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嫌われ者達の魔窟逃避行  作者: 元精肉鮮魚店
第三章 嵐の前の第二層
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第二十四話 ソル対テリー

「とりあえず、これで三人死んだな。あと一人か」


 ソルはレオラを外野に押しやると、残るテリーに言う。


 テリーは一瞬悩んだが、盾を持ち上げて身構える。


「……アレ? 兜が」


 メーヴェはテリーが兜を被っている事に気付いた。


 アルフレッドとの戦いの時には無かったはずだが、本気の現れとも言えるかもしれない。


 それだけじゃない。


 おそらくフル装備状態なのだろうが、明らかに装備全体の雰囲気が変わっている事にメーヴェは気付いた。


 装備品自体は何も変わっていないはずなのだが、放たれる雰囲気がまったく違う。


「少しは卑怯ってのを考えるつもりになったらしいな」


 ソルはテリーを見てそう言うと、異形剣を呼び寄せる。


「さて、少しだけ本気を見せてあげましょうか」


 異形剣も嬉しそうに言う。


「ここまで見ていれば分かるだろうが、異形剣の力を使ったとしても俺の攻撃は物理攻撃のみだ。その意味でも、この選択は正しい。もし俺がお前らと同じ立場と実力だったら、こう言っていただろう『卑怯者』とな」


 ソルはそんな事を言うものの、まったく困った様子も無く余裕の態度も崩さない。


「カウンター、か」


 アルフレッドが呟く。


「ほう、『仮面』の小僧は気付いたか」


「本気で勝つ事が目的なら、それしか無いでしょう」


 ケンゴの言葉に、アルフレッドはそう答えた。


 ソルが言うには魔窟探索者の強さは装備で決まるとの話だったが、それを言ったソルはまったく装備の強さを見せる事無くA級の者達をあしらって来た。


 それでもソルに一矢報いるとすれば、それはやはり物理攻撃に対するカウンターが最善である。


 アルフレッドとの戦いでテリーの装備には、そう言う効果は無かった事は誰もが目にしていた。


 本来であれば、それが罠として活かせるはずだったのだが、ソルの天才的な勘の良さがテリーの狙いを見抜いていた。


 いかに尋常ならざる戦闘能力を持つソルであっても、特殊なカウンターを持つテリーに有効な攻撃を与える事は出来ないはずなのだが、ソルはそれに対して困っている様子も無い。


「カウンターってのは強力な防御法であると同時に、強力な攻撃法でもあるが、それで全てを無力化出来ると思うのはさすがに甘過ぎる。そう言う訳で、カウンターが効かない可能性も見せてやろう。その上でもう一度卑怯って事もよく考えるべきだな」


 ソルはそう言うと異形剣を、盾を構えるテリーに向ける。


 その意を察した異形剣は無数の刃に姿を変えて、完全にテリーを包み込む。


「これで終わりだが、せっかくだから周りにも分かる様に説明してやろうか」


 ソルはギャラリーを集める。


 アルフレッドやルイだけでなく、ケンゴやレオラもそちらに行くのでメーヴェもついて行く。


 ソルは異形剣を向けたまま、カウンター装備の強みと弱みを説明する。


 まずなによりの強みは、やはり一定レベルの物理攻撃を無力化出来る事だろう。


 だが、規格外の一撃、例えば山にしか見えない二層のマスターなど、非常識極まりない大きさの魔物の一撃などを跳ね返せるかと言うと非常に厳しいとソルは言う。


 物理攻撃に対するカウンターも装備の魔力によって行われる為、その魔力でもどうにもならない一撃に対しては物理攻撃であっても跳ね返せるとは限らないらしい。


 が、それほどの質量を持つ一撃は、いかにソルと異形剣であっても繰り出すのは難しい。


 今はすっぽりとテリーを包み込んでいるが、装備品によるカウンターであればこう言う多角攻撃は、カウンター装備がどの部位によって行われているのかによって効果が変わる。


 例えば盾のみにカウンター効果がある場合には、多角攻撃は極めて有効であるが、鎧や装備全体、全身に及ぶ場合には多角攻撃は有効とは言えない。


 それを見た目で判断する事は難しいので、それを試せる場合には迷わず試すべきであるとソルは言う。


「特に中から声がしないって事は、あいつのカウンターは全方位型って事だな。ついでに言えば、カウンターも例えば攻撃を受けたら盾から刃が出て反撃してくる様なヤツじゃ無く、受けた衝撃をそのまま対象に返すタイプだな」


「何故そう思う?」


 レオラが挑む様に言う。


「少し考えれば分かるだろう。お前が曲芸を披露した時、何かしらの迎撃を行うのであれば位置取りのやりようがあったはずなのに、アイツはただ見守っているだけだった。下手にカウンターを発動させてはお前にダメージが行くからだろう?」


 本当に戦いの事になると、よく見えてるし頭も働くな。少しはそれを気遣いの方に回してくれれば良いのに。


 メーヴェはそんな事を考えるが、たぶんメーヴェ以外にも同じ事を考えている女性は数人いるはずだ、と言う自信はあった。


「それで? なす術なくにらみ合いが攻略の手口か?」


「そんな訳ないだろう。ちゃんと卑怯極まりない手で攻めているところだ」


 完全に異形剣ですっぽりと包まれている為、具体的に中で何が行われているのかは分からないが、何か良からぬ事が行われているらしい。


 ソルが卑怯極まりないと言うくらいなので、よほどの事なのだろう。


「だが、私達も最速でA級に上がってきた実力がある。特にテリーのカウンター能力は、物理攻撃でどうにか出来るモノではないはずだ」


 味方と言う事もあるだろうが、レオラも物理攻撃がメインなだけあってテリーのカウンターの強力さは知っている。


 それこそ、どうにか出来るモノではないと言うくらいには。


「迎撃型のカウンターには多面攻撃が有効だし、間合いの外からの攻撃には無力である事も多いと言う弱点があるが、受けた衝撃をそのまま返すカウンターにも弱点はあるさ。まぁ、もっとも有効なのはこうやって閉じ込めて戦力外にしてしまう事なんだが、それ以外にも色々とある。無敵の能力っては中々無いモノだ」

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