表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なんでやねんと歌姫は笑った。  作者: 烏有
第1章
45/166

第43話 体育祭


「しゃー。勝つぞー。時人ー!」

竜の左足と自分の右足をタオルで結んでいると上から声がかかる。この競技に巻き込んだ当の本人は楽しそうにこちらに声をかけた。

「やる気満々だな。」

「もち。せっかくだからな。楽しもうぜ。」

考えてみれば竜と息を合わせるためそこまで本気で走る必要もないし、竜なら気を遣わないので二人三脚は丁度良かった。

スタートラインで隣に立つ竜は腕の準備運動をしながら楽しそうに笑っている。それを見てつられて笑ってしまう。

「時人もやる気満々じゃん。」

「誰が。」

「勝負に勝つ人は笑ってる人なんだよ。」

「なにそれ。」

「俺が今考えた。」

ドヤ顔で唱えた自論に鼻で笑って返事をしておく。

「ま、せっかくの時人とのコンビだし勝ちに行こうぜ。」

自身ありげな竜はやる気に燃えていた。



「まっさかこんな結末になるとはなー。」

竜はカラカラと笑った。

今いる場所は保健室。椅子に座る竜の右ひざは少し見たくない状況になっていた。

二人三脚の開始の空砲が鳴ってすぐだった。隣のペアが一歩目から盛大にこけてしまってそれに巻き込まれる形で俺たちもつまずいた。

何とか転倒することなく耐えたものの、スタートから大きく出遅れたことで竜のやる気スイッチが働いたようだった。

竜が声を出して息を合わせる。だんだんとスピードを上げていった俺たちは何ペアか抜き去って二位まで駆け抜けてゴールした。

競技が終わって退場した後だった。二位の結果に満足していた竜と話していると退場門の付近で知らない生徒がじゃれあっていた。それにぶつかりかけたショートカットの女子生徒をかばおうとして竜がぶつかってしまい転倒。そして今に至る。

「俺としては堂々とサボれて助かる。」

「このクーラーの効いた部屋でそれを聞くと否定できんなー。」

竜を連れて行くという名目でともに保健室に入った俺は一応竜の手当てをした。そしてそのまま涼んでいた。

「まあ外は暑いからね。熱中症も怖いから少し涼んでいきなさい。」

保健室の担当教員までもそう言っているのでお言葉に甘えることにする。

担任の三井先生といい、この養護教諭といい、この高校は真面目な態度の先生が少ない気がする。ありがたいことだ。

「しっかしあれだけ盛大にぶつかっといて謝りもしないとは人としてどうかねー。」

その場では笑って済ましていたものの内心イライラとしていたようだった。竜は自分のひざを見て文句を言っている。

ふざけていた生徒は先輩だったらしい。竜にぶつかってそのまま逃げるように去っていった。

「まあまあ。大きな怪我もなくあの子も無事でよかったじゃん。」

とりあえず慰めておいた。ついでに話題も変えておく。

「そうだなー。萩原に当たんなくてよかったよ。バレー部大会近いらしいし。」

「知り合いだったのか?」

「いや、クラスメートだから。時人も知ってるって。」

「……まじか。」

「お前のその反応にマジかって言いたいよ……。競技決めるとき前で黒板に書いてただろー。」

どうやらその女子生徒はクラスメートだったらしい。

「結ちゃんとよく一緒にいるだろー?」

そう言われて思い出した。昼をよく一緒にとっていた気がする。

「あなた達、もう十分涼んだでしょ。そろそろグラウンドに戻りなさい。」

竜の気分が元に戻った頃、養護教諭が促した。

「はーい。時人。出ようぜ。」

「仕方ない。……ありがとうございました。」

退室を促されては流石にごねることは出来ずそのまま保健室を出る。竜はひざの怪我が気になるのか右足に負担をかけないようにヒョコヒョコと足をひきずって歩いた。

「まあ俺ももう出る競技ないし……。あー!!」

「うるさっ。なに?」

すぐ隣で叫んだ竜に耳を押さえつつ抗議する。

「二人三脚の後だったじゃん。応援合戦。見逃したー!」

「一年出ないから関係ないじゃん。」

「見たかったんだよー。あっちゃー。」

額を叩いて本気で悔やんでいるようだった。

「そんなところで叫ばない!」

保健室から半身を出した先生に平謝りしてからグラウンドに戻った。



「竜くん、怪我大丈夫だったの?」

テントに戻ると桐島が心配そうに寄ってきた。

「任せろ。時人が手当てしてくれたからそれなりに回復した。」

「それなりかい。」

竜の小ボケに小さく突っ込む。心配気味だった桐島も俺たちの雰囲気でほぐれたようだった。

「えー水樹くん手当て下手そう……。」

「誰が不器用だ。誰が。」

クスクスと笑う桐島がこちらを見ていたのでこれにも突っ込んでおいた。

「竜くん、さっきは庇ってくれてありがとうね。」

桐島の後ろにいた萩原が竜に礼を告げる。

「……なんのことかなー。わっかんないなー。」

竜は笑っていた。それを聞いて萩原が穏やかに微笑んだ。

「気づいてなかったから本当に助かったよ。ありがとう。」

「あーせっかく誤魔化してカッコいいクールな俺を演じてたのにー。」

「カッコよかったよ。……それさえなければね。」

「うっは。萩原きっつー。」

テント内は最初の雰囲気は無かったように笑いで賑やかになっていた。

「あ……柳さん、怪我は大丈夫だったのですか?」

丁度、競技から戻ってきた朱音が竜の心配をしていた。

「問題なっしんぐ。さんきゅー。」

竜は他のクラスメートと同様に心配させまいと軽く流した。

「元気そうでよかったよ。」

朱音の後ろにいた松山が爽やかにそう言った。

「おーユーリ。体育委員も大変だなー。」

親しげに松山に返事をしている。彼の下の名前は友里というらしい。

競技の終わったタイミングで人も増えてきたのでテントを後にした。どうせ残る競技は少ない。近くをぶらついて閉会式まで過ごそう。



「水樹くん、君も打ち上げ来るんだよね?」

近くの日陰で休んでいると松山が声をかけてきた。

「ああ。行こうと思っている。」

「……珍しいね。こういう集まり嫌いだと思っていたから。」

松山はそう言うとこちらを見つめていた。

「嫌いというより面倒くさいって感じかな。」

「じゃあどうして行こうと?」

「……桐島に呼ばれたから。」

誤魔化す丁度いい嘘も思いつかなかったので本当のことを話した。朱音が来るからとまでは言わなかったが。

「桐島さんに?……そうか。時間をとらせてごめんね。」

「いいよ。暇してたし。」

「もうすぐ閉会式だからテントに戻っておいてね。

「了解。」

桐島の名前を出すと少し思案顔になっていたが納得でもしたのか松山は去っていった。

ようやく体育祭が終わるらしい。なるべく影にいたつもりだが日に焼けた顔が少しひりひりとしていた。





ここまで読んでいただきありがとうございました。

続きが気になる方はブックマークなどしていただければ幸いです。



朱音が一言しか話してません。なんてこった。

登場人物が増えてきました。なるべく投稿頻度を落とさずに頑張りますのでみんな覚えてくれると嬉しいです。



いつもいいねありがとうございます。励みになります。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ