知らないで。
▪▪▪
「これから、御二人には《メージェント》として活動して貰う」
仁川刑事部長から、そう言われる。
「よろしくお願いします」
彼女……水嶌汐莉が、そう言う。
「で、俺らはどうしたらいいのですか」
俺はそう聞く。
「突然変異の悪用を、取り締まるのが《メージェント》の役目だ。二人には、悪用している輩を捕まえて欲しいのだ」
彼女の『早変装』、俺の『身体強化』。
この二つが、一期生として認められたらしい。
「それでは、施設へ向かっていただきたい」
仁川刑事部長が言うと、二人は頷いた。
▪▪▪
警視庁の裏手に、《メージェント》の特別施設がある。
最近出来たらしく、真新しい。
『TOKYO Ver.105』と書かれた、部屋へ入る。
「剛条寺巡査部長を、お呼びしますね」
案内して貰った警備員が言い、部屋を出る。
剛条寺巡査部長は、俺達の担当刑事らしい。
「……さてと、改めてよろしくね。三島くん」
汐莉がそう言う。
「そこは、名前呼びで良いですよ。これから仲間になるんですから」
「そうね……じゃあ、武瑠くんと呼びますね」
「俺は汐莉さんと呼ぶぞ」
汐莉は頷いた。
「お待たせしました」
その時、剛条寺巡査部長がやって来た。
「御二人が召集された事情は、仁川刑事部長から伝えられていると聞いています」
そう、剛条寺巡査部長が言う。
その言葉に、二人は頷く。
「私から、これからの活動について説明を」
そう言って、紙を渡す。
二人は、目を通す。
▫▫▫
活動は、月から水は二人一組で行い、木金は個人で行動します。
休みは土日と祝日だが、緊急で出る場合がある事を承知していただきたい。
二人一組の際は、広範囲での探索。
そして、個人では警察署圏内と範囲が少し狭まります。
突然変異保持者を判断するために、『突然変異発見器』を活用してください。
そして、捕まえた際には『通信機』で伝えると警察官が来ます。
あと、御二人にはこれから寮の方へ住むことになります。
▫▫▫
「以上が、説明となります。何か質問は?」
剛条寺巡査部長が言うと、俺は手をあげる。
「……もし、犯罪者が俺達の家族に手を出したら、対策はあるんですか」
「ひとまず、そうなった場合は警察もバックサポートはしますが」
そう、剛条寺巡査部長が返す。
「何で、それを聞くの?」
汐莉が口を挟む。
「……俺、両親は居なくて、姉と二人で過ごして居たんです。姉は一応、家庭を持っているんですけど、狙われないか心配で」
俺はそう返す。
「そうなのね」
汐莉は、そう返す。
「……まあ、先程も言いましたが、何かあれば警察も出来るだけ動くようには致しますので。他に、質問は」
二人は、首を横に振る。
「それでは、寮へ引っ越しが済み次第、御二人には正式に《メージェント》として、活動をしていただきます」
▪▪▪
俺は、今住んでいるアパートへ戻る。
荷物をまとめたあと、姉に電話をかける。
『あら、武瑠。どうかした?』
「前に、《メージェント》の話を少ししたじゃん。俺、正式に入る事になった」
『そうなのね!武瑠の力が、役立つのね』
姉は、嬉しそうに言う。
「どうやら、俺ともう一人が配属されたみたいだ」
『ちなみに、それは誰なの?』
「水嶌汐莉さんって、人だ」
『ああ、あの子ね』
「彼女の事、知っているのか?」
『ええ、高校の後輩なのよ、彼女。……まあ、あまり関わった事が無かったから、向こうはあまり覚えていないだろうけどね』
▫▫▫
寮へ荷物を持ってきた。
まあ、あまり持ってきてはいないのだが。
「お疲れ様」
汐莉が部屋に来た。
「あ、ちょうど良かったんだが」
俺は、姉の事を話した。
「あ、ああ。何となく思い出しました。高校の生徒副会長だったんです、貴方のお姉さん。……なんだか不思議な縁ですね」
汐莉が言う。
「……そう、ですね」
▪▪▪
それから、と言うものだ。
俺の姉は、犯罪者集団に殺された。
『警察が動く』、この言葉は、嘘だったんだ。
だからこそ、俺は《メージェント》を抜けた。
いつかは、彼奴らに復讐をするために――
200作品目記念、そして1650文字縛りの小説でした。
(Twitterの記念企画で、文字数を決めるツイートの結果がこの文字数)
どうしても、あの現行長編小説の、エピソードゼロを作りたかった。
と言うわけで、読んで頂きありがとうございました。