ステータス
マグノシア→マグナシアに変更しました。
昔、ゲーム好きの部下があまりにも勧めてくるもんだからRPGというジャンルのゲームをプレイした事がある。
内容はかなり王道らしく辺境の村で過ごしていた少年が実は勇者の末裔だったことが発覚しそこから魔王を倒しにいくストーリー。
途中で様々な困難が待ち受けているが仲間と共にそれを乗り越えボスである魔王を倒し世界は平和に包まれた、というラストだった筈だ。
ゲームというものに触れたのは初めてでそれ以来遊んだ記憶はないが当時21歳の俺はそのクオリティに驚き膨大なやり込み要素やキャラクターの、まるで感情を持っているかのような演出などに感動した覚えがある。
そのゲームにはステータスという己の強さを数値化できるシステムがあり職業や種族など覚えきれないほどの種類があった……が
(これは一体どういうことなんだ……)
俺が生まれ恐らく転生したと思われるあの日から2週間が経った、2週間といっても日付の数え方が日本と同じかすら分からないが。
藁が敷かれたベッド?の様なものに横たわりひたすら天井を見上げる日々。腹が減っては意思とは関係なく泣き叫び便意を催したら泣き叫び真っ当な赤ん坊?として過ごしていたが
(日本じゃないのは確かだがここが一体どこなのかも自分が何者かも分からず分からずってのは流石に堪えるな)
もしかしたら地球のどこか遠く秘境の地で独自の進化を遂げた種族なのかもしれない……とも思ったが流石に角が生え恐らく2メートルを軽々と超える身長の人間と同じ生活を送る哺乳類は存在しないだろうと半ば諦めながら異世界というものを受け入れつつあった。
(あのゲームみてえにステータスの様な機能がありゃ便利なんだが……)
そんな馬鹿なことがある筈ないと自分でも思いながら目線を再び天井へと戻すと
「ゔあゔああ………」
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千景 0歳 雄 レベル1
種族:小鬼(鬼族)
筋力15
耐久15
敏捷10
魔力0
魔防2
スキル:転生者 異世界言語Ⅰ 身体強化Ⅰ 任侠の徒
加護:鬼神の加護 混沌神の加護
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思わずまともに喋れない口で何語か分からない言葉を発してしまうくらい驚愕した。
本当にただ思っただけで目の前にステータスの様な半透明のグラフィックが現れたのだ、俺はその衝撃で思わず小便を漏らし泣き叫んでしまう。
「あぁあおぎゃぁぁああ!!」
「はいはい今ママが行きますよ〜」
まずい!とは思ったが既に手遅れ。母が自分のおしめを替えに部屋に入って来てしまった。
「チカゲちゃんは沢山食べて沢山出すんだねぇ、健康な証拠よ」
上機嫌で俺のお尻を拭いてくれた母はそのまままた部屋を出て家事に戻っていく。
(自分以外にはステータスは見えない?)
母はステータス画面を見るそぶりもせずにそのまま過ぎ去った事を考えると恐らくこの画面は俺以外には見えていないのだろう。
そう考え今度はじっくりと画面を眺める。
(名前や性別、レベルなんかはまだ分かる。筋力や耐久ってのもそのままの意味だろう。性別が雄ってのが気になるが……)
そうして見ていくうちに
(魔力……ほんとに魔法が存在する異世界なのかここは)
魔法の項目やスキルの異世界転生などの文字を見て改めて自分が異世界に生まれ落ちたのだと自覚した。
(しかも魔力0かよ……)
どうせなら自分も魔法を使ってみたかったが……まあこれからの成長で増えるかも知れないしな。種族が鬼族な時点で物理特化な気がしてならないが。
スキルの項目を眺めているうちにあることに気づく。
(任侠の徒?そりゃ前世は極道だったが一体どんな効果なんだこれは)
そう思った瞬間ステータスの画面が切り替わる。
(うおっ!?ってなになに……)
切り替わった画面には
任侠の徒 : 弱きを助け強きを挫く任侠を持つ者の証。自分よりもレベルの高い相手との戦闘時にステータスUP小。己と同じ志を持つ者からの好感度大。
説明を読み、
(異世界でも極道やんのか俺は……)
自分はどこまでいってもヤクザなのかと世界に突きつけられた気がしたが気を取り直し次に気になった項目へと目を移す。
称号についてだ。
鬼神の加護 : かつてマグナシアにて伝説の鬼と恐れられた鬼神の加護。鬼族である証であり身体能力に補正大。魔力適正にマイナス補正大。
(結局魔法使えねえのかよ!)
そう心の中で唱えながら次の称号も調べてみる。
混沌神の加護 : かつてマグナシアに降臨し人々に試練と祝福をもたらした混沌神の加護。この加護を持つ者には様々な困難が襲いかかるがそれらを乗り越えた暁にはかの英雄達と同じ絶大な力を誇るまでに成長するだろう。経験値増加大。
(これは……喜んでいいのか悲しむべきなのか)
何にしてもステータスで自分の存在を知れたこと、そしてこの世界はマグナシアという名前で魔法や色んな種族がいることを知れただけでよしとしよう。
ドタドタッと大きい足跡が聞こえ部屋の扉が壊れるくらいの勢いで開く。
「息子よ!!父さんは今帰ったぞ!!!」
これもまた毎日の恒例行事で夕方の日が沈む前に父親は帰宅するようで、帰るといの一番に俺の元へと顔を出す。
「うむ!今日も男らしい顔つきで何よりだ!!お前も将来は立派な狩人となるに違いない!!」
父親はこの村で狩人として生計を立てている。こんなんでも一応村の狩人を纏める長として男共からは尊敬されているらしい。
ちなみに母親の名をアイナ、父親の名をライゾウというらしくどこか和風な名前になんともいえない因果を感じた。
「ふぁ…ふぁあむ……」
「む!!眠いのか!よく寝る子は育つからな!!沢山寝て大きく育つのだチカゲよ!!」
いや、あんたの声がうるさくて寝れねぇっての。
「はいはい、チカゲはご飯を食べたら寝ましょうね。あなたはお風呂に入ってきて下さいな」
「うむ!!なら汗を流してくるとするか!!」
いちいち声のでかい父親にどこか抜けていておっとりしている母親。最初は戸惑ったもののよい両親に巡り合いこの生活も悪くないと思い始めている俺であった。
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