第81話 雀鬼
少し短いです。
「……ずっと、こうなったらいいのにって思っていました。」
腕の中の朱音が呟いた。
「こう?」
「時人くんに……想いを伝えられたらって。」
えへへ。と朱音が笑いながら答えた。
その笑顔は幸せそうで可愛い。そんな彼女が自分のことを好きだと言ったのだ。にやけてしまう。
誤魔化すために朱音の髪を撫でる。朱音は目を細めてされるがままだ。
「撫でられるの好きです。」
「朱音の髪って触り心地よくて。」
サラサラで指通りがよく、羽のように軽い朱音の髪はいつまでも触っていられる。
「色々頑張ってますから。」
鼻を鳴らした朱音は自慢げだ。
「さすが。」
「時人くん、私の髪、好きそうですから。」
言外に俺のためだと言っている朱音が愛おしい。朱音自身が意図していない発言ゆえにさらに嬉しい。
「好きだよ。髪ももちろん、朱音の全てが。」
「……あかんって。」
朱音は顔を赤くして胸に埋めた。
「えーっと……。どういう状況?」
いつまでも朱音と抱きあっていたかったが、さすがに帰りが遅いと心配する。なにより折角のみんなとの旅行だ。二人でずっと抜け出すのも悪いだろう。
そう思って先ほどの部屋に戻ってくると、異様な雰囲気に包まれていた。
「あーお帰りー。……その様子だと上手くいったみたいだねー。よかったね朱音ちゃん。」
桐島が笑顔で手を振る。
戻ってくるまでの道のりで手を繋いでいた。宿に入る際も朱音が離れたがらなかったのでそのままだ。そんな俺たちを見て桐島も安心した表情だ。
「待ってたわよ。水樹。さあ座りなさい?」
萩原は横に出してあった棒チョコを豪快にかじりながら言った。
どこか勇ましいその様は強気な彼女によく似合っているが珍しい。
「時人ー。俺もう勝てる未来が見えないー。」
竜が半ば投げやりにこちらを向く。
「や、柳さん……。」
そんな竜を見て朱音が笑いをこらえ切れていない。
竜は長い髪をピンク色のシュシュで二つくくりにしている。長さが足りてはいないがかわいいツインテールだ。甘いフェイスによく似合っていて女の子らしい。
朱音はつぼにはまったようで顔を背けて笑い続けている。
「おい時人。お前なんて子を連れてきたんだ……。」
八木が変わり果てた萩原に軽くひきながら言った。
「時人ー。チェンジだー。仇とってくれー。」
竜が手をあげて降参を示している。ノリノリの萩原はまだ止める気は無いらしくサイコロを握り締めて手招きしている。
「水樹も竜くんみたいにしてあげるわ。」
「罰ゲームありだからねー。」
竜の様子を踏まえてみると桐島の笑みも黒く見える。
「朱音ちゃんにも見せてあげるよー。水樹くんの可愛い様子をねー。」
桐島も強気だ。そこまで言われてしまうと逃げるわけには行かない。朱音の手を解いて竜のいた席へ座った。
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