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世界を物語にした男

作者: valota666
掲載日:2015/12/23

童話祭2016で出したかったけど文字数の足らなかった物語であります。

お暇でしたらお付き合いくださいませ

 あるところに一人の男がいました。彼は色々な世界を見てをれを物語に封じ込めるのです。男に物語にされた世界はそのまま一冊の本となって本棚の中に眠る事になるのでした。


  

 あるときは剣と魔法の世界、邪悪な王様に立ち向かう一人の少年の物語。王様を倒した前に物語に封じ込め少年は戦いに勝ったのか負けたのかわかりません。少年の仲間であったツンデレ剣士の死も王様の部下をしていた黒騎士を兄に持つ女弓士の嘆きも封じ込められたままでした。

 男は世界を物語に封じ込めたまま本棚に収めるのです。


 封じ込められた物語の中で少年と王様は向き合ったままでいるのでした。世界すべてが凍りついたままでこの世界のあった痕跡は静かに静かに消えていくのであります。世界のあった隙間には別の世界が押し込まれて世界は消えていき、やがて忘れ去られてしまうのでした。


 

 またあるときも剣と魔法の世界。異なる世界が飛ばされてきた少年が理の違う世界の中で生き抜こうとするドタバタを男は眺めてこれは面白いものだと男は物語に封じ込めるのでした。

 少年が手に入れた小さな店と押しかけ店員となった少女を巡る常連さんたちの優しい優しい物語でした。少女の淡い恋情、少年の隠そうとする青い衝動、ベットの下の……げふんげふん。常連客の注文に試行錯誤しながら応じる少年の苦労と機転、決して流行っている訳ではないけど知る人ぞ知る良い店になっていくまでの立身出世物語です。

 男はこの世界を眺めると物語の中に封じ込めるのでした。


 少年が抱く青い衝動と少女の淡い恋情が噛み合うか噛み合わないかという時にそのまま物語に封じ込められました。少女の恋情が実を結ぶのか少年が色々いい店でお楽しみをするのかといった所で封じ込められてしまいました。

 これでは生殺しです。

 この世界もそのまま開いた隙間に他の世界が生まれて割り込んで忘れ去られてしまうのです。そしてまたひとつ本棚に物語が増えました。



 今度は戦の焔が絶えない世界でした。そんな中で生を受けた少女が故郷を滅ぼした連中に復讐するために悪魔に身も心も捧げているのです。男は少女が悪魔になるのを見てわくわくしました。悪魔になった少女は故郷を滅ぼした貴族を生きた焔にし永久の命を与えています。さらには弱き者を虐げる祭司を真実しかいえぬ体にしてから万民の前で神の不在を問い、神が死んだことを明らかにしたりしていました。

 そして悪魔を新しき神にして世界は戦の焔から………という所で男は世界を物語にしました。


 少女の慟哭も貴族の永久の苦痛も祭司の述べる真実もすべて凍りつきました。悪魔ですら神として己が権能を振るう事無く世界は炎と苦痛に包まれたまま閉ざされるのであります。苦痛が途切れることのない世界はまさに地獄といって良いものでしょう。男は世界がどうなろうと知ったことがないといった顔で世界を物語にして本棚の収集物を増やすのです。

 苦痛に彩られた世界は忘れさられその隙間は別の世界がいつの間にか存在していました。


幾つ物幾つ物世界が物語と姿を変えて男の書棚の肥やしとなりました。




 男はいつしか姿を消して書棚だけが残っています。世界はそのまま封じ込められたままです。



 ある時書棚をあさっていた誰かは

「これ全てエタっているじゃないか………糞駄目だよな―――の奴は」







 世界は中途半端な物語にされたまま、忘れ去られ消えていくのでありました。

お付き合いくださいましてありがとうございます

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