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なんでやねんと歌姫は笑った。  作者: 烏有
第1章
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第42話 体育祭


晴天と辞書を引けば今日のような空が書いてあると思うようないい天気だった。

日差しがきつく夏真っ盛りのこんな日に体育祭なんて少し生徒の体調面を考えてほしい。

グラウンドでは騎馬戦が繰り広げられている。

この学校の体育祭は縦割りで各学年それぞれ三つに分けて三組の対抗戦になっている。

竜は既に先輩たちと打ち解けている。荷物置き場兼休憩所にもなっているグラウンドに立てられたテントの真ん中で騒いでいた。

当然、二人三脚以外に立候補していないので大半は見学して過ごすことになる。

競技にさして興味も無いので日陰を求めて少しグラウンドから離れていた。

生徒の身内など外部からの来校者がいるため校舎は閉め切ってある。よって教室に逃げることはできなかった。

中庭には入ることができたので中庭のベンチで少し休憩をする。木陰で風も通るいい場所を見つけた。

昼休みには生徒で賑わうこの場所も今はだれもいなかった。ベンチに横になると離れたグラウンドの喧騒が彼方に聞こえる。

二人三脚が午後の競技だったので昼まで暇になる。強い日差しに体力を奪われていたのか、知らない人が大量に近くにいたグラウンドでの疲れかそのままウトウトとしていた。

気温は高いが木陰の風は気持ちよくそのまま眠りに身体は落ちていった。



少し騒ぎが聞こえて目を覚ます。どうやら昼休みに入っていたようで昼食をとるために教室に移動する生徒たちの声が耳に入ったようだった。昼休みの時間だけ生徒は校内に入ることができる。グラウンドで昼食をとることも許可されてはいたが炎天下の中、ピクニックというテンションになる生徒は少ないようで大多数の生徒が校内に移動していた。

身体を起こして肩を回す。風は気持ちよかったとはいえやはり気温が高かったせいかじんわりと汗をかいていた。

立ち上がって教室に戻ることにする。昼ごはんを食べるためにというより空調の効いた部屋が恋しかった。



教室は既に騒がしく扉の外からも盛り上がりがわかった。

からからと音を立てて教室に入る。クラスメイトは既に大小いくつかのグループにわかれて昼食をとっている。

竜も既にお弁当を食べていたので俺も軽く済まそう。

自席では、というより隣に座る朱音、前に座る桐島、とクラスの中心となるメンバーがいて人が集まらないわけも無い。俺の席では体育委員の松山が座って朱音と何か話しながら楽しそうに昼食をとっていた。

リュックに入っているいつもの昼ごはんをとらずに過ごすとこの後の日差しでやられてしまいそうだ。ため息をついて席に近づく。直前まで松山はこちらに気づかなかった。

「……わるいな。」

一言、声をかえてリュックから昼ごはんを取り出す。

「ああ、水樹くんか。こちらこそ勝手に席を借りてごめんね。」

「構わない。」

そう言って去ろうとしたが松山は声を続ける。

「水樹くん、点呼の時くらいはグラウンドに戻ってきてくれ。三井先生も困っていたんだ。」

「どちらかというとやれやれって感じだったけどねー。」

苦笑いをしながら言った松山に続けて桐島が発言する。

「水樹くんさー……。」

桐島は言葉に迷っているようだった。難しそうな顔をしている。待っていても続きもでなさそうだったので肩をすくめて背を向けた。中心人物の多いここで昼食をとる気は無い。竜も違うクラスメートと昼食をとっていたので行く場所も無く、そのまま教室を出た。

渡り廊下で窓にもたれかかりながらぼそぼそとお昼ごはんをとる。暑いこの時期に牛乳を家から持ってくるのは危険なので最近は自販機で買うかウォータークーラーの水で我慢していた。

食べ終わったビニールの包装をゴミ箱に捨てて自販機まで行こうとしたとき声をかけられた。

「さっきのアレは態度悪いよー?」

桐島がそこにいた。

「あの場で言いにくいことがあったんだろ?じゃあそこにいても仕方ないかなって。」

「わかったなら連れ出してほしかったなー。」

桐島は用意周到に牛乳をこちらに差し出した。自販機で買ってすぐのようでまだ冷たかった。

「……いただきます。」

「高いよー?」

そう言われ突き返そうとするも冗談冗談と桐島が笑っていたのでありがたく受け取ることにする。

「で、どうした?」

「……さっきね体育祭の打ち上げをクラスでやることになってね。それも今日。」

桐島は事の顛末を説明した。俺が中庭で寝ている間に決まっていたらしい。体育祭が終わってからみんなでご飯を食べに行くようだった。

「ほとんどのクラスメートが参加するんだけど、水樹くんにも来てほしいんだよね。」

「え、嫌だ。」

「そういうと思ったー。」

仲の良い人も少ないし、そもそも面倒だ。

「……なんでこうまでして俺を誘うんだ?」

わざわざ声をかけにきてくれたのだ。桐島なりの理由があると思った。

笑っていた桐島が持っていたイチゴオレを飲んで口を開く。

「んー。朱音ちゃんも来るんだよね。……最近の朱音ちゃん明るくなったのは良いことなんだけど……。なんていうか不安なんだ。」

予想もしていなかった名前に少し驚く。

「不安?」

「うん。最近朱音ちゃん何か焦ってるというか……。よくわかんないけど。」

「なんだそれ。」

珍しく歯切れの悪い桐島に困惑する。

「私もわかんないんだー。でも最近焦ってるって感じする。しゃにむに?がむしゃら?みたいな。」

「……それと、俺の打ち上げの参加がどう繋がるんだ?」

「んー。……あのね私は朱音ちゃんと仲良くなったと思ってるよ。それでも、朱音ちゃんの一番はやっぱり水樹くんだと思ってる。……だから、いてほしいんだ水樹くんに。」

「……そんなことないだろ。」

紙パックの中身を吸おうとしてストローがずずずと音が鳴る。もう空になっていた。

「そんなことあるよ。……何も無いかもしれない。でも、何かあったときのために来てほしい。」

「無茶苦茶だな……。」

空になったそれをゴミ箱に投げ入れる。

「来てくれるよね?」

少し不安げな桐島がこちらを見つめていた。

「……それを断れるほど強くもないって。」

ため息をついて返事をする。桐島がそう言うなら仕方ない。

「ありがとー。さっすが水樹くん。」

彼女なりに朱音を思っての行動らしい。桐島はさっきまでの真剣な表情から一変して破顔一笑した。





ここまで読んでいただきありがとうございました。

続きが気になる方はブックマークなどしていただければ喜びます。


相変わらず朱音が登場しない回。

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