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転生鬼族は任侠道を貫く  作者: めもめも莉莉愛
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プロローグ

異世界転生。読んで頂きありがとうございます。

 

「なぁ、オヤジ。」




 半壊した住居や散乱した瓦礫の中心で一人の鬼が、友の亡骸を抱きしめる。


 元々は小さな村であった故郷は今はもう見る影もなく彼以外の人影は見当たらない。


 彼のすぐそばには5メートルはありそうな大きな虎のような獣の死体が横たわっていた。



 この世は弱肉強食。弱き者は淘汰され強い者に喰われる、そんなことは彼には()()()()()から分かっていた筈だった。



「また1人で生き残っちまったよ。そっちにいた頃と何も変わっちゃいねぇ、大事なもんはいつもこの掌からこぼれ落ちちまう。」



 そう呟いた時頭の中に声が響く。





 ーー進化条件を満たしました。次の種族への進化が可能です。



 ・大鬼(オーガ)


 成人した雄の鬼族の進化種族。2メートル近い身長に額から小さい二本の角が伸びる。浅黒い肌は頑丈で身体能力に補正がかかり腕力に特化している。



 ・侠客童子きょうかくどうじ


 成人した雄の鬼族の特殊進化種族。体格は細身で170センチほどの身長に青白い肌。一見すると人間に近い見た目だが額から小さな角が生え身体能力に特大の補正がかかりその腕力と脚力は大鬼を圧倒する。






「ハッ!このくそったれた世界でも任侠を貫けってか。」



 狭客とは、強きを挫き弱きを助ける者を指す。かつて彼がこことは違った世界で生きていた頃、極道という裏社会の住人の呼び名だった。



「神さまってのは相変わらず優しくねぇなぁ」


 もっとも彼が生きていた頃は侠客や任侠など一部の人間を除いて廃れてしまっていたのだが。






 親を失くし友を失くし、されど任侠忘れず羅刹に落ちず、後のここマグナシアで亜人達の頭領として恐れられる一人の鬼。




 名を千景(ちかげ)、日本出身の転生者である。





















 ーーあ…き……



 うるせぇな。



 ーー…にき……兄貴……



 だからうるせぇよ。



「あに……兄貴………兄貴!!」



「誰だようるせぇな!!」



「うるせえじゃないですよ!起こせって言ったの兄貴でしょうが!!」



 目を開けた先にはいつも通りの刈り上げた頭にきっちりと着こなしたスーツの舎弟である山本の姿が飛び込んでくる。


「あぁ、山本か……」


「山本か……じゃないですよ!いつもいつも子供じゃあないんだからもう少し早く起きて下さいよ!」


「悪い悪い、今度から気をつけるって」



 そういつも通りの台詞を吐きながら固まった体をほぐすように伸びをした。思わず欠伸が溢れる。



 うちに入りたての頃はおどおどして初々しいしかったこいつも兄貴である俺にこんな言葉を吐くとはふてぶてしくなったもんだ、まあ俺の寝起きが悪いのが原因なんだが……



 雑居ビルの3階にあるこの事務所で一通り商談をまとめた後

 飯まで少し仮眠と思ったら思ったよりも寝すぎちまったみたいだ。



「商店街の田中の婆さんとこ、ちゃんと話してきたか?」


「ええ、何でも婆さん腰やっちまったみたいで。暫くは入院して店も休むみたいなんで支払いの方を待ってくれねえかって話でして」


「それで?」


「一回兄貴に話を持ち帰ってからまた顔を出すと伝えときましたが、どうしましょう」



 田中の婆さんってのは商店街でもう40年クリーニング屋を営んでいて、俺がガキの頃から世話になってる腰の曲がった小せえ婆さんだ。


 旦那を早くに亡くしてから女手一つで二人の息子を育て今年長男の方の孫が中学校を卒業するって言ってたな。



「延滞も利息もつけなくていいからさっさと治しなと伝えとけ。あと後で見舞いの品でも適当に見繕って一緒に渡して来い」


「分かりました、んじゃいつも通り残りの金は「お前の好きにしろ」はいはい」


 そう言って10万円が入った封筒を引き出しから出して山本に渡す。



「帰ってきたら飯行くぞ。下のモンにも伝えとけ」


「了解ですよ、じゃあ1時間後に事務所でと伝えときます」


「ああ」


 山本が出て行った後再びソファーに座り煙草に火をつける。



「ったく、元々みかじめなんていらねえっつってんのにどいつもこいつも……」


 そう言いながら見上げた視線の先には任侠道の文字。


 オヤジの信念であり口癖であり俺達極道として忘れちゃいけねえ心意気だ。




 東京郊外に位置するこの小さな町で俺は育った。


 生まれは神奈川で小学2年の時に両親が離婚し母親が出て行きロクに仕事もしねえで毎日呑んだくれてた父親は小学5年になる前に蒸発し消えた。


 そんな家庭で育った俺は素行がいいわけもなく小学生の頃から当然のようにアウトローの世界に入り浸っていて飲酒喫煙、窃盗は当たり前、小学生に何教えてんだと今になって思うがその頃は何処にも居場所もなくただガキだからと可愛がってもらえたあの場所の居心地が良かったのだろう。


 父親が蒸発してから1週間経ったある日、呼び鈴が鳴り玄関を開けた先に立っていたのはやたらと眼光の鋭い白髪のおっさんとその後ろにガタイの良いスーツを着込んだ男が二人。



「おめえさんが千景か?」


「……誰ですか」


 いきなり名前を呼ばれ警戒を露わにする俺に


「覚えてねえか、最後に会ったのは千景が初めて歩けるようになった時だったからな」



 懐かしむように笑う白髪のおっさんはどうやら昔から俺を知っている人のようだ。両親の知人は今更家まで来て声を掛けてくるはずもなくかといって俺に祖父母はいない。


 母親は一人っ子だった。となるとこのおっさんは


「父さんの双子の弟……龍二、さん?」


「おう、如何にも俺が龍二さんだぜ」


 そう言うと龍二さんは常に人の顔色を伺って笑う父親とは違い豪快で人を惹きつけるような笑顔を浮かべ


「おう千景、回りくどい言い方は無しにしておめえさんさえ良けりゃ俺んとこに来ねぇか?」




 それが龍二さん……いや、東城会組長 東城龍二。記憶にある中での龍二さん(オヤジ)との最初の出会いだった。





 

 

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