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なんでやねんと歌姫は笑った。  作者: 烏有
第3章
153/166

第149話 進路について


今回かなり短いです。




「祖父母って……」

朱音から聞いていた祖父母との関係性。決して嫌っているわけではないがお互いにギクシャクしていたと。

朱音の父親がかけおち同然で朱音の母親と失踪し、そのまま朱音の母親を亡くしたこと。それが祖父母からすれば娘を失わせたに等しい行動で受け入れられなかった。そんな父親をも失ってしまった朱音を祖父母は孫であるとはいえどう扱っていいのか分からない。

朱音からすれば両親を失って、尚且つ父親の弟という身内にも傷つけられた。そんな憔悴していたタイミングで頼った祖父母でさえもすぐに受け入れられなかった。

そのファーストコンタクトが悪かったせいもあってお互いの関係性が良好になるには時間が足らなかった。

中学校を卒業するタイミングで朱音は一人になることを選んで、祖父母もそれを了承していた。

「あの頃の私とは違いますから。今だと……ちゃんと話すこともできると思うんです」

朱音は覚悟を決めた顔をしていた。祖父母との関係性を取り戻したいのだろうか。

両親を失った朱音にとっての数少ない血のつながり。

「応援はしたい……。けど、早すぎる気もする」

高校入学のタイミングで家を出てまだ半年程度。その間、学生生活を経て成長した朱音とちがって、向こうはただの日常を過ごしているはず。

「私もそう思います。だから、時人くんに話をしたくて」

「どういう意味?」

ゆっくり息を吸った朱音がじっとこちらの目を見つめる。

「時人くん。いっしょに来てもらえませんか?」

「一緒にって、いいの?」

頼りにしてもらえることはとても嬉しい。

「もちろんです。むしろ本当にいいんですか?」

こんな状況で嘘なんてつかない。

「それは俺の台詞だって。俺が行って……なんていうか余計険悪にしてしまわない?」

娘を男に奪われていったと考えた人たちだ。半年振りに顔を合わせた孫が男を連れてもどってきたなら。

似たような感想を持ってもおかしくはない。

「私だって怖いんです。でも、そのときに隣に時人くんがいてくれたなら……勇気をもらえますから」

少し微笑みながら朱音がそう言った。朱音の不安を半分持たせてほしい。そう思っていたばかりだ。俺がいることで迷惑をかけるかもしれない。朱音もその想定はしていた。それでもその上で俺を呼んでくれるなら。

「わかった。俺だって朱音の力になりたい。ぜひ連れてってほしい」

「ありがとうございます。……まだ会いに行くと言ってないですし日付は未定なんですけどね」

悪戯っぽく朱音が笑って締め括った。とりあえずの決意表明らしい。

「いつだっていいよ。予定あけるから」

もともとそんなに忙しく過ごしていない。俺たちの日程調整はそう難しくないはずだ。

「すいません。わがまま言ってしまって」

「わがままなんて思ってない。それに、そのうち会うつもりだったから」

「え、そうだったんですか?」

「あー。うん。そのうち挨拶したいなって思ってたから」

例え関係性が良好とは言えなくても。

……義理とはいえ親戚になるのだから。

そこまで口にする気は今は無い。朱音も単純に俺の言葉にホッとしている。

その言葉を口にするのは今ではない。

「では日付決まったらお願いしますね」

「任せて」

少し話すことに緊張していたのだろうか。朱音は安堵したように笑っていた。

温くなったお茶を飲み干す。気づけば喉はカラカラだ。俺も緊張していたみたいだ。

「朱音のおばあさん方の家ってどこにあるの?」

「ここから近いですよ。学校もそこから通ってるってことになってますから」

電車で一駅です。と朱音が住所を説明する。

そこまで近いとは思ってもいなかった。どこか遠出する感覚もあったがそうではないらしい。

「それで、このマンションを勧められたんです。あの高校も近いですし」

高校卒業までは家賃を支援してもらっているようだった。だから今のところそこまでお金に困ってはいないらしい。

「じゃあ今度あったときにお礼言っておかないと」

「お礼ですか?」

「あー。だって朱音が隣に住んでくれていたのはその勧めのおかげだから」

「……それには私も感謝ですね」

ニコニコ笑っている朱音にあわせて俺も微笑む。

たっぷりと話し込んでいたらしい。気づけば時間は大分経っている。お茶のおかわり入りますか?との朱音の提案に喜んで頷いた。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

続きが気になる方はブックマークなどしていただければ幸いです。



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