第68話 1学期のおわり
今回少し短いです。
終業式も終わって、教室で通知表が配られる。一学期の結果はそこそこ。両親が満足するかはわからないが落胆することはないだろう。
ふと、隣の席を見ると、朱音もそれなりの結果だったようだ。もっとも中間テストの点が足を引っ張っているようではあるが。
「……どうしました?」
見つめているのに気づいた朱音が不思議そうにこちらに問いかける。
「……なにも。」
そう告げると朱音はにこりと一笑いして視線を通知表に戻した。
三井から通知表を渡された竜がはしゃいでいる。満足のいく結果だったようだ。
「さて、全員に配り終えたし、夏休みに入るが私に迷惑をかけるようなことだけはするなよ。では、解散。夏休み、楽しめよ。」
そう言って三井は教室を去っていく。彼女が教室を出た途端に教室は喧騒に包まれた。喧騒の中心の竜は机に上がりそうな勢いだ。
「楽しそうですね。」
朱音が竜のほうを向いて苦笑いしている。
「うるさいって言うんだよ。あれは。」
「あはは。夏休みは仕方ないよー。」
そう言っている桐島もどこかテンションは高めだ。
「……夏休み、楽しみですね。」
「朱音ちゃん私とも遊ぼうねー。」
「はい。お願いします。」
「やったー。楽しみだねー。」
朱音と桐島が楽しそうに計画を立てている。桐島のスケジュールはそこそこ埋まっているようで空いている日付を朱音に告げている。
「あー時人ちょっと待ってー。」
帰る準備のためにリュックに荷物を入れていると竜がやってきた。
「どうした?」
「どうした?じゃねーよー。夏休みの計画立てるぞー。」
竜の後ろには萩原と友里もいる。
「皆で遊びに行く約束してたじゃん?この後萩原も部活行っちゃうしー今のうちに決めとかないとー。」
「奈々が空いてる日から決めないとねー。」
桐島が朱音から離れて萩原に近づきながら竜の言葉を引き継いだ。
「そうね……。ここ二日が合宿だから次の日は休みなの。ここなら確実に部活はないわ。」
萩原がスマホのカレンダーアプリを見ながら答えた。
「俺は今のところ大丈夫そうだなー。みんないけるー?」
竜が俺たちに視線を配る。問題はないので頷く。
「うん。俺もその日なら大丈夫そうだよ。」
「私もー。」
友里も桐島も空いているらしい。朱音もニコニコとしながら頷いている。
「じゃーとりあえずその日で決定でー。いえーい。」
「いえーい。」
竜と桐島が拳を上げて喜びをあらわにした。夏休みに友人と約束を入れるなんて初めてだ。
「あ、ねえ友里くん、この辺って祭りとかないのかな?」
「祭りかあ。八月終わりくらいにあったとおもうよ。詳しい日付は覚えてないけど……。」
「夜店くらいなら奈々の部活終わりとかで行けないかなーって。」
桐島が萩原を見ながらそう呟いた。
「だからこの辺の祭りなんだね。ちょっとまって。」
友里がスマホで調べているようだ。
「去年は地元の祭りに行ったんだけどねー。せっかくだし行きたいなー。」
「……そうね。結が迷子になったわね。あんな小さい規模なのに。」
「ちーがーうー。奈々が迷子になったんだよー。」
「いーや。それは結ちゃんが迷子だなー。」
「えー竜くんひどくないー?」
竜と萩原が笑って桐島がすねている。
教室の一角は賑やかな喧騒に包まれている。
「時人くん、夏休み楽しみですね。」
「そうだな。」
朱音がみんなの会話にクスクスと笑いながら呟いた。
「……時人くんとのデートも楽しみです。」
朱音がこっそりと耳打ちする。彼女はデートと認識してくれているようだ。
「……楽しみにしてて。」
俺がそう答えると朱音は嬉しそうに微笑んだ。
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