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なんでやねんと歌姫は笑った。  作者: 烏有
第2章
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第55話 テストに向けて


本話から2章になります。



夏の日差しが強く差し込む午後の教室。

窓際の席に座る彼女はそんな暑さを感じさせない涼しげな表情をしている。

隣の席から眺めているのに気づいた彼女はこちらに微笑む。

「どうしたんですか?時人くん。」

カリカリと走っていたシャーペンが止まった。

「……なんとなく見てた。」

「……なんですか。それ。」

クスクスと笑って彼女は勉強に戻った。

今はホームルームの時間。担任の三井先生が何人かと面談するらしく、竜が最初に三井と教室を出て行った。残りの生徒は自習と告げていたので、期末テストも近く大人しく勉強しておくことにする。

そのままペンを走らせること数分。竜が一人教室に戻ってくるやいなやこちらを呼んで手招きした。

「次は時人呼んでこいってさー。隣の空き教室でみっちゃん待ってるからー。」

「りょーかい。」

竜と変わるように教室を後にした。



「……来たか。」

「来ました。」

相変わらずチョークで汚れた白衣を身に包んだ三井がだるそうにこちらを見た。

「水樹……はー……。」

手元の資料をみながら三井はため息をつく。

「水樹、期末の点を落とすなよ。」

「落とす予定はないです。」

「それならいい。」

唐突な話題に驚きつつも自身を持って答える。今回の範囲内なら前回とそう変わらず点は取れるはずだ。

「何の面談なんですか?」

「んー?……水樹は進路決まっているのか?」

「いえ、まだ何も決めてはないです。」

「……じゃあ来年、特進科に来てくれるか?」

この高校では二年に上がる際に特進コースに進むことができる。一クラス分を学年から集めて作られるそれは希望者全員が進むわけでもなく、ある程度成績などの条件があるようだがそれに自分が選ばれたようだ。

「来てくれるか?ってどういう意味なんです?」

「いや、水樹が特進科に来るなら、柳も行くとさっき聞いてな。学年一位の生徒が特進科に行かないのはもったいない。」

それに私の担任としての評価にも関わる。そう言って三井は軽く笑った。

「選ばれたのはありがたいんですが……。進学希望ってわけでもないですし。」

将来の夢とかがあるわけでもなく、自分の進路について何も展望はない。その状況で周りが受験モードの中にいても迷惑をかけるかもしれない。

「まあそこはいい大学に進学してもらえれば私もありがたいが……。そこは正直関係ない。水樹の成績的にも選ぶ権利はある。勉強していくうちにやりたいことが見つかるかもしれないし、その時アドバンテージにはなるはずだ。それに……水樹にとってメリットはまだある。」

「メリット?」

三井はにやりと笑った。

「水樹が特進科に決めると柳もついてくる。自動的に同じクラスだ。学年行事も大体が二年生がメインとなる。そんな学年に新しく人間関係築くのは面倒だろう?」

三井の言うことは大分正しい。入学当初、クラス内で一人でいた俺を竜と桐島が許さなかった。しつこいくらいに話しかけてくれた竜がいなければ今も一人で過ごしていたかもしれない。それはそれで楽な学生生活だったかもしれないが今となっては想像も出来ない。

来年、クラス替えがあってまたそのような人物がいなければ俺は教室で一人でいることになるだろう。楽ではあるが、集団生活において不便もある。

「まあ……それは助かりますね。」

「後二人、うちのクラスから推薦することが出来る。そのうち一人は桐島が希望したなら確定する。そしてもう一人……。」

確かに桐島は生活態度もテストの点も優秀だ。学習への意欲が高い本人もおそらく希望するだろう。

「まだ未確定ってことですか?」

「いや……期末テストの結果次第では長月を推そうと思っている。」

……想定外の名前が出てきたので困惑した。中間テストの頃の記憶が正しければ成績はよかったとは思えない。

「……なぜです?」

「長月の実力からすると妥当だからだ。」

頭にクエスチョンマークが浮かんでいたらしい。三井はクスリと小さく笑うと言葉を続けた。

「その様子だと長月の中間テストの結果は知っているようだな。だが……あれは本調子ではなかったのだろう。入学試験の最高点を取っていたのは他でもない長月なんだ。」

確かに朱音はいつでも勉強熱心だ。だからこそ中間テストの結果に驚きもした。もしあの結果が実力を発揮できていなかったのだとしたら理解はできる。

……朱音の不器用さも目立つが。

「だから期末次第なんだ。その四人で確定するなら水樹にも悪い話ではないだろう?」

確かにその四人同じクラスで進級できるなら俺にとってこんなにありがたい話はない。

「そうですね。いい話ではあります。」

「……なら水樹はとりあえず確定ってことで話を進めていこう。これから成績を落とすなよ。サボりもほどほどにな。」

「……気をつけます。」

「そこは即答してくれ。」

呆れ顔でため息をつく三井。

「……水樹も柳も態度面が心配だな。その四人で確定して、桐島が柳の、長月が水樹の首をしっかり捕まえておいてもらえるなら助かるんだが。」

「今の段階で出来てないので無理だと思います。」

「それは即答しないでくれ……。」

とはいえ特進科に進級するならある程度成績が必要だ。これからはサボりにも少し気をつけないといけない。

「では、水樹の面談は以上だ。次は桐島をよんできてもらえるか?」

三井に礼を告げて空き教室を出る。

ひとまず、期末を乗り切ることが必要だ。それも自分だけでなく朱音も。俺の望む未来はひとまずそこにある。



「桐島、次。空き教室で三井先生待ってる。」

「はーい。ありがと。」

教室に戻って自分の前の席にいた桐島に声をかける。桐島はペンを置いて歩いていった。

「……で、何してる?」

「んー?時人待ってた。自習飽きてさー。」

自分の席に座っていた竜に問いかけた。動く気配もなさそうなので丁度空いた桐島の席に座る。

「さっきの面談のことか?」

「あーそれもあるかなー。時人どう答えた?」

「俺は……推薦受けるつもり。」

「じゃー俺もかなー。」

本当に俺次第だったようだ。竜が満足している顔で頷いている。

「で、それもあるっていうのは?」

「おー。期末に向けてテスト対策するかーって。みんなで。それを誘いに来た。」

「みんな?」

「俺とー、結ちゃんとー、ユーリがとりあえず確定でー、あと萩原と時人と長月さん誘おっかなーって。」

「いいよ。勉強会しようか。」

「呼びました?」

隣の席にいた朱音が名前に反応する。

「長月さんも俺らと一緒に勉強会しよーぜー。」

「勉強会ですか?」

「そうそう。期末近いしー。どう?」

「楽しそうです。」

朱音は本当に楽しそうだと思っている顔をしていた。目が輝いている。

「お、おー。じゃあ長月さんも参加でー。」

竜が朱音の笑顔にやられている。朱音の威力の高さだ。

「どこで勉強するんですか?」

「それはもちろん……。」

竜はにやりと笑ってこっちを見た。

「時人の家だろ。」

「は?」

想定外の答えに思わず目を見開いた。




ここまで読んでいただきありがとうございました。

続きが気になる方はブックマークなどしていただければ喜びます。



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