六章 襲撃 終
「―――――――――――――――――ッ!!」
ネーアの悲鳴が町中に響き渡る。
「逃げろ!!」
ゾルとカーンが同時にこう叫ぶ。
だが、ネーアは完全に腰を抜かしてしまっている為、その場から動けない。
ネーアに、トロルの棍棒が音を立てて迫る。
しかし、その棍棒は、彼女の目の前で止まる。
「…!?」
「…………大丈夫か?」
アレンが、トロルの棍棒を受け止めていた。
「ギュアアァ?」
「食らえ!!」
そして、その棍棒を刀で横に薙ぎ、そのまま体を軸にして、刀をコンバスのように回転させた。
刹那、トロルの腹から大量の鮮血が迸り、トロルの体が胴体から真っ二つになる。
そして、その巨体は血の池の中で暫しの間痙攣し、ついに動かなくなった。
「へへん!」
アレンは、自分の頬に付いた返り血を拭う。
「…………はぁ〜、やるねぇ〜」
ヴァルドが呟く。
「…………………あっ、ありがと」
「いいよ、いいよ、
それより、立てるか?」
アレンが、倒れているネーアに手を差し伸べる。
それを、ネーアは無言で掴み、立ち上がった。
「あ、ありがと………」
「ええよええよ」
「あ、あのね、さっきはゴメンね。
聞かれたくないようなコト聞いちゃって」
ネーアが恐縮そうに謝罪する。
「あ、そのことならもう気にしてないよ!」
アレンは、笑いながら言う。
「それより、早くアミノさんの所に行かなきゃ!」
「………うん!」
アレンの発言に、ネーアが相槌を打つ。
そして、走り出した。
†
「………闇魔法・確実なる死」
アミノの魔法が、トロルの大軍勢の中心で炸裂する。
その魔法に直撃したトロルは、一瞬にして砕け散り、何とか生き延びた者にも致命的なダメージを負っていた。
そして、生き延びていたトロルを、アミノの合成獣が縊り、バラし、斬り殺し、突き殺し、刺し殺し、惨殺していく。
「…………フン、面白くない奴等だネ」
アミノは、この十分で、トロルを百体は撃破していた。
しかし、そのトロルは減るどころか、逆に増えつづけ、アミノの周りを取り囲んでいる者だけでも、裕に三百体を越えている。
―――誰かが、こいつ等を召喚しているようだネ……
「アミノさーーーーーん!!」
背後から、自分を呼ぶ声が聞こえる。
振り返ると、日本刀を右手に握って、こちらに走ってくるアレンと、ヴァルドらの姿が見えた。
「……フン、やっと来たのかネ」
アミノが嫌味ったらしい口調で言う。
―――ぐしゃ…………
「……!?」
アレンの背後で、生々しい音が聞こえる。
アミノの合成獣が、倒れこんでいた。
「……こいつも、そろそろ限界だネ」
アミノは、倒れている合成獣を睨みつけ、こう言った。
「このトロル共は、誰かに召喚されているようだヨ。
餓鬼、お前にはこれからヴァルド等と¨召喚者¨を殺しに行ってもらう。
ここは、私1人で十分だヨ」
「えっ、
でも、アミノさんの合成獣は、もう限界なんじゃ…………」
「五月蝿い
早く、合成獣がへばる前に、さっさと私の命令に従え…………」
「はっ、はいいいいい、
す、すいませんッ」
アレンは、アミノの眼から発せられる鋭い殺気から逃れるように後退りする。
「で、その¨召喚者¨は何処に………」
「ネーア、探せ」
「うん、やってみます」
ネーアが始動語を低い声で詠唱する。
刹那、大気中の魔力がネーアの掌に集中する。
「………見つけた!!」
「どこだ!?」
「………飛空船の上に、人が見える。
……………帝国の……飛空船……?」
「!!」
その言葉に、アレンは驚嘆する。
「そこから、魔法反応が確認できる………」
「じゃあ、そいつがトロルを………?」
アレンの問いに、ネーアは黙って首を縦に振る。
「………っの野郎!!」
「あっ、
今飛空船が動き始めた!!」
ネーアが叫ぶ。
「逃がすかよ、この街を滅茶苦茶にしやがって!!」
ゾルが、飛空船ターミナルへと走っていく。
「待って、走ってももう間に合わないわ!」
「じゃあ、このまま逃がしっちまえってのか!?」
「私が、魔法で皆をその飛空船まで飛ばします!!」
刹那、ネーアの始動語を呟く声が聞こえる。
次の瞬間、アレンたちの周りを光が纏う。
「風よ!我等に力を!!」
ネーアの凛とした声が響く。
刹那、アレンの体が軽くなり、そして、そのまま何処かへと飛ばされて行った。
†
気が付くと、アレンは飛空船の甲板に立っていた。
「どこだ、帝国兵!!」
ゾルが叫ぶ。
すると、アレンらの眼前の昇降機から、男が現れた。
その男は、鋼の鎧や鉄仮面と軍刀で武装した帝国兵だった。
「何事だ!?」
「出やがったな、覚悟は出来てんだろうな!」
刹那、ゾルの手からナイフが音を立てて帝国兵に飛んで行く。
しかし、そのナイフは、帝国兵の体に命中する前に、軍刀で振り払われる。
「貴様ら、何者だ!?」
「お前が、セレスにトロルを召喚したんだな?」
アレンは、帝国兵の問いには答えずに、こう質問した。
「お前には関係のないことだ……………」
「いいから答えろ!!」
帝国兵は、一つ溜息をつくと、鉄仮面の奥からアレンを睨みつけ、こう言った。
「だったら、どうするのだ?」
「…………チッ、舐めやがって」
ヴァルドが呟く。
「セレスの街をこんなに滅茶苦茶にした報い、受けてもらうぞ!!」
そう言うと、カーンは腰の剣を抜き、帝国兵に突進しようとする。
しかし、カーンが斬りかかる前に、アレンがこう叫んだ。
「待ってください!!」
「!?」
アレは、自分の愛刀【神気風斬】を抜き、こう言った。
「こいつは、オレに倒させてください」
「ふん、お前なんぞに、私が倒せる訳がない!」
帝国兵は、そう叫びながらアレンに突進してくる。
アレンも、帝国兵に突っ込む。
ガンッ!!
しかし、アレンの刀は帝国兵に軍刀で受け流される。
「甘い!!」
軍刀が、音を立てて振り下ろされる。
しかし、その軍刀はアレンの魔法防壁に弾かれ、砕ける。
「なっ!?」
「せあっ!」
一閃。
帝国兵の胸に、刀が突き刺さる。
「………ぐあっ!?」
帝国兵は、そのまま血の泡を吹きながら倒れる。
「ぐっ、………ぐおおお………
く、くくくくく、くくははははははは、はははははははははははは!!」
「!?」
帝国兵が、堰を切ったかのように笑い出す。
「ふん、私がお前のような餓鬼にやられるとはな、
だが、貴様らももう終わりだァ!!」
刹那、帝国兵を、巨大な魔力が包む。
「?! みんな、伏せて!!」
ネーアの声。
その瞬間、セレス上空で、青白い閃光が炸裂した。
え〜と、
六章掲載送れてすいません;;
PC壊れちゃいまして………… byあごひげ