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なんでやねんと歌姫は笑った。  作者: 烏有
第4章
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第152話 祭りも終わって、戻る日々


久々の更新ですが短いです。すいません。




朱音から何を聞いたのか桐島と萩原が嬉しそうに俺に詰め寄ってきた。

「仲良くしてるみたいだねー」

「それはもちろん」

桐島はもう俺への想いは切り替えたのだろうか。

「昨日の振り替え休日も遊びに行ってたんでしょー?」

「あー。うん。朱音と出かけていた」

「楽しかったですね」

「どこ行ってたの?」

「公園でピクニックしてました」

朱音がニコニコと答えている。

昨日は朱音があのワンピースを着てくれていたのもあっていつもとちがうような、ちゃんとデートと意識できるようなことを考えていた。

電車に乗られて少し。海が見える公園でゆっくりと過ごす。それが俺の考えたコースだった。

もともと遅い時間まで外出する気も無い。家が、俺の家が落ち着く場所となっているので夜はそう過ごすつもりもあった。朱音は折角なのでお弁当とかしっかり準備したかったです。と呟いていたので次の機会では事前に伝えておこうと思う。その方が朱音も喜びそうだ。

もっとも最低限の荷物だけで出かけるのは身軽で気軽でもある。近くのパン屋で軽く買いこんでベンチに座ってピクニックとした。

「えー。いいなー。楽しそうだねー」

二人に聞かれるがまま事細やかに応答している朱音は楽しそうだ。

「……さっきから奈々の視線を感じるんだがー」

竜が俺の耳元で呟く。それは俺も気づいていた。

「デートとかしてるのか?」

「時人らの基準で言うと全くだなー。俺なりにはそこそこ出来てるつもりなんだがー」

バイトに忙しい竜と部活に忙しい萩原。お互いの時間の擦り合わせは難しそうだ。

竜曰く、放課後や夕方などに遊びに行くことは頻度が高いみたいだが、俺たちみたいに一日かけてというのはまだできていないらしい。

「時間、作ってやれよ。……竜の彼女だろ」

「ぐうの音もでないなー。まして文化祭の件もあるしなー」

当日に欠席の連絡を入れた竜。その件に関して萩原と話もしたと言っていて解決はしているみたいだ。だが、その心境は思いやられる。

竜もそのことがわかっているようだ。今日も放課後二人は遊びに行くらしい。萩原の部活終わりに。

「ちょっと俺もがんばらんとなー。奈々に好かれた俺でいたいしなー」

告白を受け入れた側の竜からすれば既に好意を持たれているというのがわかっている。だが、告白した側で尚且つ一度保留までされた萩原からすれば不安もあるだろう。

「そう思ってるなら尚更」

「だな。男見せないとなー」

人の心に寄り添うのが得意な竜だが、その心の内を見せることは少ない。

萩原もどちらかといえば聞き側になることが多いイメージがある。

なるべく不和を生じることなくうまく関係を続けてほしいと願った。



いつものように夕食を終えて朱音とソファに並ぶ。今日のお供はコーヒー。朱音も同じコーヒーだが色合いが全く異なってとても甘そうだ。

「明日から授業ですね」

「文化祭の準備もそれはそれで面倒だったからなあ」

「時人くんはわがままです」

「自覚はある」

二の句もなく肯定した俺が面白かったのか朱音は一瞬ぽかんとしてすぐにクスクスと笑っていた。

「次のテストでは時人くんに勝ちたいので授業も頑張らないと」

「……朱音は真面目だなあ」

ちょこちょこと授業を抜け出してサボっていた身としては少し耳が痛い。拳を握ってやる気を見せている朱音の髪を撫でてお互いに気持ちを落ち着ける。

朱音もきりっとしていた目が一瞬でとろんと蕩けていった。

「真面目で思い出したんですけど、時人くん、大須くんを遊びに誘うの忘れてないですよね?」

「なんでそれで思い出すんだよ。……覚えてましたけど」

語尾に近づくにつれ段々と声量が小さくなる。忘れていたつもりはない。

ただ、常に大須を誘わないと。と思って生きているわけでもない。たった今この瞬間、頭に無かっただけだ。

「……竜も会いたがっていたし、マスターの店に大須を誘うのって変なのかな?」

「変とは?」

「いや、だって大須からしたら俺の友達を紹介されてもって感じしないのかなって」

どうなのだろうか。

もし俺に兄弟姉妹がいたなら。

その友達を紹介されたなら。

俺なら……少し戸惑う気がする。

「え、大須くんはそう思わないと思いますけど。私以外にも結さんや奈々さん、松山さんなどとも親しくされていましたし、楽しそうに見えました」

「あー。確かに」

「それに……時人くんにとって大須くんは弟なのでしょう?もし大須くんにお友達を紹介したいと言われたらどう思いますか?」

大須に聞かれたら。もちろんそんなの決まっている。

「嬉しい……かな」

「でしたらそれが答えじゃないですか?」

「なるほど。確かに」

スマホをとりだしてスケジュールを確認する。今月の週末はシフトがほとんど入っていた。

「来月くらいにみんなに聞いてみるかな」

「でしたら大須くんにも言っておかないといけませんね」

朱音にスマホをつつかれる。片手で頭をかきながら大須のいるグループチャットを開いた。

すぐに大須とやりとりが続く。基本的にいつでも問題はないみたいだ。

『時兄ぃのお友達なら会ってみたいよ!』

『じゃあそう伝えておく』

大須は会話の最中にポンポンとスタンプも送ってくるのでメッセージが流れるのが激しい。

『大須くんの写真。みんなに見せたら好評でしたよ』

『ほんと?嬉しい!』

『やっぱりカメラの才能あるのかなー!?』

文章から大須の素直な喜びが伝わってくる。思わず朱音と笑いあった。




ここまで読んでいただきありがとうございました。

続きが気になる方はブックマークなどしていただければ幸いです。


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