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なんでやねんと歌姫は笑った。  作者: 烏有
第1章
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第40話 落ち込みと渡り廊下


「……あっちゃー……。かんっぜんに私のせいだね……。それは……。」

サボりを予知した桐島が俺を連れ出したのは渡り廊下だった。

まだ午前の授業が残る短い5分だけの休憩時間。

二人並んで窓の桟にもたれかかる。開かれた窓からは夏の熱気を伴った風が舞い込む。俺たちの髪がさやさやと揺れた。

桐島に伝えたのはテンパっていつも通りできず彼女を泣かせてしまったこと。

そして俺たちの間にあった音楽すらも絶えたこと。

桐島はわかりやすくおでこに手を当てて落ち込みを見せた。

「ごめんね。私のせいだよね……。」

「……俺が悪いんだって。俺が……できなかったから。」

桐島の落ち込みにつられてこちらも顔の角度が下がっていく。

「水樹くんが朱音ちゃんの前だとまさかここまでポンコツになっちゃうとは……。」

桐島は雰囲気を変えるように砕けた態度を見せた。

「……ぐうの音も出ません。」

ひとまず桐島に合わせておく。実際にポンコツだったのは事実でもあるし。

お互いの少し取り戻したテンションに顔を見合わせて小さく笑いあう。

休み時間も残り短い。桐島が知りたいであろう事柄は伝え終えた。

「ひとまず戻ろっかー。」

「そういえばどこを見て気づいたのさ?」

「ああー。確信したのはさっきの授業中だよー。」

「授業中……?」

桐島曰く、隣の時人を起こそうとして水樹くんと、呼んでるのをきいたらしい。

「昨日はあんなに親しそうに時人くんって呼んでたからねー。それも呼びなれてなくて不意に苗字で呼んだって感じじゃなかったし。……察するよねー。」

「ああ……。今朝……そう呼ばれたんだ。」

「それでも水樹くん全然起きないし。」

あはは。と苦笑いをして桐島は続けて話す。

「眠そうな顔でどこか行ったと思ったら渋い顔して帰ってくるし。朱音ちゃんにプリント渡したと思えばそれだけで話は終わっちゃうし。……二人ともわかりやすすぎるなあー。」

話しながら教室に戻る。休み時間の喧騒は続いていて教室の中は賑やかだった。

「もうサボるのも寝るのもダメだよー。」

教室内の桐島はさっきのテンションを全くひきずらずいつもの様だった。

「……確約しかねる。」

「水樹くんのそういう不真面目なところ嫌いだなー。」

「桐島はキャラに似合わず真面目すぎるって。」

次の授業の担当教師が教室に入ってきたとほぼ同時にチャイムが鳴る。慌てて俺たちは席に着いた。



「しっかし、時人はこんなにポンコツだったかねー。」

「うるさいな。」

昼休み。桐島が彼女とクラスメートと食堂に行ったのを見て安堵した。

この状況で隣で昼食をとることが躊躇われた。

目の前でお弁当を食べ進める竜に事の顛末を説明した。

「……ま、所詮俺たちなんて16歳になろうかっていうのガキだからな。できないことのが多くて当たり前だろ。……まして、コミュ力貧弱時人君じゃ余計になー。」

不名誉な二つ名をつけられたが甘んじて受け入れる。実際にコミュニケーション能力が足りていないのは確かだ。それに竜なりの慰めでもあるらしい。

「考えたいことがあるって言われたんだろー。暫くは待つしかないさ。……というかそもそもまだ出会って二、三ヶ月だろ。今までの仲良くなるスピードが尋常じゃなかったのさ。」

紙パックの牛乳のストローを噛みながら竜の話を聞く。

「体育祭近いし、ひとまずそっちに気を向けておけばー?俺たち一年は特に何もないけど。二年の応援団がすごいらしいぜー。」

「あんまり身体動かすの得意じゃないんだが。」

竜はむしろ丁度いいだろ。と言ってから玉子焼きを俺の口に放り込んだ。塩味が効いていた。



午後のホームルームで担任がだるそうに体育祭の説明を始める。しかし、生徒側を見ることなく教卓に置いた紙を読んでいるのがまるわかりで体育祭に興味は無さ気だった。

「あー、体育委員、競技者決めてくれ。一人最低一つは出てもらうからな。」

説明が終わって早々に近くの椅子に腰をかける。急に投げ出された体育委員の男子がおずおずと前に出てきた。

少し遅れて女子の体育委員が前に出てくる。彼女は教卓に置いてあった紙を手に取り黒板に競技を書き始めた。

「えーっと。とりあえず男女混合の競技から決めていこっか。」

爽やかな笑顔でよく焼けた肌に白い歯が目立っていた。彼が運動部であることは一目でわかったものの名前が出てこなかった。

とりあえずあまり目立たず走らずに済みそうな競技に当たりたい。第一候補は集団戦の綱引き。

「はいはーい!俺と時人で二人三脚やるからー!!」

と、思っていたのだが教室の注目を浴びたのは竜だった。

「あはは……。じゃあ二人三脚は決まりね。」

こちらに了承を取ることなく二人三脚の欄に名前が書かれる。

カラカラと笑ってこちらを満足そうに見ている竜。わかるようにため息をついておく。それを見て変わらずカラカラと笑っていた。

体育委員の先導で他の競技者も決まっていき、残りは男女別の競技だった。

二人三脚の出場者に決まったので他に立候補はしない。

頬杖をついて話を半分に聞きながらホームルームは進んでいく。気がつけば他の競技のメンバーは決まっていた。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

続きが気になる方はブックマークなどしていただければ喜びます。


今回少し短めです。

話がなかなか進まなくて難しいです。頑張ります。


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