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なんでやねんと歌姫は笑った。  作者: 烏有
第3章
146/166

第143話 文化祭は終わる


今回少し短いです。




校内で散らばっていた生徒も最後まで接客していた生徒もようやく集まった教室はまだ祭りが抜けきっていない。

がやがやとする中で朱音と解散の号令が出るのを待っていた。

「時人くん夜ご飯どうされますか?」

「朱音はお腹空いてる?俺しばらくはいいかなって。今日食べれるかも微妙」

「私もそんな感じだったので……。じゃあお腹減ったときにまた考えますか?」

朱音の言葉にはそれくらい時間が経っても一緒にいることを暗に伝えている。

土曜日に行われた文化祭というのもあって明日は日曜日で休み。更に月曜日も振り替えで休みとなっている。

きっと今日も朱音は泊まってくれるだろう。

「そうしよっか」

「おーみんなそろってるかー?」

朱音と笑いあっていると、気だるげにのんびり歩きながら担任の三井が入ってきた。文化祭だが相変わらずの黄色いチョークの跡が目立つ白衣姿だ。

「どうせこの後打ち上げとかあるだろうし、担任からは特に話はない。ちょくちょく覗いたが楽しそうだったみたいで何よりだ」

俺は会わなかったが三井もクラスに顔を出したようだ。

タイミングがいいのか悪いのか。両親に会われなくて助かったという気持ちも、朱音のトラブルの際にいてくれたらって気持ちもある。

「あー。片付け等は火曜日に行う。今回の文化祭から行われていた集客数を競うイベントだが集計がうまいこといかなかったみたいで本日中の発表が難しくなった。よって火曜日の朝礼で発表となった」

コンテストも人の歓声で結果が決まったりと、今回のイベントは正直グダグダな面が目立っている。

文化祭実行委員として桐島も頑張っていたが人手も時間も技術も足りなかったみたいだ。

日を跨いでの発表を受けたところで盛り上がりに欠けると思うのだが。

三井の連絡事項も終わったらしく解散と告げると足早に教室から去っていった。労いの言葉がないのが彼女らしい。

「では、帰りましょうか」

「あー。うん。帰ろう」

立ち上がった朱音と帰ろうとリュックを背負ったときだった。

「あー待って朱音ちゃん、水樹くん」

桐島にひきとめられる。

「今日はお疲れ様ー。二人は打ち上げ来ないんだよねー?」

「悪いな」

「え、ぜんぜん!責めてるとかじゃないってー」

笑いながら否定するあたり俺たちのことをよくわかっている桐島らしい。

「……今日まで色々あったけど……。私は楽しかったから、朱音ちゃんもそうだといいなって。うまく言えないんだけど」

「……そうですね。楽しかったです」

色々あった。確かに色々と。

それでも朱音が笑っていたこともあったのも事実だ。

桐島が朱音にとって悪い思い出にならないかと懸念しているみたいだ。

朱音の表情を見て桐島も納得したらしい。

最後に写真とろーと言って桐島がスマホのインカメラを起動させる。俺も画角に収まるように指示されたので三人でカメラに収まった。

「ちょっと結。私もいれて」

写真を撮っていると萩原も朱音の背中に抱きつくように現れた。桐島のスマホの画面に写る朱音は嬉しそうに笑っていて俺も笑顔になる。

「撮るよー」

カシャリと音がして俺たちが桐島のスマホに保存される。

「後でグループに貼っておくねー」

「長月さん。私たちもいい?」

気づけば永田と田中が近くにいて声をかけて来る。萩原以上にクールな印象がある彼女だが案外親しみやすい性格をしていることを知った。

「もちろんです」

さすがに女性がこんなに増えると男子俺一人は浮くのですすすと下がっていく。

楽しそうに写真を撮っている女性陣を眺めて思いに耽る。

一時期俺と距離をとっていたあの頃から朱音は色んな人と交流をとっていた。

俺ともう一度関係を持ってからは俺といることが多くなったがそれでも朱音の友好関係は途絶えたりはしなかった。

ああして友達に囲まれる朱音をみると俺も嬉しくなる。

眺めていることがバレたようで朱音と目が合う。くすくすと何か察したのか笑い出す朱音はとても可愛い。そのままてててと寄ってきて抱きつかれる。

「時人くんも写りましょうよ」

「いや、いいって」

「ん。水樹君も」

永田にも手招きされてもう一度その輪に入っていく。小さくピースをして写りこんだ。

「ねえ水樹、折角だし前髪上げれば?」

スマホの画面を見ながら田中がそう言う。

「ダメです」

朱音の早すぎる拒否に思わず笑ってしまった。隣の朱音に手を伸ばして軽く抱き寄せる。

「まあ気が向いたら。今日はいいかなって」

「長月さんがダメなら仕方ない。次は気が向くことを願ってる」

そのまま数枚とった。

嫌なこともあったけど朱音にとって文化祭がいい思い出になればいい。俺もそう思う。

画面に写る朱音は色んな笑顔をしていて。

「……朱音のあの笑顔は水樹がいなかったらなかったと思うわ。この後も二人で過ごすんでしょ?楽しんでね。水樹にしかできないんだから」

耳元で俺だけに聞こえるように萩原が呟いた。

「あー、うん。がんばるわ」

萩原に向けて了承を示した。

萩原も桐島も今日で朱音とより親しくなった気がする。この縁もずっと続いてほしい。

「今夜竜くんと電話するの。私もあなたたちみたいになりたいから色々話すわ」

俺たちみたい。か。

そう思われるのは嬉しい。俺たちの関係性が理想だといわれているのだから。

竜にも色々あると思うが萩原と仲良く続いてくれたら俺も嬉しい。

「そうか。竜にもよろしく」

撮影会も一段落ついて、撮るのはもう満足したようだ。

「朱音、今度こそ帰ろうか」

「はい。帰りましょう」

朱音は呼びかけに嬉しそうに反応して俺の腕に飛びつく。

皆に別れを告げて教室を後にした。朱音はそのまま腕から離れることはなかった。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

続きが気になる方はブックマークなどしていただければ幸いです。


花粉症が一気に来てます。



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