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第2話

 次の日。

墓守が起きると、何やら下が騒がしい。

降りてみると、昨日の女の子がベッドに寝かされ、数人の墓守達に看病されていた。


「あ、おにーさん……」

何だ、知り合いか?と他の墓守に聞かれ、昨日話した事を伝える。

少し話をしたい、と言うと、他の墓守達は彼を残して仕事へと戻っていった。

「だから言っただろ」

「……でも、ぱぱとままが……」

「……はぁ」

「ごめん、なさい」

「お前、多分親に嫌われてるぞ」

「え、……」

「普通の親はな、自分の子供をお墓に置いて行ったりなんてしない」

それを聞いて黙り込んでしまう女の子。

少し言い過ぎだったか、と頭をかいていると、女の子が泣き出してしまった。

「ぐすっ、うぅ、ひっく、」

「あぁ、すまん、少し言い過ぎだったか……」

「おにーさん……おにーさん……」

ひしっ、と墓守に抱きついてくる女の子。

優しく抱きしめ返し、頭を撫でてやる。

信頼していた両親から悪く思われていた、と言うのはきっと辛いだろう。

「ぱぱもままも、ゆずのこときらいだって、こと……?」

「そうだな、多分そうだろう」

「ぱぱ……まま」

しばらく泣いていた柚の事を、墓守は優しく宥める。

 やがて、落ち着いてきたのか「おにーさん、あり、がとう」と女の子は涙を拭いつつ小さい声で言った。

「ああ、落ち着いたか」

「おにー、さん」

「うん?」

「よければ、でいいんだけど、ね、ゆずのこと、ここに、おいてほしいの……」

「ここに?まぁ、構わないが……」

「ほんと?ほんとに?」

「ああ」

「やったぁ!えへへ、ありがと、おにーさん」

嬉しそうに笑う女の子に、これでよかったな、と思う墓守。

「ああ、そう言えば名前、言ってなかったな。俺は墓守だ」

「はかもり?はかもりさん?うーん、でも、きのうそれはおしごとだって……」

「あー、そう、だな」

「なまえ、ないの?」

「墓守って呼ばれてるから……名前とか、考えた事なかったな」

「じゃあゆずがつけてあげる!」

「名前、か」

「うーん、くろ?くろさん?でもそれはそのままだし……うーん、」

「なんか、不思議だな」

自分に名前を付けるために悩んでいる女の子を見て、嬉しい気持ちになる墓守。

「きめた!えんじゅさん!」

「槐、か」

「かっこいいでしょ、えへへ」

「ああ、そうだな」

「んふふ〜。ゆずはね、ゆずっていうの!よろしくね、えんじゅさん!」

「柚、か。これからよろしくな」

「うん!」

嬉しそうに他の墓守達に報告しに行く柚を眺めつつ、これからは楽しくなりそうだな、と思う槐だった。

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