第162話 実家
更新の間が空いてしまって申し訳ないです。
和やかな雰囲気のまま時間が過ぎていく。特に月子と朱音の会話が盛り上がっていた。時間が経つのはあっという間だ。
「これ美味しいわね」
「貰ったんだ。確か高いはずだよ」
再びリビングに戻って会話をしていた。春人の出していた紅茶とお茶請けのチョコレート。それは春人が貰ってきたものらしい。豪華な包装に包まれていて何となく高価そうだ。
何となく二人の会話に入るのは憚られたので春人と過ごす。父が入れたコーヒーを飲んだり、まったりとテレビを眺めながら朱音たちが楽しんでいるのを楽しんだ。
月子と朱音がパクパクと次々とチョコレートを空けていく。朱音はもう全く緊張していないようで会話に花を咲かせていた。
少し耳を傾けて聞いてみると話題は俺のことも含まれている。俺と朱音との私生活。学校でのこと。
……思ったより赤裸々に話している。そこまで心開いているのか……。
いや、ちがう。
「朱音?」
「なんですかー?時人くーん」
「母さん。わかってただろ?」
朱音の少し赤くなった顔。微妙に間延びした語尾。緊張すらなくなってむしろ高いテンション。
チョコレートの包装を新しく一つ空けて確信した。
「朱音。一回水飲もっか」
入っていた洋酒に朱音は酔っているようだ。量から考えるに朱音は酒に弱いらしい。
「ごめんねー。時人ー。こんなに弱いとは思わなかったからー」
少し笑いながら紅茶を飲み干す月子にため息をつく。コップに水を入れて飲まそうとキッチンに向かおうとしたとき朱音にシャツの裾を掴まれた。
「時人くん。どこ行くんですかー」
「いや、朱音に水を」
「行っちゃダメですー」
握る手に力が更に加わった。
「どこにも行かないって。ちょっと水とってくるだけだから」
「ダメですー」
「はい。朱音さん」
見かねた春人が新しいグラスを差し出した。水で満たされているそれを朱音に突き出す。
「朱音、一旦水飲もうか」
「どこにも行きませんか?」
「もちろん」
渋々といった感じで朱音がグラスを傾けた。
「母さんも嬉しくてはしゃぐのもわかるけどほどほどにね」
春人に窘められた月子もまた渋々と謝っていた。
「時人くん。楽しいですねー」
やはり朱音は酔っているらしい。にこにこと笑いながら少し左右に揺れている。
「楽しいならよかったよ」
軽く頭を撫でる。喜びが増したのが見てわかった。いつもより口角が上がっている。
朱音は普段から素直だ。だが今はより……単純になっている。
時人くん。時人くん。と名前を繰り返し呼んでは笑っていて非常に可愛らしいが両親の前では照れる。
「時人。明日急ぎの予定はないのだったら帰りは送るからもう少しゆっくりしていきなさい」
予定では夜頃帰るつもりで、晩ご飯については決めてはいなかったが帰ってから食べようとふんわりと思っていた。だが、この状態の朱音を見た春人が帰りを許さなかった。確かに、段々と重たくなってきたのか瞼が閉まりかけている朱音を連れてこの時間に帰る気にもなれない。
「そーする。……父さん晩ご飯どうする?」
「どうしようか。母さんは……いらなさそうだね」
既に甘いものでお腹が膨れている月子はもういらないと手をひらひらと振っていた。
「お腹空いているかい?何か作ろうか?」
「んー……。俺も手伝う」
「時人が?……じゃあ手伝ってもらおうかな」
折角の機会だ。朱音にちょこちょこ教わって包丁握ったりするのに不安はもう無い。一瞬驚いた春人についてキッチンに向かった。なお、朱音は既に夢の中だった。
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2ヶ月と音沙汰無しで申し訳ありませんでした。今回も文字数少なく短いです。
途中で投げ出すことはしませんのでまた応援してもらえると嬉しいです。今後もよろしくお願いいたします。