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婚約破棄されたので呪いの地を開拓しようと思います  作者: りんご飴ツイン


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第三十九話 それは次なる闘争へと繋がる準備段階

 

「『スピアレイライン運輸』は文字通り運輸専門であったはずですが……本当に()()()()()()()()()()()()()()()土地浄化農薬を売りさばいてくれると?」


「まあな。今まで必要物資を俺ら名義で買ってきたんだ。売りさばくのも俺ら名義でいいというか、実際俺らが売りさばいてやるよ。だから、なんだ、シェルファの嬢ちゃんたちは土地浄化農薬を作るのに専念してくれ。あれ作れるのは瘴気を吸っても問題ないシェルファの嬢ちゃんたちだけだし」


 呪いの地の外、草原の一角を柵で区切った農地を訪れたタルガの提案にシェルファは困ったように眉をひそめていた。


 と。

 土地浄化農薬の効果の実験、というか農業それ自体にハマっている麦わら帽子にメイド服というアンバランスなレッサーがその手に持ったクワを『スピアレイライン運輸』が会頭・タルガへと突きつける。


「ちょっとーっ! 名義奪うって、なにそれ!? 確かに必要物資を購入する際にはなぜか『スピアレイライン運輸』名義にして、代金と運輸代に上乗せして料金払っていたけど、それとこれとは話は別なのっ。まさかとは思うけど、名義を奪うついでにそれこそ歴史を変えるような偉業を成し遂げたのは『スピアレイライン運輸』だーっ! なんて捏造する気じゃないの!?」


「おっ、鋭いな。その通り。土地浄化農薬に関する全ては『スピアレイライン運輸』、というか大魔導師タルガが達した偉業っつーことにする気だわな。そのためにも名義から何から手に入れたいってわけ」


「こ、このおーっ! お嬢様の凄さを世界に知らしめる機会なのっ。お嬢様を切り捨てた王族や公爵家をギャフンと言わせてやるのっ!! それを、そんな、横から手柄だけ横取りなんて絶対させないのーっ!!」


 ついにはブォンブォンとクワを振り回しはじめたレッサー。そんなメイドの肩に手を置き、主が声をかける。


「レッサー、落ち着いてください」


「でもっ、でも! これだけ凄い発明したってなれば冤罪だなんだに騙されて、お嬢様の本質を見ようともしなかったクソ野郎どもをギャフンと言わせられるの!! その手柄を奪うって言ってんだよ!? 落ち着けるわけないの!!」


「ああ、手柄なんてものはどうでもいいですし、王族や公爵家がわたくしをどう見るかなんて興味ありません。そんな些事に構っている暇はないといったほうがいいでしょうか?」


「え?」


「そんなことより。タルガ、本当によろしいので? せっかく手に入れた安息が脅かされるのは確実ですが」


「だろうな。だがよ、シェルファの嬢ちゃん。ようやく恩人の助けになれそうな展開になりそうなんだ。手助けさせてくれよ」


「……、タルガらしいですね。わかりました。わたくしも正確に予測まではできていませんが、タルガたちならば何とか凌げるでしょう。動きがあった場合は報告してください」


「りょーかい。んじゃ、そういうことで」


 ひらひらと手を振りながら、タルガは魔導馬車に乗り込み爆音と共に去っていった。


 と、話の流れがさっぱりで置いてけぼりなレッサーがハッと表情を弾けさせて、シェルファへと詰め寄る。


「お嬢様今の何どういうこと!?」


「タルガは察しがいいということです。話す気はなかったのですが、察しがついているなら仕方ありません」


「もお! ぜんっぜん説明になってないのに、どうしてそう一から十まで説明終わりみたいな満足げな顔してるのおーっ!!」



 ーーー☆ーーー



「第二王子め。中々尻尾出さないな」


 バーニングフォトン公爵家が長男にして軍部の頂点たる大将軍の座に君臨するルシア=バーニングフォトンはバーニングフォトン公爵家本邸にある自室で舌打ちをこぼしていた。


 呪いの地『魔沼』近くで発見されたダンジョン攻略中に激突した仮面の男は『冥王ノ息吹』を具現化し、ダンジョン内や外に待機していた二千もの兵士の命を奪った。


 声音からするにあれはどう考えても第二王子であるのだが、いくらなんでも声だけを証拠に第二王子を糾弾できるわけがない。良くて勘違いと諭され、悪ければ王族の名誉を傷つけたとして投獄されてもおかしくない。


 ──わかっていて、それでも即座に第二王子を糾弾するのがルシア=バーニングフォトンであった。


 予想通り証拠不十分として処理され、宰相辺りから王族に牙を剥く不敬者に大将軍の座は似つかわしくないとして地位を剥奪すべきという意見も出たが──意外にも第二王子がルシアを庇ったのだ。


 誰にでも勘違いはあると、数千もの兵士を失った失態を覆そうと躍起になり視野が狭くなっているだと、耄碌するのも仕方ないと、それはもう好き勝手言っていたのをルシアは一言一句覚えている。


 ニヤニヤと。

 悪意に満ちた笑みを浮かべ、その手で殺した兵士たちの冥福を祈るだなどとほざいたその言葉を忘れるものか。


「このままで終わるものか。私に従い、私の命令で動いていた二千もの兵士の命を奪ったクソ野郎には必ずや鉄槌を下してくれる」

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