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転生鬼族は任侠道を貫く  作者: めもめも莉莉愛
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さようなら前世、こんにちは今世

参考にしているのは龍が◯く

 

「焼肉に行くんですよ。ただ何を焼くかは分かりませんけどねぇ」


 発砲音が鳴り止み山本が話しかけてくるが目の前の現実を脳がなかなか受け入れてくれず言葉が出てこない。



「あれ、だんまりですか兄貴。たかが一人二人死んだだけで、拍子抜けもいいとこですよ」


「たかが、だと?」


「たかがですよ。こいつらいつもいつも偉そうに説教垂れて来やがって。誰のおかげでこんなチンケな組を存続されられたと思ってんだか」


「ーーーッ!!」


 その言葉に激昂しそばにあった日本刀を拾い山本へと襲いかかろうとしたが、またも武装集団に両足を撃ち抜かれ顔面から床へと崩れ落ちる。



「ぐあっ!!」


「だめですよ兄貴。人の話は最後まで聞かないと」



「…っ……何が望みだ山本」


「望み、ですか。この組に入った時点で決まっていたんですが、一応話しておきましょうか。冥土の土産ってやつです」



 そう言って山本は話し出す。


「と言ってもそんなに深い話ではないんですけどね。11年前、隣町で起きた一般家庭にヤクザもんが襲撃して5人家族のうち4人が死亡した事件……覚えてますか?」



 覚えている。


 俺が東城会へと入った年でその当時の幹部が他の組と揉めた時に相手の構成員を殺しちまってそこから戦争へと発展した事件。


 その事件で死んじまった構成員の可愛がっていた舎弟がうちの幹部の家に乗り込み一家全員を弾いちまった……けど、殺された家庭は東城会(うち)とはなんの関係もない堅気の一般家庭で舎弟が間違えてやっちまったって筈だ。


 そして唯一長男だけが生き残ったって話だが……まさか。



「あ、気づきました?その生き残った一人ってのが俺です。」


「……そうか」


「いきなりヤクザに自分の家族殺されて、しかもそれがただの間違えたってだけなんだから笑えますよね。話を聞くと東城会と揉めた当時の滑川組はその事件で一斉摘発までくらって上の二次団体まで解体、跡形もないってんだからじゃあ東城会(ここ)に入ってみようかなと」



 山本は、最初から家族じゃなかったって事なのか。



「家族だ地元愛だなんだ言ってほんとクソくだらねえ偽善ごっこを見れていつも吐き気抑えるので必死でしたよ。お前らは所詮殺人者で犯罪者で世の中のなんの役にも立たねえただのゴミだってのによ」


「だから殺したのか、西条も鮎川も。」


「そうですよ。まあとりあえず全員皆殺しにして関係者の家族も殺してやろうかなと」


「っ!そこまでやる必要が」


「あろうとなかろうとどっちでもいいんだよ。てめえにそんな事グダグタ言われる筋合いはねえ」


 その通りだ。いきなり俺らのようなヤクザに家族を殺され一人生き残りそして今度は自分が殺す立場になりそのヤクザの言葉に耳を傾けろってのも無理な話だ。


 だがそれでも叶うのならば



「頼む、俺の命で何とかならねえか。俺はどうなっても構わねえ、だから下の奴らとオヤジだけは」


「何とかなるわけねえだろ馬鹿かてめえは」


 足を撃たれ座り込んだままだがそれでも頭を下げる。


 しかし当然のように断られ山本の蹴りで顎をかち上げられ後ろへと倒れこむ。


 目の前でチカチカと星が回り体が途轍もなく重い。だが俺に出来るのはもはやこれぐらいしかない。



「無理を承知で頼む……」


「あのなぁ、頼まれてもよ」













「もう死んでんだよ全員、兄貴以外の全員がよ」


「…………は?」


「は、じゃねえよ。要はお前らが最後だったんだよ、今日の時点で俺が金で雇った殺し屋たちが兄貴以外みんな弾いちまってるよ」



 ガチャッとすぐ後ろのドアが開き血塗れの市川が出てきた。



「おう市川。そっちは終わったか?」


「ええ、滞りなく。」


「そうか。まあ兄貴……そういうこった。」


 もはや山本の言葉や血に濡れた市川などどうでも良い。動かない足と体を手で引きずりなんとか奥の部屋へ。


 そこで目にしたのは




 ーー頭を弾かれ顔半分が吹き飛び、ソファで座りながら死んでいるオヤジの姿だった。



「オヤジ!!!」



 信じたくはなかった。


 西条も殺され鮎川も殺され、それでもまだ市川がついてるならと思ったが返り血を浴びた市川を見て想像はつく。



「オヤジ……」


 事切れているオヤジの元へ辿り着きまだ冷え切っていない手を握った。



「すまねえ……オヤジ……みんなすまねえ……」


 撃たれた足からは止め処なく血が溢れ出血により意識は朦朧とし目の前が霞んでゆく。




 カチッと冷たい何かが頭に押し付けられる感覚。



「兄貴。俺はヤクザを恨み東城会を恨んでるのに変わりはねえ。」


 山本は手にした拳銃の安全装置を外しながら


「だが……」


 俺は目を閉じる、そして

 


「アンタのことは……兄貴のことは本当の兄貴だと思えました。お世話になりました……」



 それが、俺が最後に聞いた言葉だった。
















 あったかい。


 俺は地獄に落ちちまったんだろうか……


 地獄にしてはなんだか居心地が良すぎるような……ずっとこのままでもいい気がしてきた。




 そして唐突に光が迫る。




 どこに向かってるんだから分からねえが……眩しくて眩しくて目も開けられねえ。



 そして




「んっ……あああっ!!」


「よし!!産まれたぞ!!」



 いきなり外が明るくなり瞼を開けることが出来ない。



「泣かないぞ……この子は大丈夫なのだろうか……」


「呼吸はしているわ、どうして泣かないのかは私にも分からないけど……」



 暫くして光に慣れ恐る恐る目を開けると、そこにうつったのは




 厳つい顔に額からは長い二本の角、浅黒い肌に髭を生やした化け物の姿だった。



おぎゃぁぁぁぁあ!!(なんじゃこりゃぁ!!)


「おお!!泣いたぞ!!大きくていい声だ!!!」


「貴方の顔を見て泣いたのかもしれませんよ。ほら、パパのお顔こわかったねぇ」


「そ、そんな事なかろう!!ないよな!?」




 ここがどこで目の前の化け物が何なのかも分からないがただ一つ言えることは……








 どうやら俺は赤ん坊で、転生……というやつをしてしまったようだ。











ご愛読ありがとうございます。


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