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なんでやねんと歌姫は笑った。  作者: 烏有
第3章
121/166

第118話 文化祭とは


更新頻度が落ちてすいませんでした。

師走!





「文化祭……」

「楽しみですね」

「……かなあ」

午後のホームルームで担任の三井が説明を始めた。

二学期の大きな行事の一つ。文化祭が近くに迫っている。

クラスそれぞれで色々行うが、人気の飲食店などは二年三年の先輩が軒並みもっていくらしく一年は展示という名の休憩所になるのが通年のようだ。

「去年、奈々と来たんだよー。とっても楽しかったよー。色々遊べて周ってー」

楽しみそうにニコニコ笑っている朱音に桐島が後ろを向いて同調する。

「……見る分にはいいけど準備とか面倒だろ?」

「水樹くんさあ……」

「時人くんらしいですね」

飲食を学校でできる範囲となると作り置きできるものだったり、電子レンジとかで温めてから提供できるようなものになるだろう。

当日忙しくなりそうだし、事前に作り置きとかも手伝えなさそうだから飲食店はやりたくもない。

展示にしてもらえれば当日ゆっくりできそうで無問題だ。その内容もこだわらなければ準備も楽そうだし。

二年、三年みたいに夏休みから登校して準備するのは面倒だ。

「……というわけで、桐島。前に出て色々決めてくれ」

「はーい」

三井に呼ばれた桐島が軽やかに教壇に向かう。

「じゃー何かやりたいことある人いるかなー?」

桐島が適当に指名して意見を出させていた。笑いを交えながら進めていく桐島はなかなかの手腕だ。

黒板にかかれているのは多岐にわたっている。イベント展示として劇や映像、ダンス。竜が挙げた活動報告ってものの範囲が広すぎて何となく笑える。案外竜はやる気がないのかもしれない。

「んー。これ以上案はでないかなー」

桐島が教室全体を見ながら唸っていた。視線を合わせると何か言わされそうなので窓の方、朱音を見ながら頬杖をつく。朱音は何か考えているようだった。

「……じゃあとりあえず今日決めないといけないってわけでもないし、この辺で皆どれがいいか考えておいてー。明日も時間もらえるんですよね?」

桐島が確認をとると三井は頷いた。

ホームルームの終了も近い。結論は出ないまま会議は終わった。



「時人くん、何かやりたいこととかなかったんですか?」

「……?ああ。文化祭か。何もないな」

帰ろうと朱音と教室を出てロッカーに向かう道中。朱音に問われた質問の意図が最初掴めなかったが、さっきのホームルームのことと気づいてそう答えた。

最近こそ、朱音や竜、桐島といったメンバーにつられて真面目に学生生活をしていたが、もともとそういうのから遠ざかって暮らしていた。

「せっかくやのに」

「そういう朱音は何かやりたいことがあった?」

「……色々です」

少し視線を外してそういう朱音は何か照れているようだ。高校の文化祭に期待があるらしい。

「俺に聞いといて言わないのずるくない?」

「ずるくないです」

そう言って笑う朱音を連れ立って歩く。もう朱音は腕を組んでいないが、それでも俺たちのことは知れ渡ってしまっているらしい。帰ろうとする生徒たちからあちこちで視線を感じる。楽しそうに笑う朱音が目を惹くのもあるが、その朱音は気にしてすらいない。

「あー長月さん。探したよー」

ロッカーで靴を履き替えている朱音に声をかけたのは見覚えのある男子生徒。どうやら彼は本当に同じ学校だったらしい。

「……何か用ですか?」

「えー?また学校でねって言ったじゃん?」

朱音は不機嫌そのものといった表情で彼を睨んでいる。

さっきまでの楽しげに会話していた朱音はここにはいなかった。そんな朱音ほどではないが俺も若干テンションが下がっている。

前も俺たちのデートを邪魔してきた上に朱音の機嫌を損なう相手だ。

「用が無いのであれば失礼します。帰りましょう。時人くん」

「ちょっと待ってよ。探したって言ったじゃん?」

帰ろうと横を抜けようとした朱音の腕を彼が掴んだ。いい印象を持ってない故かその顔も行動も腹立たしい。

「勝手に触らないでくれる?」

「は?」

彼の腕を掴む。少し俺より背が高い彼に睨まれるが関係ない。その一瞬に朱音が振り払って俺の後ろについた。

「……朱音に何の用?」

「腕掴んだくらいでそんな怒るか?普通」

「さっきから会話できてないんだけど。何の用かって聞いてるんだが」

「君に用は無いんだけどなー。長月さんさ連絡先教えてよ」

「いやです」

「拒絶はっや」

朱音に即効で拒否された彼が笑った。想定内か。断られる前提で話しかけたのだろうか。

後ろの朱音が裾を引っ張る。はやく帰ろう。との合図みたいだ。

彼の腕を放してそのまま後ろを向く。朱音の肩を抱いて歩き始めた。あいつには、というか他の誰にも朱音を渡す気は無い。

そのまま後ろも見ずに校門を出た。彼から声がかかることは無かった。



「はあ」

隣の朱音がため息をつく。今日はバイトもない。買い物するために朱音とスーパーに寄って帰ろうとしている帰宅途中だ。

「三回目。ため息多いって」

「だって……」

「まあわかるけど」

「あの人の名前すら知らないのに連絡先なんて教えるわけないじゃないですか。私には時人くんいるのわかっているのに」

少し早口になって朱音が言葉を紡ぐ。朱音が苛立っていることがよくわかった。

「そうだな」

朱音を肯定して軽く頭を撫でる。段々と表情が崩れて嬉しそうにこちらを見上げる朱音。簡単にとは言わないがそれで機嫌がなおってくれるなら俺も嬉しい。

「……さっきはありがとうございました。カッコよかったです」

「どうも」

「ふふふ。今日は何食べたいですか?」

「あー、何かすっぱいもの食べたい」

「……わかりました。任せてください!」

朱音と買い物して帰る。スーパーでぽいぽいと必要なものをカートに放り込む朱音はすでに作るものが決まっているようだ。

「時人くん、梅苦手じゃないですよね?」

「苦手じゃないよ。むしろ好きなほう」

「よかったです」

「梅ご飯?」

「がいいですか?」

「がいい。ってわけじゃないけど。……ちがうの?」

「……では、楽しみにしててください」

にこっと悪戯っぽく朱音が笑う。今日の晩ご飯が楽しみだ。







ここまで読んでいただきありがとうございました。

続きが気になる方はブックマークなどしていただければ喜びます。



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