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なんでやねんと歌姫は笑った。  作者: 烏有
第2章
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第76話 旅行


夏休みはまだまだ残っている。

俺たちの生活は大きな変化もなく続く。俺がバイトなどの予定がなければ朱音はほとんど昼前から家に来ては同じ時間を過ごした。

俺はキーボードと平行してギターを教えることを始めた。朱音に一本ギターを貸そうかと聞いたが朱音は断った。ここで練習するからいいらしい。

時折朱音は桐島と出かけていた。それでも夜ご飯までには帰ってきて食事をともにした。

気づけば予定していた旅行は明日に迫っていた。

「時人くん準備は済みましたか?」

「まあ。一泊だし。」

だが女性は荷物が多いらしい。リュック一つで収まる荷物に疑いの目を向けていた。

「海が近いんですよね。楽しみです。」

「近いよ。歩いて行けるから。」

朱音と話しているとスマホから着信音が流れる。

メッセージのやりとりは何回かあったが通話は初めての相手だった。

『水樹くん、元気かなー?』

『珍しいな。桐島。朱音に用事?』

朱音は時々自分の部屋にスマホを置いたままこの家に来ることがあった。時々というかしょっちゅうある。本人曰く連絡する相手も多くないので困ることはないらしい。

そういうわけでたまに桐島からメッセージが飛んでくることがあった。

『あははー。相変わらず一緒にいるんだねー。今日は違うよー。水樹くんに聞きたいことがあってね。明日のことなんだけどー。』

桐島は電話越しでもわかるほどの明るさだった。

『うん?』

『奈々が行きたいって。一人増えるのダメかな?』



「おーっすー。時人ー待ってたぜー。」

駅のコンコースでトートバッグ一つの竜が手を振った。時間も早いため眠たそうだ。

隣にはそれなりの荷物を持っている桐島と萩原がこちらを見ていた。

「水樹くん、朱音ちゃーん。おはようー。」

「久しぶりね。朱音ちゃん。水樹、急に悪いわね。」

「おはようございます。」

「みんなおはよう。部屋で予約とってたから問題ないって。」

桐島から聞いた話では部活内で色々あったらしい。今日明日と萩原が部活をサボってやってきた。

「さっき合致したら萩原がいてびっくりだったわー。」

「……そうね。竜くんが聞いていなかったことに私達もびっくりね。」

萩原はそういうと桐島も強くうなずいた。

「竜なら嫌だなんて言うわけないし、昨日のことだったしいいかなって。」

「だうと。時人はそんなこと考えてすらなかったろー?俺に知らせるなんて考えはなかったに一億。」

竜の冗談に朱音がクスクスと笑った。

「そうですね。時人くんはそういうとこありますから。」

「俺一億払う流れ?」

「……ねえ私が言うことじゃないけどそろそろ行かない?電車来たわよ。」

笑い合っていると呆れた顔で萩原が電車を指した。



「よう。時人。でかくなったな。春人さんたちは元気か?」

「お久しぶりです八木さん。今日明日とお世話になります。父も母も変わらず元気ですよ。」

焼けた肌が似合うガタイのいい男性。民宿の主人の八木が駅から出た場所で待っていた。迎えに来てくれたらしい。後ろにはミニバンが止まってある。

「そうか。それはいいことだな。お二人にもお会いしたかったが……。一人増えたと聞いていたが時人にこんなに友だちがいてたとは……。賑やかになりそうだ。みんな乗ってくれ。」

「お世話になりまーす。」

八木が運転席に乗り込んだので竜たちが挨拶をして乗り込む。俺は助手席だ。

「どうする?さっそく昼ごはんにするか?」

車が走り出して八木がバックミラー越しに後部座席に声をかけた。

「お腹すいたしご飯食べたいですー。」

竜が元気よく声をあげる。

「元気な兄ちゃんだな。女の子達もそれでいいのか?海にも行くんだろ?」

八木は竜に苦笑いしながら様子を伺った。

「うーん……。お腹すいたしねー。」

「結は何を……。ああ。そうね。でもご飯にしましょう?」

桐島は何かを迷ったようでそれを察した萩原がそれでも食事をうながした。

朱音は特になにも感づいてはいないようでニコニコとしている。

「じゃあご飯にするか。昼は普段は出していないからそこまで期待しないでくれ。」

八木は笑って運転を続けた。



「待たせたな。着いたぜ。」

車に乗ること数分。八木の営む民宿についた。海が近くにあることがわかる潮の香りする。

「ありがとうございました。」

「構わねえよ。今日は他に予約が入ってなくてな。少し余裕があるんだ。じゃあ部屋に案内するから入ってくれ。」

民宿の外観は昔から変わらない。古民家を改造して作られたこの場所は歴史を感じる作りだ。入り口の引き戸から鳴る音からそれがよく分かる。

「じゃあこの二部屋を使ってくれ。ご飯の用意が出来たら呼びに来るから少し待ってな。」

スリッパに履き替えて案内されたその部屋は竜と二人では十分すぎる広さだった。

近くの部屋から女子三人がはしゃいでいるようだ。ふすまに防音性は皆無らしい。

「あーお腹すいたー。」

竜もカバンを隅に置いて横になった。畳で横になりたくなる気持ちはわかる。

「畳は心の故郷やー。」

竜の謎の感慨を苦笑いで流した。

窓から外をのぞくと海が見える。波も高くなく遊んでいる人もそれなりにいた。

海で遊ぶなんて久しぶりだ。家族で来ても足を濡らしたりする程度だった。今日のこの後に思いを馳せた。




ここまで読んでいただきありがとうございました。

続きが気になる方はブックマークなどしていただければ幸いです。


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