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なんでやねんと歌姫は笑った。  作者: 烏有
第1章
26/166

萩原奈々の昼休み


本日2度目の更新になります。

第24話とどちらを先に読んでもらっても問題はありません。

この話はクラスメイトの視点となります。



最近、結が嬉しそうだ。

理由は明確。仲良くなりたいと狙っていた長月さんと関係が進んだから。

私は普段の席が結と遠い。教室の左後ろにいる結と間反対の右前側に位置している。

授業中、真面目な結は真剣にノートをとっている。そんな姿をチラッと見ていた。

その肩ごしに、長月さんの顔が見えた。彼女は隣の席をチラッと見てから黒板に視線を移す。

結の後ろの席の男子……水樹くんだったっけ、彼は今はいない。この授業が始まる前に教室を出て行ってから帰ってきていなかった。彼はたまにこうして授業をサボっている。

今日はまだ来ていない竜くんも遅刻が多いのにこの前の中間テストでは学年トップだった。

結曰く二人とも不真面目なくせにテストの点が良くてズルイらしい。

私はそこまで真面目なわけじゃないけど授業をサボるなんてできないし、しようとも思わない。授業を面倒と感じることはあるけれど抜けた後何を言われるかわからないし勉強だってついていくのが精一杯だから。

そんなことを考えていると授業が終わるチャイムが鳴った。後半上の空だったため慌てて写していない場所をノートにとる。先生が余談もそこそこに教室を発った。

昼休みが始まると食堂に行く生徒だったり、他クラスに行く生徒だったりと教室が騒がしくなる。

大きな声が聞こえたと思えば、竜くんと水樹くんが教室に入ってきた。竜くんの片手に持つコンビニのビニール袋の中身はホットスナックらしい。良い匂いが教室に広がってクラスメイトから批判が飛んでいた。

高笑いをしながらクラスメイトに自慢している竜くんのとなりで苦笑いをしている水樹くん。

この二人は仲がいいらしい。竜くんは私もよく喋る。というかみんなとよく喋る。友達も多い。なのに水樹くんといるのをよく見かける。

頭も顔も良くて面白くて明るい。女子人気も高い。彼女が欲しいと言ってるのを聞いたことがあるし、既に何度か告白も受けているらしい。まだ誰とも付き合ったりはしてないらしいけど。

その二人が水樹くんの席に向かう。二人はいつもあそこでお昼を食べている。

あ、結がサボりと遅刻をした二人に怒っている。暖簾に腕押し、ぬかに釘。二人とも応えた様子はなく、ご飯の準備をしていた。

笑いながら謝る竜くんと、手を軽く上げて何か一言二言言うだけの水樹くん。その態度が気に入らないらしくヒートアップしかけた結を長月さんが止めていた。

その途端、結は緩んだ笑顔になって二人を許したらしい。というか長月さんに構ってもらってそれどころではないって感じかな。

……ずるい。私のほうが結と仲良くなったのは先なのに。写し終えたノートを仕舞って結の席に行く。私に気づいた結がお弁当片手に立ち上がった。

結が長月さんも昼ごはんに誘った。……長月さん話づらくて苦手なんだけどな。

でも結が仲良くしたいなら仕方ない。結のためだ。

お弁当派の結も食堂派の私のために一緒に食堂に向かう。長月さんもお弁当派らしい。

二人に席取りを任せて食券片手に列に並んだ。食堂のおばちゃん達の動きはベテランのそれでどんどん列が進む。私のどんぶりもすぐに出てきた。

席に向かうと待ってくれていた二人がまだお弁当に口をつけずに出迎えてくれた。

三人揃っていただきますをする。

正直、気まずい。長月さんには以前なんどか話しかけたことがあるけど会話が弾んだ記憶がなかった。名前すら呼んでもらったことがない。

今も結を間に挟んだ感じで会話している。私と結。結と長月さん。そんな感じだ。

……というかこんなに喋る子だっけ?結がぐいぐい話しかけてるとはいえ彼女もちゃんと会話している。あれ、いま笑った?初めて見たかも。

……かわいい。

メガネの奥の切れ長な目に普段のポーカーフェイスで冷たい感じの印象だったのに、今の長月さんは明るくて朗らかな印象を持たせる。

これはずるいな。女の私ですらときめく笑顔に可愛いものが好きな結が放っておくわけがない。


「奈々聞いてた!?」

「え、ごめん聞いてなかった。」

「もーしっかりしてよ。ね朱音ちゃん。」

「はい、そうですね。」

「なんの話?」

「奈々が可愛いって話!」

「え、なに?急に。」

「だって私が朱音ちゃんと話してると頬膨らましてすねてるんだもん。」

「……すねてない。」

「萩原さん今もすねてます。」

「すねてないから!」


もうなんなの。

クスクス笑う二人から逃げるように顔を背ける。

視線の外でニヤニヤしている結が目に浮かぶ。

確認するようにチラッと結を見ると目が合った。やっぱりニヤニヤしていた。

おかしくなって噴出す。

それをきっかけに二人もまた笑い出した。


「奈々と朱音ちゃんが仲良くなれそうでよかったー。」

「……まあ私もそう思うかな。」

「……よろしくお願いしますね。」

「ふたりとも硬いー。」


まだ完璧に打ち解けられた。とまで言えないけど前までの印象はもうない。

クラスで誰とも話さなくって浮いてた長月さん。結がずっと気にかけてたから私もよく見ていた。

感情を表に出すようになってよかった。と思う。……可愛いし。

まだ他のクラスメイトは知らないのか。彼女がこんなに可愛いなんて。

そう思うと少し優越感。

彼女がこうして話すようになったら男子たちは放っておかないだろうな。

今だけは私と結だけが知っている。それだけでいい。


「よろしくね……朱音ちゃん。」

「!!……よろしくでう!」

「噛んだ?」


……やっぱり可愛い。

名前呼びに慣れてないのか顔を真っ赤にした彼女を見て私と結はまったく同じ事を思った。





ここまで読んでいただきありがとうございました。

続きが気になる方はブックマークなどしていただければ幸いです。


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