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なんでやねんと歌姫は笑った。  作者: 烏有
第1章
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第17話 四人

日が開いてしまってすいません。ようやく更新できました。



「いつまでしかめ面してるんだよ。」

ロッカーで靴を履き替えていると竜が横から顔を覗き込んできた。結局、昨日はあの後から俺が集中できず早々に切り上げてしまった。

「うるさいな。……寝不足なだけだって。」

「そっすかー。」

そのまま二人で教室へ歩く。朝から雨が降っていたがこれが今年の梅雨最後の雨となるみたいで天気予報士が嬉しそうに言っていた。



「……おはよう。」

席に向かうと隣にはもう長月が来ていた。

「おはようございます、水樹くん。」

昨日のテンションをひっぱっているのか、いつもより口角が上がっている気がする。

「おはよう水樹くん!」

前の席の桐島もこちらをふりむいて挨拶してきた。

「おはよう桐島。」

「ねえ二人は昨日どこか行ってたの?」

桐島がこちらに放った台詞におもわず固まる。視線だけを横に向けると長月も目を開いて止まっていた。

「どこにも行ってないよ。」

「えー!一緒に帰ってたのに?」

「……まあ一緒に帰ってただけだって。」

「やっぱり一緒に帰ってたんだ!」

俺の台詞で確信したようでこちらをしてやったり、と見つめている。

「面白そうな話してるじゃん。混ぜてー?」

結ちゃん、長月さんおはよー。と二人に挨拶を交わして竜が会話に滑り込んできた。後ろから肩に腕をまわす形でこちらに顔を向ける。

「重たい。うるさい。暑い。」

まわされた腕を解いてとりあえず文句を言っておく。

「そういえば水樹くんってどこに住んでるの?」

「それ時人絶対に答えてくれないぜ。どんだけ秘密主義なんだって話よー。」

桐島の問いに竜が答えた。がこちらを見つめている目はおそらく答えを知りたがっていた。

一人暮らしをしていることがしれたら溜り場になるのが嫌で当初話していなかった。竜も桐島ももう知らない人ではない。線引きをできる人だと思った。

「学校から歩いて10分くらいのマンションに住んでるよ。」

「え、こっから近くに住んでたの?……そんなこと隠すようなことじゃないじゃん。近いのいいなー。」

答えると思っていなかったらしい竜が驚いていた。

「……じゃあ長月さんって水樹くんの近くに住んでるの?」

じゃないと一緒に帰らないよねー、と桐島が長月に振っていた。

「近くというか、私も水樹くんも同じマンションに一人で住んでいます。」

自分は聞かれると思っていなかったのか俺が色々ぼやかしたところをストレートに言い放った。

今度は竜と桐島の表情が固まった。

「近くに住んでるって言うだけでいいのに……。あの二人いろいろ突っ込んでくるぞ。」

長月にやれやれと大げさにつぶやいた。

「……水樹くんが場所を言ったからいいのかなと思いまして……すみません。」

どうやら二人が固まるまで普通のことを言ったつもりらしい。申し訳なさそうに眉が少し下がっている。

「いやいいよ。いつかは言うつもりだったし。……まあ場所とか一人暮らしとかは段階を踏んで言うつもりだったけど。」

ちょうどいいタイミングでチャイムが鳴ったものの二人の好奇心は止まらないようでなかなか自分の席に帰っていかなかった。



「時人も一人暮らししてるって事?」

昼休みにいつも通りやってきた竜がこちらに問いかけた。

「……まあ。」

いいなー。と言いながらお弁当を食べ始めた。

隣では長月の前の席に桐島が座っている。珍しく二人で食べているようだ。

「長月さんとこんなに話すの初めてかもー。」

「……そうですね。」

勢いに押されて若干引き気味ではあったが会話は弾んでいるらしい。

桐島は朝の会話の続きをしたかったようでこちらにもちょこちょこ話題を振る。結局四人で昼ごはんを食べる形になった。

好奇心旺盛というか首を突っ込みたがりの竜と桐島をなんとか落ち着かせて、二人には俺と長月がたまたま隣に住んでいてお互いに理由あって一人暮らしをしているとだけ伝える。

長月が高校生にして一人暮らしをしている理由はわからないが、そのあたりを聞かれるときに表情が曇ったので誤魔化した。知られたくないことは人それぞれあることだし、あの二人は必要以上には踏み込んでこなかったのでそのあたりは助かった。

竜が食べ終わる頃には長月は入学当初のクールなキャラの面影は無く、笑顔で桐島と話しているようになっていた。

「で、朱音ちゃんと水樹くんは昨日どこに寄り道してたのかなー?」

「タイミング合ったから一緒に帰ってただけだって。」

「やっぱり二人仲良いよね。家近いからってだけじゃ一緒に帰らないでしょ。」

「まあ仲悪いとは言わないけど。」

桐島の勢いがすごい。気づけば長月を下の名前で呼んでいる。

「そこは仲がいいでいいじゃん。」

しばらくニヤニヤと観賞していた竜が笑いながら口出ししてきた。

「うるさいな。」

竜が笑ったのを皮切りに俺以外の面子が笑い出した。その雰囲気が続いた賑やかな昼休みだった。




ここまで読んでいただきありがとうございました。

続きが気になる方はブックマークなどいただけると嬉しいです。

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