表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嫌われ者達の魔窟逃避行  作者: 元精肉鮮魚店
第三章 嵐の前の第二層
69/96

第十四話 来客

「一日に二組も客が来るとは、珍しい日もあるもんだ」


 ボヤきと言う訳ではなく、本当に珍しいと思っている口調で店主は呟くと店の方に出る。


 なんとなくメーヴェ達も店主の後に続いて店の方に出ると、そこには四人の魔窟探索者がいた。


 見た感じには、かなり若い。


 おそらくメーヴェやアルフレッドとさほど変わらず、ルイよりは年下に見える。


 その割には雰囲気があり、その装備品もソルと比べるのはさすがに厳し過ぎるだろうが、ソムリンド家の名剣やソルの持つ名剣にも劣らないモノを身に付けている。


「貴方が『二層のダンナ』と言われる刀匠か?」


 リーダーと思われる男、と言うより少年が店主に向かって言う。


「さて、どうかな? 何しろこの層には刀匠が集まっているからなぁ」


 店主はとぼけて見せる。


 このヒトはまずこうやって客を選んでるんだな。


 店主の後ろから、魔窟探索者とのやり取りを見ながらメーヴェは考えていた。


「二層で一番の腕があると聞いてます。俺達に武器を売って欲しい」


「ほう、俺の武器をなぁ。見たところそれなりの実力者の様だが、何故強力な武器を求める? その理由次第だな」


「もちろん、仲間を、大切な人を守るためさ」


 ……あ、本当に目がキラキラしてる。ちょっと嘘くさいくらい。これは何かアレだな。気持ち悪くも見えるなぁ。


 店主が最初にこちらを引っ掛けた気持ちも、まったく分からない話ではないとすら思えた。


「素晴らしい! 若い探索者はそうでなくてはな! 生憎と今は先客がいて作業中だから、申し訳ないが相手はしてやれないが、特別にそこにある武器を売ってやろう。好きなモノを選んでくれ」


 こう言う通過儀礼なんだなぁ、とメーヴェは様子を見ていた。


 おそらく店主は気難しいと聞いていただろうから、案外話の早いヒトだと安心しているかも知れない。


 でも、慣れた感じはするから武器を選ぶ事は無いかもしれない、とは思う。


 この店主の意地悪なやり口は決して褒められた事ではないが、少々値の張る表の武器は武器としての性能で考えると完全に騙してやるつもりの値段であっても、美術品として見た場合には必ずしも法外な値を付けていると言う訳ではない。


 それもまた巧妙かつ意地の悪いやり口である。


「……教えてやらなくて良いのか?」


 ルイは小声でメーヴェやアルフレッドに向かって言う。


「……ある意味ではテストみたいなモノだから、俺達が何か言うのはちょっと違うかも」


 アルフレッドでもそう思っていたらしい。


「ダンナ、俺に免じてテストは勘弁してやってくれないか?」


 若い探索者達の後ろから、巨漢の重戦士が現れて店主に向かって言う。


 ただでさえ長身のソルより背が高く体格にも恵まれているのが伺えるのだが、さらに重装備が見た瞬間に分かる鎧のせいでさらに大きく見える。


「テスト? いやいや、俺は本当にその応えが気に入ったから、表の武器を売ってやるって言ってんだよ」


 巨漢の重戦士の言葉に、いかにも心外だとばかりに店主が言い返している。


 けど、前に同じやりとりをしているだけに店主の言葉が嘘くさく聞こえてしまう。


「テストだと? 店のヤツが客を試すとは、どういうつもりだ?」


 反発してきたのは、若い探索者の中でも目立つ女性だった。


 重戦士ほどでは無いにしても女性にしては背が高く、ルイと同じかそれより少し高いくらい。


 だが、目立つのはそこだけではない。


 どんな素材で作られた衣服なのかを疑いたくなるほどに体に吸い付いているぴっちりした袖のない服のせいで、異形剣にも劣らないほどに上半身は裸に色でも塗っているのではないかと思えるほどである。


 その為、異常なほどの大きさの胸が強調されて見える。


 腹部を覆う様な帯も相当キツく締め付けているのか、ウェストのクビレもエグい。


 下半身はロングスカートがベースだった様に見えるのだが、サイドをざっくり切り取って前と後ろだけ残して、横からなら足がむき出しになっている。


 少なくとも防御力は無さそうだが、手甲と足甲で防ぐか躱すに特化しているみたいだ。


 だとすると、あの胸は邪魔じゃないかな? って言うより、エロいな。


 武器らしい武器を持っていないところを見ると体術使いなのだろうが、ルイに負けず劣らずのスタイルと短気さを持っているのも分かった。


 魔窟探索してると、見た目がエロくなるのかな?


 メーヴェはふとそんな事を思う。


 異形剣もエロい見た目をしているが、実際には剣でありその姿は変幻自在なので例外とするにしても、全体的に肉付きが良く露出度が高い、あるいは必要以上に体の線が出ている事が多い事もあって、そんな印象を受ける。


 男性の方はそこまで露出しているわけではないものの、ソルや巨漢の重戦士の様にかっちり全身鎧を身に付けているのも意外と珍しく、アルフレッドや店に来た魔窟探索者などは軽鎧である。


 案外武器ほど防具には気を使ってないのか、防具の需要が低いのかは分からないが、命知らずと言うか無謀と言うかと思ってしまう。


 一応探索者の方が盾を背負っている為、アルフレッドよりは防御力は高そうだ。


「別に客には困ってないから、客は選ばせてもらっている。気に入らないなら帰ってくれ。先客がいるんでな」


 店主はやって来た魔窟探索者には、さほど興味を持っていないようだ。


 短気な女拳士は店主に殴りかかろうとしたが、それを少年の方に止められる。


 ルイとアルフレッドの未来の姿かな?


 既視感と言う訳ではないが、見た目などからそんな連想をしてしまう。


 メンバーの編成もちょっと気になる。


 少年の他には、短気な女拳士の他、小柄な回復術師と魔術師の四人がパーティーで重戦士は別な様だが、残る二人もまた見た目が良い。

 回復術師は露出度は低いものの、やっぱり異常なほどに体に張り付いている衣服と必要以上に深いスリットが入ったスカートのため、むっちりとした肉感的なスタイルを隠すどころか強調している。


 魔術師の方は小柄でスレンダーな体型だが、妙に短いスカートでその美脚をアピールしている様に見える。


 魔窟探索の真の狙いは、結婚相手よかのパートナー探しなのかな?


 いささか以上に露骨な性的アピールをしている様に見えるところもあって、メーヴェはそんな事を考えていた。


「いや、あの魔術師は男だろ」


 考えている事が読めるのか、店主がメーヴェに向かって囁く。


「……え?」


 言われて改めて見るものの、メーヴェの目から見ても可愛い顔立ちで、体型はあまりにも極端な女拳士と回復術師がいるのでスレンダーさが目立つが、上半身はマントで隠れているものの細くて綺麗な足は隠そうとはしていない。


「え?」


「男だろ、あれ」


 店主とメーヴェは完全に最初の趣旨と違う目で、店を訪れてきた魔窟探索者を見ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ