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1話

 自分はいつからここにいるのだろう。

気づいたらここにいて、墓守という仕事を与えられていた。

墓守という仕事は、墓を荒らされたりしないように守る仕事だ。

と言っても、ほぼ墓を荒らしたりする人間はいない為常に仕事をしているわけではないのだが。

仕事もだが、彼は自分の名前や家など、自分に関する事全ての記憶が無かった。

自分の名前もわからないのは不便だろう、ということで、『墓守』という名前を付けてもらい、今はその名で呼ばれている。

「暇だな~。なぁ墓守、何か面白い話とかねぇの?」

そう隣で話す男性は、彼の仕事仲間の1人だ。

「面白い話?いや、特には」

「あー。そういや墓守ってそういうやつだもんな……聞く相手間違えたわ」

「いや、何もないのに面白い話なんて出来るわけないだろ」

「ま、それもそうか。だけど少しくらいノッてくれてもよくない?」

「じゃあ、次に話す時までに面白い話を何か用意しておく」

「お、楽しみにしてるよ」

彼は立ち上がると、「じゃあな」と言って墓守の元を去って行った。


「さて。俺も見回りに行くか」

墓守も立ち上がり、周囲の見回りへと向かう。

「……ん?」

 見回りを初めて少しして、お墓の陰に気配を感じた。

見てみると、小さな女の子が座っていた。

昨日は人なんていなかったはずだ。迷子か何かか?

そう思い、墓守は女の子に話しかけてみる。

「お前、どうしてここにいるんだ?迷子か」

「まいご?ううん、ゆずね、ぱぱとままのことまってるだけだよ」

「待ってる?」

「うん。ここにいろっていわれて。あとでおむかえくるから、いいこにしてまっててねー、っていわれたから」

「……」

こんな所に小さな女の子を1人で置いておく両親がいるというのか。

いや、そんなはずはないだろう。

「本当にそう言われたのか?」

「うん。おにーさんはどうしてここにいるの?」

「俺は……墓守って仕事をしている」

「はかもり?うーん、よくわからないけど、おしごとなんだね。ぱぱもままもたいへんそうだったから、きっとおにーさんもたいへんなんだね」

「それは置いておいてだな。お前、いつからここにいたんだ」

「うーん……おぼえてないや」

「覚えてない?」

どうやらこの子も記憶喪失らしい。ここの墓地に来ると記憶喪失になる呪いでも掛かっているのか。

「とりあえずここにずっといたら風邪引いちまうから、屋敷に行くぞ」

女の子の手を引いて屋敷に連れて行こうとすると、女の子は「いかない」と拒んだ。

「行かないって、寒いだろ、ここにいたら」

「ぱぱとままのいうことやぶっちゃうから、いかない」

説得し続けたが、一向に聞く耳を持とうとしない。

「……はぁ。そうかよ。風邪引いても知らないからな」

 墓守は説得を諦め、再びお墓の見回りへと戻った。

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