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第1幕(2)

 落ち着こう。落ち着こう。落ち着くんだ、私……。


 いつ、どこからおかしくなった? 私というものを紐解いていくんだ……。




 私の名前は『桜井(さくらい) (うた)』。高校2年生。


 特に取り柄といったものはないけど、よく驚異的かつ脅威的ポジティブと言われる。そのおかげか、友達にも恵まれているし、部活でもそれなりにいい感じにやっていると思う。


 所属しているのは合唱部。

 昔から歌うことが何より好きだった。アルバムを見るとだいたい歌を歌っている。それ以外の写真を探す方が難しいくらいだ。


 当然、小学校、中学校と地域の合唱団に所属し、思う様、歌声を響かせてきた。その結果、市内ではなかなかに名のある存在となったのだった。


 夏休みを控えた今日も、暑さを振り払わんばかりに部活に励んだ。


 全員が筋トレから戻ったのを確認した部長が、伴奏者と部員全員に合図した。


「はい、じゃあ発生練習はじめます!」


 伴奏者が、ピアノの鍵盤に手を置き、和音を奏で、それに合わせて声を合わせてーー


「~~~っ!!!!!!」


 私も声に合わせた。すると、全員、耳を塞いでうずくまった……。

 一人、部長が青ざめながら私を見た。


「桜井……あんたは、十~~~~~~分声出てる、うん! だから、もうちょっと控え目にしようか……」

「は、はい……」


 発声練習で控え目に歌えと言われる合唱部員がいるだろうか? ここにいる。


 そう。何を隠そう、私は……絶望的音痴……なのだ。そのくせ声量は人一倍も二倍も三倍もある。おかげで一年生の時から、腹から声を出すなと言われてきた。

 地域の合唱団でも、よくパートを下ろされた。高校で合唱部をのぞくと、何故かざわついた。『あの(・・)桜井詩が来た!』と……。


 そのせいか、私は一年生の頃から皆とは別メニューの、特別レッスンをいつも用意されていた。一年生のくせに。あまりの酷さに、もはや嘲笑する人もいない……。

 特別扱いだ、と訴える人もいたけど、私の歌声を聞いた途端、黙り込む。非常に複雑だ。今日も、発声練習だけは皆と一緒にして、その後は隔離練習の予定だ……。


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