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DARK´KNIGHT  作者: あごひげ
5/10

四章  セレス

 今回は戦闘シーンはありません。戦闘シーン好きの方、そこんとこはご了承ください。

登場人物


アレン・サーペント  魔物モンスターを倒し、自分の名を上げるため旅に出た15歳の少年。この物語の主人公。

愛読書:週刊 冒険大王


ヴァルド スノフォール在住のギルド【暗黒の騎士】(ダーク・ナイト)のギルドマスター。村の近くの峡谷でアレンを拾う。

愛読書:月刊 ライフルの友 


アミノ スノーフォール在住の狂科学者マッド・サイエンティスト。ギルド【暗黒の騎士】の副ギルドマスターの1人。

愛読書:人体解剖を楽しもう! 上・下巻


ネーア スノーフォールの道具屋の店主の魔法使い。アミノと同じく、【暗黒の騎士】の副ギルドマスター。

愛読書:魔導書グリモワール


カーン 35歳の戦士。ギルド【エルグランド】セレス支部の支部長。

愛読書:特になし


ゾル 10代後半の盗賊。ギルド【エルグランド】のメンバー。

愛読書:ナイフ大百科

 アミノの発言に、その場にいたアレンらは凍りつく。


「どう言うことだ、アミノ!!」


「どうもへったくれも無いヨ。タニアレン軍の生き残りが居る。」


 カーンの問いに、アミノは冷静に答える。


「………私の仕入れた情報なんだがネ、どうも、1人、フォーズ要塞の監獄にぶち込まれているらしい、という話を聞いたんだヨ。」


 《フォーズ要塞》

  グルシア皇国の進攻に備えて、数百年前に

 帝国が帝都の西方、フォーズ地方に作った要

 塞。

  地下には、叛逆罪で捕らえられた者などを

 収容しておく監獄がある。


「この町から出る飛空船に、フォーズ行きが在るだろ?」


 アミノが言い、カーンがうなずく。




「でも、飛空船なんかに乗る金、あるのか?」


 ヴァルドが、訝しそうに言う。


「たしか、 1人1万5000バルクは掛かるはずだ。」


 カーンが答える。


「でも、この支部にそんな大金無いしなぁ…………、かと言って、今から働いて金用意してたら、1ヵ月後の戦争に間に合わないよな。」


 ゾルがつぶやく。


「………あの、」


「………?」


 アレンが手を上げる。


「……………たしか、あの空域って、よく飛空船と怪鳥との衝突事故がありましたよね?ヴァルドさん?」


 アレンが言う。


「………あ、ああ、てか、よく知っていたな。魔石機関の事知らなかったくせに。」


 ヴァルドが頷く。


「だったら、その怪鳥倒して、そのお礼として、飛空船の料金タダにしてもらえば……………。」


「!!」


 アレンの提案に、一同が感心した様に頷く。


「飛空船発着所に怪鳥討伐クエストを引き受けてくれる人間を探していた老人がいたな、たしか報酬もあったし。軽く10万バルクくらいはあったな。」


 カーンが言う。


「よし、じゃあ、その報酬で飛空船乗るか。」


「うむ、悪くない。」


 


 話はまとまった。

  

「…じゃあ、出発は、あの空域に怪鳥が多く出現する時間帯……、まあ正午過ぎに飛空船発着所に集合だ。その時に怪鳥の討伐クエストを引き受けるか。」


 ヴァルドが、ソファーから立ち上がる。


「じゃあ、俺は野暮やぼ用があるんでな。」


 ヴァルドは、アミノを睨みながら外へと出て行く。


「じゃあ、私も。ここの魔法具屋で買いたいものがあるから。」


 ネーアも、扉の外へ出て行く。


「ゾル、一緒に付いていけ。ここで迷子になられても困る。」


「……おう。」


 カーンに言われ、ゾルが出て行く。


「じゃ、じゃあ、オレも。」


「ああ、待ってくれ。」


 アレンが席を立とうとしたとき、カーンがアレンを呼び止める。


「……?」


「とりあえず、名前を聞いておこう。」


 カーンが言う。


「オレは、アレ…………」




「餓鬼…………。」




 アレンの自己紹介を、アミノが邪魔する。


「…………」


 アレンが黙り込む。その隣で、アミノが肩を揺らしている。


「………あんたは、相変わらず嫌な性格しているな。」


 カーンがぼやく様に言う。




「………と、とりあえず、もう一度言って貰えるか?」


「…アレンです。」


 アレンが言う。


「アレン君、だな?」


 カーンが確認する。


「もう用は終わった。ついて来てくれ。出口まで案内する。」


「はい。」


 カーンが立ち上がり、部屋の外に出て行く。アレンとアミノは、その後を付いていく。



 

                       †



 アレンとアミノ、そしてカーンがあの迷宮のような長い回廊を抜け、酒場の外に出る頃には、来た時には降っていなかった雪が、ひらひらと舞を舞っていた。

 その真ん中で、魔導書グリモワールやら、小さい魔法を唱えるときにでも使用するのであろうと思われる、円盤ディスクの詰まった紙袋をかかえたネーアがたたずんでいた。


「やっと出てきたね。」


「どうした?」


 ネーアに、アレンが話しかける。


「こう言う町、初めてなんでしょ?」


「………う、うん、」


「だったら、少し観光してみたら?飛空船発着所とか。」


 ネーアがにこにこしながら言う。


「……飛空船発着所はどこにあるんだ?」


「あっちよ。」


 アレンの問いに、ネーアが西の方を指差しながら答える。


「そっか、ありがとう。で、ネーアも来るのか?」


 アレンが聞く。


「ううん、私はまだ少し用事があるから。ここの町にも友達いるし、久々に友達に会いに行ったりとかもしたいしね。」


 ネーアが笑顔で答える。


「じゃあ、後でね。」


「ああ、」


 ネーアが、アレンに手を振りながら、走り去っていく。アレンも、ネーアの方へ手を振り返し、さっきネーアの指差した方へと歩いていく。



                       †

                


「………この建物かな?」


 アレンは、さっきから飛空船や人が行き来している大きな建物のまえで立ち止まる。


「(大っきい建物だな)」


 アレンは、発着所の眺めながら、心の中で感心したように言う。 

 そして、その建物の中に、歩いていく。


 発着所内は、これから旅行に行こうとしている家族や、かなりの重装備の凄みのある戦士、品物をぎゅうぎゅうに詰め込んだリュックを背負った商人などがロビーで飛空船への搭乗を待っている。

 

「…すごい人だな。」




「ボウヤ、飛空船に乗るのかい?」


「…!!」


 アレンは、その声を聞き、後ろを向く。後ろには、スーツを身にまとった初老の紳士が、アレンに微笑ほほえみながら、ゆっくりと歩み寄ってくる。


「あ、あなたは?」


「ん?私かい?私はな………どこにでもいそうなタダの爺さんだよ。」


「……じ、爺さん?」


 アレンは、口をあんぐり開ける。


「そう、じいさん。」


 紳士――――タダの爺さんは相変わらず微笑んでいる。


「で、ボウヤ、飛空船に乗るのかい?」


「今日は乗らないんです。オレが乗るのはあしたの飛空船です。」


 アレンが言う。


「ほう、何処どこに行くんだい?」


 爺さんが、目を大きくしながら聞く。


「…フォーズです。あなたは?」


 アレンが聞く。


「私かい?私はグルシアに用事があってね。おっと、いかんいかん、そろそろ出発の時間だ。じゃあの、少年、また、どこかで会おうの。少年にもアルカノスのご加護を。ヴァーレム。」


 

 《アルカノス》

  この世界全域に勢力を広げている宗教、アル

 カノス教の絶対唯一の創造神。

  


 爺さんは、アレンに祈りを奉げると、足早に飛空船搭乗口へと消えていった。




                      †


 

「さて、どこ行こうかな……。」


 爺さんと別れて1時間、飛空船発着所を出て、アレンは町中を見渡しながら歩き、どこへ行くかを考えていた。


「武器屋でものぞいて見るか。どこにあるのか知らんけど………。」


 アレンは、どこにあるのかも判らない防具屋を探し、セレスの町中を彷徨さまよい始めた。




「あ、武器屋あった。」


 しかし、その彷徨ほうこうは、ほんの数秒で終了してしまった。


 アレンは、突然目の前に現れた武器屋に吸い込まれていった。




「こんにちは………。」


 アレンは武器屋の店主のオヤジに挨拶をしながら武器屋に入っていく。


「ん?アレン?どうした?」


「…ヴァルドさん?」


 アレンの目の前で、店主のオヤジとライフルの銃弾を選んでいるヴァルドが、声をかけてきた。


「どうした、アレン、武器でも見に来たか。」


「ヴァルドさんは?」


 アレンが聞く。


「ああ、ここの武器屋みせの銃弾はな、結構性能いいんだ。ここで大量に買い溜めして置こうと思ってな。」


 ヴァルドが、手に銃弾を持ちながら、答える。




「君、ちょっと、」


「?」


 武器屋のオヤジが、アレンを呼ぶ。


「その刀、見せてくれないか?」


「え、ええ、どうぞ。」


 アレンは、背中に背負っている刀を抜き、店主のオヤジに手渡す。




「おお、やっぱりか!!良い得物持ってるじゃないか!君!!」


 オヤジは、凄く興奮しながら刀を眺めている。


「君!!この刀、売ってくれ!!」


「……え、ええええええ!??????」


 オヤジの要求に、アレンは戸惑っている。


「…って、冗談だ。大事にしなよ。」


 オヤジは、アレンに刀を返す。




「さて、行くか。そろそろ日が暮れる。」


 ヴァルドが、外へ出ようとする。


「アレンは、どうする?」


 ヴァルドが聞く。


「オレはもう少しここにいます。」


「そうか。」


 ヴァルドは、それだけを言い、外へと出て行った。



                    †


                    

 アレンが武器屋を出たのは、もうすっかり日が暮れた頃だった。町中にランプのあかりがき始め、昼間とは全く違う雰囲気を、セレスの町を包み込んでいった。

 

 アレンは、さっきヴァルドに教えてもらった宿屋へと歩を進めていった。


 


 数分後、アレンは宿屋にたどり着いた。

 そして、扉を開く。

 

 ギィィィィィ………


 扉を入ってすぐの所に位置している巨大な食堂に、アレン以外のギルドメンバーが椅子に座っていた。

 ヴァルドはビールを、ネーアはコーヒーを、アミノは、相変わらず、緑色の液体の入った注射器を、蛇のような腕に突き立てている。


「おお、アレン、やっと来たか。」


 ヴァルドが声をかけてくる。


「おい、そこのウェイター、そろそろ夕飯を持ってきてくれ4人分だ。」


「かしこまりました。」


 ウェイターはそれだけ言い、奥の厨房へと戻っていった。



「結構大きい宿屋ですね。」


 アレンが椅子に座りながら言う。


「まあ、スノーフォールのよかでかいだろうな。でも、帝国の首都・シルベストニアの宿の方がここの数倍はでかい。」


 ヴァルドがビールを飲みながら言う。


「へえ、ここより大きい宿屋があるんだ………。」




「お食事をお持ちしました。」


 そこに、先程ヴァルドが食事を頼んだウェイターが、食事を持って現れた。


「ほら、食え。もうこんなまともな食事は食えないかもしれんぞ?」


「やだ、ヴァルドさん、そんな縁起でもない事を………。」


 ネーアが顔をしかめる。


「明日怪鳥に喰われるかもしれん、タニアレン兵の生き残りの救出の時に誰かがミスって捕らえられて、首をねられるかもしれない。」


「………しつこい。」


 アミノが叱咤しったする。


「まあ、ハグっ、そんなこと考えてても、モグモグ、何にもならないでしょう。ゴクン。明日は、パクっ、鳥の丸焼きを食えるって、モゴモゴ、考えておけば良いんじゃないですか?ゴックン。おかわり下さい。ウェイターさん。」


 アレンが、食事を頬張りながら言う。  

 

「そうよ。そう考えれば…ね。」


 ネーアが言う。


「まあ、明日は早い。さっさと食って寝ろ。」


 ヴァルドは、それだけを言い残し、そそくさと、客室へと戻っていった。

 それから、ネーア、アミノも席を立ち、客室に戻り、アレンだけが、テーブルに取り残された。


「なんで、この料理美味いのに、みんなおかわりしないんだろ…………。」


 アレンも、食事を食べ終え、自分の客室へと戻っていった。

 

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