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転生鬼族は任侠道を貫く  作者: めもめも莉莉愛
3/14

裏切り

ストックならまだある……から大丈夫なはず……

 

「いやぁ、何だか久々ですね!こうやって皆さんと顔を合わして集まるのは」


 口を開いたのは飲食部門統括の鮎川。元々都心でホストをしていて長年店のNo.1に君臨していた男だ。


 今年で36歳になると言っていたが20代後半に見える整った容姿と夜の業界で培った接客技術、従業員への気配りなど自らも現場に立ち現在6店舗ある店を任されている。



「そうですな。鮎川も西条も、そして若も変わらないようでなによりです」


 柔らかい喋り方とそこらへんにいる優しそうなこの男性は金融部門統括の市川。善良な金貸しとして東城会(うち)のフロント企業を経営するやり手の経営者でもあり長年オヤジの右腕として東城会を支えてきた男だ。


 今でこそ穏やかに見える市川だが昔はバリバリの武闘派ヤクザで50歳前後のここらへんのヤクザは市川の名前を聞くだけで震え上がる者もいると聞く。


 俺が小さい頃はよく身の回りの世話をしてもらい家に帰るといつも手料理を食べさせてもらっていた。



「しかし、山本の奴いくら最近幹部入りしたからってオヤジと俺たち全員を呼び出すなんてやり過ぎでしょう」


「すまない。さっきまで事務所にいた時はいつもと変わらない様子だったんだが……」


「いえ、若が悪いわけでは……そのご様子だと何も聞かされてないようですし」


「ああ、さっき田中の婆さんの見舞いを頼んだ後すぐ戻って来る話だったからもうすぐ来る筈だ」


 他の幹部が山本に呼び出されているのを快く思わないのも無理はない。





 東城会はオヤジをトップとしてその下に5人の幹部で成り立っている。


 飲食部門の鮎川、金融部門の市川、店のケツモチや荒事に対応する武闘派を纏め上げる西条、そして投資を主なしのぎにしてその圧倒的な経済力で幹部に成り上がった山本。


 ちなみに俺は地元との繋がりを多く持ちみかじめや治安維持、時には西条達と荒事の解決やNo.2として他の組織のヤクザとの話し合いに赴く東城会のトップの倅として看板を背負わせてもらっている。


 29歳と若造ながら若頭として、そして倅として東城会を継ぐ立場にいるのを皆が良しとしてくれているのはありがたい。



 そうして話し合いを続けているとコンコンッと扉をノックする音が聞こえた。


 全員が反応したが西条が立ち上がり俺と目が合い頷くと



「俺が出ます。念のため市川さんはオヤジを奥の部屋へ」



 この時間に来客など何か怪しいと感じた西条と俺はオヤジを奥の部屋へ。何かあった時の為に市川にも付いて行ってもらい俺と鮎川も立ち上がり扉から距離を取り構える。


 鮎川の手には拳銃が握られておりその狙いは扉へと向いている。俺は壁に立て掛けてあるオヤジのコレクションである日本刀を鞘から抜いていた。


 大袈裟に思われるかもしれないがヤクザという商売柄いつ何が起きてもいいように準備しておくのは普通だった。それに最近妙に町の外の同業や半グレが多いのも気になる。


 曲がりなりにもヤクザの事務所であるここへアポ無しで来るような者はいないのだ。



「何の御用でしょうか。本日は営業外ですので後日電話にてお聞きしましょう。今日の所はお引き取りを」


 丁寧な口調で西条が扉の外へ喋りかける。しかし相手は応答せず沈黙が続いた。



 5分ほど様子を見た後に俺たちは武器を下ろし一息つく。


「そこらのガキのイタズラでしょう。念のため近くを見て回って来ます」


「ああ、頼んだ」


 そう言って西条は扉を開け




 ――パンッッ



 乾いた発砲音が鳴る。



「ぐっっ!」


「西条!!!」


 数々の修羅場をくぐり抜けて来た感からか西条は咄嗟に体を傾け致命傷を避ける。


 弾丸を腹で受けながらも襲撃者の襟を掴み強引に投げに持っていき事務所の中へと叩きつけそのまま扉を閉めた。



「西条!!」


 俺は再び西条の名を呼ぶと


「大丈夫です……心臓は避けましたし俺の体格的にもすぐ死ぬことはないでしょう。ですが……」


「ああ、こんな平日にサイレンサーも無しでぶっ放したらすぐに警察(デコスケ)が飛んで来るだろう」


「ええ、まずはオヤジを安全なルートで……」


 西条がそこまで口を開いてた時、扉のすぐ外で何か栓を抜く音が聞こえその後にゴンッゴンと重たい石のようなものが転がる音が聞こえた。


 そして



「ーーーー伏せろっ!!!!!」



 爆音と閃光に辺りが包まれる。


 派手な音を撒き散らし咄嗟にテーブルの下に身を隠した俺はテーブルごとその衝撃で奥の壁へと吹き飛ばされた。


(嘘だろおいっ!いきなり手榴弾かよ!!!)


 恐らく放たれた石のような物体は手榴弾。威力が軽減された小型のものがよくヤクザや半グレなどの集団の中で出回っており今のもそれの一種だろう。


 小型といってもその威力は侮れなく人間の一人や二人など確実に殺せるものであり現に扉に一番近かった西条はその爆発に巻き込まれる床で力なく横たわっている。



「おい西条!!くそっ!」


 呼びかけても反応はなく今のところ生死は不明だ。


「鮎川!無事か鮎川!!」


「なんとか!左腕は使い物になりませんが足は生きてます!」


「そうか!なら市川と一緒にオヤジを連れて逃げろ!西条は俺が……」



 ーーパンッパンッ


 事務所に再び発砲音が鳴り響く。


 そしてその音はオヤジがいる部屋から聞こえた気がした。


 二発の発砲音を合図に事務所へと武装した集団が流れ込みその集団の奥からゆっくりと一人の男が歩いて来る。


 刈り上げた頭にきっちりとスーツを着込んだその男は



「山本!!てめえ……!!!」


「兄貴、お待たせしてすみませんでした。もうすぐ予約の時間なので急ぎましょう」


「何が予約だ!!ふざけてんじゃねえぞてめえ!!」


「はあ、本当に分からない人ですね兄貴は」


 そう言って右手を上げた瞬間





 ――スダダダダダダッッ!!!





 集団の両端にいたアサルトライフルを構えた二人が一斉に発砲し西条と鮎川の血肉が宙に舞う。





















ご愛読ありがとうございます。山本ぉ……


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