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なんでやねんと歌姫は笑った。  作者: 烏有
第3章
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第112話 再開する日常


アラームの音で目が覚める。久しく聞いていなかった少し耳障りの悪い機械音のせいで寝覚めはいまいちだ。

枕元のスマホを素早く操作して音を止める。瞼を閉じて二度寝したい願望にかられるが、スヌーズ設定をしていないため今のままだと寝坊してしまいそうだ。

布団の誘惑を振り切って上半身を起こす。伸びをすると肩からポキポキと軽快な音が鳴って気持ちいい。

今日から授業も始まる。ベッドから降りて顔を洗ってしまおう。早く着替えないと行く気がなくなりそうだ。

寝室から出てリビングを抜けて洗面所に向かう。顔を洗って歯ブラシに歯磨き粉をつけてから咥えた。しゃこしゃこと無心で磨いていると玄関の方で音がなった。洗面所から顔を出すと制服姿の朱音がそこにいた。

「ほはほう」

「おはようございます。時人くん」

歯ブラシを咥えての発声だったがちゃんと伝わったらしい。朱音に手をあげてもう一度洗面所に戻った。



「おはよう。朱音」

リビングに戻ると朱音がキッチンでなにか作っていた。

昨夜、帰る際に何も言っていなかったので朝から来ると思っていなかった。

「おはようございます。もうすぐできますよ。ちょっと待っててくださいね」

キッチンから聞こえる鼻歌が今日も朱音が上機嫌なのを知らせている。ふんわりと玉子が焼ける匂いが漂ってきてお腹がなった。朱音の玉子焼きは日替わりで具材だったり付け合せが変わっていたりと遊び心もあって尚且つ美味しい。今日も楽しみだ。

すぐ後に朱音が朝ごはんを並べ始める。運ぶくらいを少し手伝って朱音と席に着いた。

「いただきます」

嬉しそうに朱音が見守る中、朝食は進んだ。もちろん美味しかった。



「あの、時人くん、お願いがあります」

「お願い?」

朝ごはんを終えて朱音がきりだした。

「あの……今日の、というか今日からのお昼ご飯なんですけど」

ネクタイを結んでいた手が止まった。もしかして

「お弁当……って迷惑ですか?」

「そんなわけない。もしかして朱音、作ってくれた?」

食い気味に否定すると朱音が嬉しそうな顔をした。

「えーっと。はい。いつも自分の分は家で作ってたので……。時人くんいつもアレを食べてはるので、学校のときはあまりお昼食べないのかなとか思ってたんですけど」

「俺が朱音のご飯を断るわけないだろ。……嬉しいよ。ありがとう朱音」

朱音が差し出したお弁当箱の大きいほうをありがたく受け取る。断ると思われていたのだろうか。むしろお願いしたいと思っていたくらいなのに。さすがにあつかましいと思って諦めていたのだからこんなに嬉しいことはない。

「よかったです。毎日持って来ますね」

楽しみにしててください。と嬉しそうに微笑んだ。毎日作ってくれるらしい。朱音に食は支配されてしまった。

……最早、嫁だろ。と思ってしまって顔が赤くなった。

それを口に出すのは早すぎる。だけど、朱音もそう思ってくれていたらいいな。と思えた。



「今日から授業始まりますね」

学校までの道すがら、朱音と会話を楽しむ。手を繋いで隣に歩く朱音はニコニコと笑顔を見せている。昨日も思ったが、やはり朱音は視線を集めている。それは学校が近づくにつれて特に顕著だ。

「ああ……。面倒だなあ」

「そんなこと言ったらダメですよ。真面目に受けないと」

「わかってるけど、やっぱり……なあ」

「気持ちはわかりますけどね」

苦々しく笑う顔すら可愛らしい。

「まあ初日だしがんばるかー……」

「がんばってください」

だけどやっぱり、くすくすと笑って微笑む顔の方がいい。そう思った。






ここまで読んでいただきありがとうございました。

続きが気になる方はブックマークなどしていただければ幸いです。



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