第二話 歪な街
この街は少々特殊な街だった。
一部の貴族が街の実権を握り、圧政と重税を課していた。
住人がそれでもその貴族達に頭を垂れるのは、一つには貴族達が持つ強力無比な異能力に逆らう事が出来なかったと言う事がある。
貴族のある者は物理攻撃を無効化する能力を、他のある者は逆に魔術攻撃を無効化する能力、触れるだけで人の生気を奪う者もいた。
当代の統治者は、魔物を使役する能力を持っていると言われている。
戦う能力を持たない者達は、例え重税であっても圧政であっても、逆らわなければ生活する事だけは出来る。
街に住む者達はそれで生活しているのだが、それでもまだ少数派であり、圧倒的大多数は街に住む事さえ許されない貧困層の者達である。
その者達に人としての尊厳は無く、街に住む者達の奴隷として自らを商品としてしまうか、この街の代表的産業とさえ言える魔窟探索に命を賭けるしかない。
街外れにある魔窟は常識の通用しない空間であり、異常な広さと構造、凶暴かつ狂悪な魔物の巣窟である。
だが、その魔窟に住む魔物達の中にはこの近辺では絶対に入手する事の出来ない宝石を持っていたり、街の常識では考えられない武具を持つ者が現れる事があると言われている。
それは深い階層へ行けば行くほど顕著になるのだが、それに合わせて現れる魔物の危険性と命の危険は飛躍的に高まる。
魔窟に挑む者は、必ずしも一攫千金を夢見る貧困層だけではない。
街での刑法によって魔窟への流罪を言い渡された者、死罪に値する刑罰から逃れようとする者、ただ魔物を狩りたい者など、魔窟に向かう者の幅は広い。
魔窟から発掘された物は街で売買される事になる事が多いが、その中でも強力な物を貴族達が買い叩いていく事も多い。
命懸けで魔窟を探索している者達は、結果として弾圧する者達の強化に手を貸している事になり、苛烈な法を受け入れるしかなくなっていった。
が、その日、ついに民衆は立ち上がった。