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なんでやねんと歌姫は笑った。  作者: 烏有
第1章
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第23話 変化と

更新が遅れて申し訳ないです。


華の金曜日。今日一日がんばれば続く土日と休みになるので大概の学生は週末気分だ。

とはいえ昨日の掃除の件で少し憂鬱だ。早々に謝ってしまおう。

気持ちを切り替えるために今日は朝からパックの牛乳片手に通学している。ストローは噛んでしまいがちだ。ずるずると音が鳴って中身が無くなったパックを落とさないようにストローで支えながら歩き続ける。

「歩きながらなんて行儀が悪いぞ。時人。」

「ふぉはよう。」

竜はよく俺のマナーについて口を出す。行儀が悪いのは間違いないが手がふさがるよりはいい。指摘はするものの怒っているわけではない。二人横並びで歩き続ける。

「やっと金曜きたかー。今日新しいバイトの面接あるんだよ。」

前にアルバイトをしていた飲食店に見切りをつけていた竜はすでに新しい職場を見つけたようだ。次は大きな駅にあるモールの中のアクセサリーショップらしい。

普段はあまり制服を着崩すことなく着ている竜だ。だが、体育などで着替えるときはその下のネックレスやバングルを見ることができる。

俺の髪を長くて鬱陶しいという彼だが、長さで言えば竜のほうが長い。前髪以外はだが。その長髪をポニーテールにしていたり、下ろしていたり、オールバックにしていたりと彼の髪の遊びは幅広い。その髪から見える耳には複数のピアスがついていた。

本人に確認したことはないがシルバーアクセが好きなようだ。

「次こそは長く続くといいな。」

さすがに会話するのに不便なので空の牛乳パックは既に捨ててある。

好きなものを扱う職場に着くことが必ずしもいいとは思えないが、竜には天職な気がする。むしろ今までそこで働こうとしなかったことが意外だ。

「そこはまず面接が通るかどうかだなー。」

話しながら歩くと時間がたつのが早く感じる。周りに同じ制服が目立ち始めたと思えば、既に校門はすぐそこだ。門では体育教師が立って生徒一人ひとりに声をかけていた。

門をくぐればそこまで同じ方角を向いていた生徒が各学年のロッカーに向かって三方向に分かれだす。

俺たちも周りと同じく靴を履き替えて教室に向かう。竜はやはり交友関係が広いようで教室に向かう道すがら男女問わずいろんな友人に声をかけていた。

もちろん俺に声が掛かることは無い。そもそもクラスメートですら話したことが無い人が多いのに他クラスなんてもっと距離が遠い。

竜の横に立っているとあらためて感じた。友達が多いことが絶対良いとは思っていないがある程度の関係性は必要かもしれない。とはいえ面倒くささ、一人の気楽さが勝ってしまううちは難しいが。

教室に入って自分の席に着く。竜も自分の席で一日の準備なりしているようだ。

「おはようございます。」

「おはよう。長月。」

定番となった席についてからする挨拶。今日も学校に着いたことをあらためて実感する。授業に向けて気持ちを切り替えていきたいところだが、その前に済ましてしまおう。

「長月さ……掃除してくれてた……?」

「はい。掃除機をかけて軽く拭き掃除をしたくらいですが。」

「気づかなくてごめん。ありがとう。」

「そんな、隅から隅までしたわけではないですし……。」

「いやいやすごく綺麗になってたから。シンクまで磨いてくれてただろ。あそこまで綺麗だったの入居時くらいだ。」

キッチンを見たときが一番の衝撃だった。水周りの綺麗さは明らかに手がかかっていることが伺えた。

「私も使わせてもらう場所なのでこれくらいは当然です。」

当然といった顔だが少し頬に赤みがかかっている。褒められて嬉しいようだ。

こちらが気づいていなかったことに一切の不満は感じさせない。掃除すら取引のうちに入っているのか。あるいは、自分がやりたいからやったのか。

どちらにせよ物臭な自分からすれば感謝しかない。

「なんにせよ助かったよ。……また頼むわ。」

「任せてください。」

半ば冗談交じりで言った言葉も本気で取られてしまった。他人の、それも異性の部屋の掃除なんて普通嫌がるものじゃないのか。

クスクスと笑う長月の心のうちは読めない。どこまで本気にしていいのか。



一日の授業を終えポツポツと帰り始めるクラスメート。

竜が気合満々に面接に向かっていった。それをみていた長月が心配そうに何かあったのですかと聞いていたあたり彼女も竜にそれなりに心を許しているらしい。

長月は俺と竜と、そして桐島と休み時間に話すことが増えてきた。それに伴って彼女の顔から無表情な瞬間は減ってきている。

以前の人を寄せ付けないオーラは感じ取れないようで桐島の友人たちも会話に混じっているのを見かけた。間に桐島を介してではあったが。

さすがに男のクラスメートと話しているのは見かけない。だが、彼女が稀に見せる笑顔を見かけた少年たちは浮かれ気味にあった。と竜が言っていた。

周囲から彼女への認識は人を寄せ付けない無表情な不思議な人から変わりつつあるようだ。

「では水樹くん帰りましょう。」

「……ああ。」

今日の音楽指導を楽しみにしているのかその表情は明るい。

晩御飯に何か食べたいものはありますか?と聞いてきた彼女の笑顔はやはり人を浮かれさせるらしい。






ここまで読んでいただきありがとうございました。

続きが気になる方はブックマークなどしていただければ嬉しいです。


23話まできてようやく竜の外見描写がでました。

時人はただ前髪が長いだけですが、竜は整えた長髪といった感じです。



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