第44話 兄と弟
昨日投稿したつもりができてなかったです。すみません。
松山も背が高いが、目の前の男は更に大きく威圧感があった。その金の髪に眉をひそめる表情が余計に増幅させた。もっとも眉はほとんど無いに等しかったが。
「お前、今日体育祭だったんだろ?楽しそうでいいな。」
「そうだよ。……兄さんはこんなところで何を?」
彼は松山の兄らしい。だが、二人の間にはただならぬ雰囲気を感じた。第一声からして印象が悪いのでそう感じてしまうのかもしれないが。
「俺がどこでなにしようとお前に関係ないだろ。」
弟を強く睨む兄。やはり仲は良くないらしい。
「……ごめん。そうだね。」
明らかにテンションの下がっている松山。それを当然と見やる兄松山。
俺には兄弟なんていないが、この二人の距離感が一般的な兄弟関係ではないとは思う。何かあったのだろう。隣の朱音を盗み見ると少し怯えていた。
「ユーリはいいなあ。学生生活も楽しんで、友達もいて、女も侍らして。……ちょっと生意気じゃね?」
「そ、そんなことは
「ああユーリのお兄さんですか?友達の柳っす。ユーリにはいつもお世話になってるんですよ。遅くまで連れまわして申し訳ないです。いまから帰るところなので。」
兄の言い方に少し腰が引けた松山に被せるように竜が挨拶をした。小さく会釈しつつ左手を後ろに回して俺の方を向けて兄に見えないように手招きする。
前にいた桐島と萩原を後ろに下げて前に出る。松山兄は少し女性の扱いが雑なようなので俺達が前に出るということだと思った。竜の考えそうなことだ。
「水樹です。友里くんと親しくさせてもらってます。」
「いやー俺達友達少なくってー。ユーリくんもそんなに多い方じゃないんで気が合うんですよ。」
「なんだこいつら。うざ。」
「俺たち距離感はかるのへたなんですよー。」
唐突に前に出るように畳み掛けた俺たちに引き気味でこちらを睨む。
「兄さん……あんまり威圧しないでほしい。」
「は?」
竜の勢いに少し持ち直したのか松山も口に出す。それが気に食わなかったのか兄は露骨に態度を悪くさせた。
「すみませんっす。折角ユーリのお兄さんに会えたところ申し訳ないんですけどここから家が遠くて門限ピンチなんでここらで失礼させてもらいます。ユーリくんに送ってもらう約束していたんでもうちょっとお借りしますねー。」
竜が場を切り出して帰宅をアピールした。そのまま小さく頭を下げて後ろの三人に指示を出して歩き出させた。
「失礼します。」
微妙な笑顔で挨拶して歩き出す桐島と、小さく会釈して通り過ぎる萩原。二人に続いて朱音も歩き出した。
目の前の竜と松山の態度が気に入らなかったようでこちらを強く睨んではいたが彼女たちが横を通り過ぎるときにそちらに目線をやったのはわかった。
「じゃ、ユーリも帰るかー。」
朱音が通り過ぎる瞬間に俺もそちらに続いて歩き出す。その後ろに竜と松山が続く。小さく視線を後ろにやって見ていたが竜に促されて松山も一歩踏み出したようだった。
兄はこちらを見ていたがそのまま何も言うことなく俺たちは帰路についた。
「ごめんね。僕の兄さんが。空気悪くしちゃった。」
松山は小さく謝罪した。
「いーよいーよ。あんまり仲良くない感じ?そんな兄弟もあるってー。」
竜が雰囲気を和ませるように明るく努めた。
「ちょっと怖かったねー。」
桐島があははと笑いながら竜に乗っかるように話した。
それでも松山が落ち込んだままで肩を落としている。
「仲が悪いというより……兄さんに嫌われているって感じかな。わからないけど。」
「あーどんまい。」
「竜はテキトウすぎるなー。」
竜の雑な慰めに少し笑いながら松山が呆れていた。しかし雰囲気は戻りつつあった。
「……私も弟とあまり仲良くないよ。そんなものだと思うけど。」
萩原も松山に共感するように話し始めた。
「小さい頃は一緒に遊んだりもしてて仲良かったと思う。でもいつからか喧嘩ばかりしてる。私も別に仲良くする気ないし。」
桐島は萩原の姉弟関係をしっていたのか驚きもなく話を聞いていた。
「萩原ってお姉ちゃんだったんだー。なんかしっくりくるなー。」
竜がカラカラと笑いながら納得している。そういわれるとそんな気もしてきた。
「どういう意味よ。それ。」
「俺もなんとなくわかるよ。どこか……姉御肌?みたいな。頼りになる感じするよね。」
「そーなの!竜くんも友里くんもわかってるねー。」
「結まで……。」
やれやれといったように頭を抱えた萩原。それを見て桐島と竜が笑っていた。松山も苦笑いをしている。
「……頼りになる……。」
朱音が小さく呟いた。隣にいた俺にしか聞こえなかったようだった。
「どうした?」
「いえ……なんでも……。いや、水樹くんも頼りになると思ったんですけど。」
「けど?」
「……お兄さんってガラではないなって思いまして。」
「まあ兄弟いないし。」
「……そうですね……。」
会話が止まった。朱音は何か考えているようだった。
竜たちはテンションが戻ってきたようではしゃいでいた。俺たちの会話も聞こえていなかったらしい。松山もさっきの落ち込みは見えなかった。
そして竜たちが駅の方へ分かれる交差点に着いた。
「じゃ、俺たちは帰るから。そっちも気をつけてー。お疲れー。」
「楽しかったねー!朱音ちゃん水樹くん友里くんまたねー。」
「お疲れ様。気をつけてね。」
電車組が三者三様の別れを告げて駅に向かって去っていった。
「じゃ俺たちも帰ろっか。」
手を振っていた朱音に松山が切り出した。そうして俺たちは歩き出した。
「水樹くんの家ってどのあたりなの?」
「ここからなら歩いて5分。ほぼまっすぐ。」
「長月さんもそっちなんだよね。じゃあ後は水樹くんに任せるよ。」
どうやら帰り道は違うらしい。信号のある交差点に差し掛かったあたりで松山が自転車に乗った。
「長月さん水樹くん体育祭お疲れさま。最後ちょっとあったけど今日はありがとう。」
「いえ、楽しかったです。」
「こちらこそありがとう。」
別れを告げると松山は颯爽と自転車で駆けていった。
「……帰ろっか。」
「はい。」
俺たちも並んで歩き出す。その後も会話はほとんど無かった。
エレベータを降りて廊下を歩く。朱音の部屋の前に着いて立ち止まった。
「水樹くん、お疲れ様です。送ってくれてありがとうございました。」
「いや、帰り道だし。気にしなくていいよ。」
「あの、水樹くん……お、おやすみなさい。」
「……おやすみ。」
なにか言いかけたものの口にしなかった朱音に後ろ髪をひかれる思いだがそのまま部屋に帰った。
色々な事が起きて今日は疲れた。長い一日だった。シャワーを浴びて早々に眠ってしまった。
「本当にいい女だったな。あれでユーリとタメか?」
ユーリたちが去っていった方角を眺めて呟く。アイツはただのガキにしか思えない。
「……さっきのあの男。どこかで見たような……。」
あのロン毛。どこかで会ったな。ちょっと調べてみるか。それにあんな女はあいつらにはもったいない。
……ユーリが悔しがる顔が浮かぶ。
「けっ。丁度いい憂さ晴らしだ。」
「ジュンちゃん何を一人で喋ってんのー。」
「何でもねーよ。……ちょっと楽しみが出来ただけだ。」
「ええー。俺にも混ぜてよー。」
「……そうだな。」
さて、どうしようかな。楽しくなりそうだ。
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