二章 旅立ち
そろそろ戦闘シーンとかも入れていきます。
もうひとつ物足りない、と思われるかと思いますが、長〜〜い目で見てやってください。
前回までのあらすじ
魔物を倒す旅にでた少年・アレンは、行き倒れたところをギルド【暗黒の騎士のマスター、ヴァルドに助けられる。
アレンは、【暗黒の騎士】に入り、ギルドのメンバーと旅に出ることに………。
登場人物
アレン・サーペント 魔物を倒し、自分の名を上げるため旅に出た15歳の少年。この物語の主人公。
趣味:剣を眺めること
ヴァルド スノフォール在住のギルド【暗黒の騎士】(ダーク・ナイト)のギルドマスター。村の近くの峡谷でアレンを拾う。
趣味:ライフルの手入れ
アミノ スノーフォール在住の狂科学者。ギルド【暗黒の騎士】の副ギルドマスターの1人。
趣味:アレン苛め
ネーア スノーフォールの道具屋の店主の魔法使い。アミノと同じく、【暗黒の騎士】の副ギルドマスター。
趣味:魔導書を読むこと
「―――んっ……、ふぁぁぁぁぁ、よく寝た……。」
アレンは、久々にベッドの中で朝を迎えた。
アレンは、ベッドから出て、カーテンを開ける。雪に反射した太陽の光が部屋と、アレンの目に飛び込んでくる。
外では、村の子供たちが雪で遊んでいる。
その光景を見たあと、アレンはレザーアーマーに着替えて朝食を食べに下の食堂へと降りていった。
「あら、ボウヤ、おはよう。」
宿屋のおばさんが笑顔で挨拶をしてくる。
「おはようございます。」
アレンは、その挨拶を返す。
「まだ朝食が出来てないのよ。そこのテーブルのところに座って待ってな。もう少ししたら持ってきてあげるから。」
アレンは、おばさんの指を指したテーブルに着く。
―――10分後―――
「はい、お待たせ。」
おばさんが、パンやスープなどの入った皿を載せたお盆を持ってくる。
「おお、美味そう!いっただっきまーす!!」
アレンがパンをかじる。
「ほぅむ、ふぅめぇ!!(うん、美味ぇ!!)」
「美味しい?」
アレンは首を縦に何回も振り、それから飲み込んだ。
「ここ雪多いですね。」
窓の外を見ながら、アレンが言う。
「そうね。ここは結構雪がよく降るところだからね。この村の名前、スノーフォールって言う名前の由来も、『雪の降る町』って言う意味だしね。
でも、こんなに雪降ったのは久し振りね。」
おばさんがニコニコしながら話す。アレンも、その話をパンやスープを頬張りながら聞き入っている。
「そういえば、ボウヤ、鎧着てるけど、傭兵さんなの?」
おばさんは、聞く。
「いえ、ただの駆け出しの戦士です。」
アレンは、笑いながら答える。
「にしても、このパン美味い!」
「…餓鬼……、いつまでタラタラと食事しているのかネ………。」
「………え?」
アレンは振り向く。そこには、恐ろしい眼つきでアレンを睨んでいるアミノの姿があった。
「…ひっ……ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
アレンが、椅子の上から、転げ落ちそうになる。
「あら、誰かと思ったら、アミノさんじゃないの。」
だが、おばさんは意外と冷静だ。おそらく、このようなことはこの村では、日常茶飯事のようだ。
「アミノさんも、朝食いる?」
おばさんは、相変わらず、ニコニコしている。
「朝食だと?そのような時間の掛かる栄養摂取、私は好きじゃないんだヨ………。」
「時間の掛かる……?」
アミノの発言に、アレンが驚いている。
「……そうだヨ。時間の掛かる栄養摂取なんて、馬鹿げているとは思わないかネ……。」
「……じゃ、じゃあ、アミノさんはどうやって………、」
「……こうするんだヨ………!!」
そう言うと、アミノは何処からとも無く、注射器を取り出した。その注射器の刺さらないように付けてあるキャップを外し、針を、腕に思いっきり突き立てる。
「………えっ?ええええええええええええええ?」
アレンは、その光景を見て、ドン引きしている。
「何をそんなに驚いているのかネ………?慣れればそんなに痛みは判らなくなってくるヨ。寧ろ、この針の痛みが快楽に変わってくる………。」
「………。」
おばさんは、沈黙している。
「…心配は無い……、餓鬼の分の栄養も用意してあるヨ。いま打ってあげるヨ……。」
「いや、良いです!良いです!なんか、どっか変形しそうだし………。」
アレンは、必死に抵抗する。
「別にいいだろ?折角画期的な栄養の摂取方法教えてやったのだから、少しくらい角が生えたり、羽根が生えたりしたって……。さあ、腕を出し給え。」
アミノが、アレンの腕をつかむ。
「やっぱり、容姿まで変えるつもりだったんですね!!やめてください!!もう良いですから!!」
「もういいだろ!そんなガキ虐めてなにが楽しいんだ?」
そこに、ヴァルドが現れる。
「……チっ……、五月蝿いのが来たヨ。」
アミノが、宿屋の外に出る。
「アレン、さっさと食っちまえ。もうすぐ出発だ。」
「は、はい……。」
アレンは、すっかり冷たくなったパンとスープを口の中に放り込んだ。
「じゃあね、ボウヤ。まだ泊まりにおいで。」
宿屋のおばさんは、アレンが外に出てからも、扉から上半身を乗り出して手を振ってくる。アレンも、手も振り返す。
「さて、そろそろ出発するか。」
「……あれぇ?ネーアは?」
「そのうち来るさ。」
ヴァルドが答える。刹那、突風がアレンたちの前から吹いてくる。その突風は積もっていた雪を巻き込みながら、アレンの後ろで、小さな竜巻になる。
「うわぁ!?」
アレンは、後ろの竜巻に驚く。
「そんなに驚くことはないさ。」
ヴァルドが、アレンにそう言うと、その竜巻が弱まると共に、竜巻の中から、ネーアが現れた。
「ネッ……ネーア?」
「ごめんね。驚かすつもりは無かったんだけど。」
ネーアがニコニコしながら謝る。
「いいよ、いいよ。」
アレンが言う。
「なあ、アレン。」
ヴァルドが、言う。
「なんですか?」
「昨日から気になっていたんだが………。」
「だから、なんですか?」
アレンが早く言うように促す
「その刀、見せてくれ。」
「……いいですけど?」
アレンは、背中の日本刀を抜いてヴァルドに手渡す。
「………やっぱりか。」
ヴァルドが刀の刃を見て、そう言う。
「……ふぇ?なにがです?」
アレンが聞く。
「この整った斑紋……、これ、売り飛ばせば、軽く山三つは買えるぞ。」
「や………山三つ???……そんなに……すごい刀なんですか?」
「…神気風斬……。これを持った人間は、通常の5倍の力を得ることができると言われている名刀だ。」
ヴァルドが、刃を眺めながら答える。
―――神気風斬、誰でも一度は聞いたことのある刀の名前であり、戦士なら、喉から手が出るほどの一品。
「ま、せめて、盗られないように気を付けるこったな。」
「はい。」
ヴァルドは、そう言い、刀を返す。アレンはそれを受け取り、鞘へ戻す。
「―――さて、そろそろ出発するか。」
ヴァルドが村の外へと歩き出す。アレンらも、後に続いた。
†
スノーフォールの外は、殆ど除雪されてなく、道が殆ど見えない上に、アレンの履いていたブーツの中に、雪がどんどん入っていく。雪が入るたびに、アレンは顔を顰める。
「やっぱりすごい雪だな………。」
「慣れればなんとも無くなるさ。」
雪に足をとられて、歩き難そうにしているアレンを尻目に、ヴァルドはどんどん進んでいく。
「まあ、後5時間くらい歩けば雪の無いところに出るさ。」
「5時間か………長いなぁ。」
ネーアがぼやく。
「さてと、そろそろ休むか。」
ヴァルドが、雪に中でそんなことを言い出す。
「………ヴァルド………、お前はほんとに馬鹿じゃないのかネ。」
村を出発してから、ずっと口を噤んでいたアミノが、相変わらずの毒舌でヴァルドを批難する、
「こんな雪の中で、どうやって休むと言うのだネ?こんなに雪があったら、座ることも出来ないじゃないかネ………。」
「だから、お前に協力してもらう。」
「……私に、雪掻きでもしろと?」
アミノが、ヴァルドを睨む。
「魔法で雪を消滅させてくれって言ってんだ。誰もお前に肉体労働強制させてなんかいねェよ………。」
ヴァルドが面倒くさそうに言う。
「……チッ、町に着いたら、マジックエーテル(MP回復薬)買ってもらうヨ?」
そういうと、アミノは、空に向かって手を掲げ、なにやら呪文の様な言葉を呟いている。刹那、アミノの周りの雪が、昇華を始め、みるみると空気中に消えてゆく。
「ホォラ………、消えたヨ。」
「…ご苦労さん。」
そこは、アミノの周りだけが春になったかのような、異様な風景が広がっていた。(アミノがそこに立っていることで、その異様な風景が、さらに異様さを増す。)
ヴァルドが、自分の荷物の中からシートを取り出す。そして、それをアミノが昇華させたところに敷き、その上に座って自分のライフルの手入れを始める。
「…アミノさんって、怖いけどすごい人なんだな。」
アレンがヒソヒソ声でネーアに話しかける。
「そうね、あの人は昔どこかの機関で研究員していたらしいから、魔法には詳しいのよ。」
ネーアが答える。
「あ、そうそう、アレン君も魔法使えた方がこの先楽だと思うから、教えてあげるよ。」
すると、ネーアは、自分の荷物の中から、なにやら分厚い本を取り出す。そして、その本を開く。
「えっとね、まず、魔法を発動するには、始動語って言うのを唱えないといけないのよ。あ、始動語って言うのは呪文のようなものね。でも、ただ始動語唱えただけで、魔法は発動する訳じゃないのよ。」
「そうなの?じゃあ、どうやって?」
「まず、空気中の魔力と自分の体内の魔力のことについて勉強しないとね。」
ネーアが本をアレンの前に出し、所々、指を指しながら説明する。
「まず、自分の魔力を掌に集める方法を教えるわ。掌を出して。」
アレンは、掌を前に出す。
「で、手に体の力を集中させるイメージを頭に思い浮かべて見て。普通なら、一発でできるような事だから、そんなに難しくない筈よ。」
「…うん、わかった。」
アレンは、ネーアに言われた通りにする。
「………はっ!!」
何も起きない。
びっくりするほど、何も起きない。
「…………」
「…………さっきの、簡単だったんだよね?ネーア………?」
アレンとネーアの間に、しばし沈黙が流れる。
「ま、まあ、そのうち出来るようになるわよ。頑張れば……ね。」
「…………」
アレンは、その場に蹲ってしょ気ている。
「と、とりあえず、さっき説明したように、空気中の魔力と自分の体内の魔力を融合させてから、始動語を唱えるの。わかった?」
「…………うん。」
「ま、まあ、まだ時間あるし、ゆっくり理解していけばいいよ。」
ネーアが慰める。しかし、アレンは、完全にしょ気てしまっている。
「………どうせオレなんか………。」
「おい、アレン、いつまでもしょ気てんじゃねぇ!早く刀を抜け!アミノとネーアも武器を取り出せ!!」
「……え?」
ネーアは、魔力で弓を生成し、アミノも、呪文を唱え始める。ヴァルドも、ライフルを構える。
その銃口の先には、無数の狼の魔物の眼が、こちらを睨み付けていた。
「………!?」
アレンは、立ち上がり刀を抜く。
「……ちっ、狼の群か………、また面倒なのに絡まれたなぁ、オイ………。」
ヴァルドが面倒くさそうに言う。
「面倒臭いなら、さっさと殺してしまえば良いじゃないかネ。」
アミノが呪文を唱え終わらせ、ヴァルドに言う。
「まあ、この位の群なら、私1人でも殺れないこともないけどネ……。出でよ………私の合成獣……。」
アミノの周りの土が、盛り上がる。そこから、蛇などの動物を合成させた人間のような物が現れた。
「これが……、私の研究成果だヨ………。」
「けっ、相変わらず悪趣味な武器だこと………。」
ヴァルドが嫌味を言う。
「魔物が来たぞ!」
魔物の群が、アレンらに飛び掛って来る。ネーアが、魔力で矢を作り、さっき作った弓に番え、弦を離す。その矢は見事、魔物1匹に命中する。アレンも、噛み付こうとして来る魔物を数匹斬り伏せる。
ヴァルドも、魔物達をどんどん撃ち殺していった。
アレン達の周りには魔物の死骸が転がる。
「おい、アミノ!少しはお前も動け!」
ヴァルドが叱咤する。
「……五月蝿い、分かったヨ。………血を啜って来い、合成獣ァ………。」
アミノの合成獣が動き出した。刹那、魔物数匹が真っ二つになる。
「………弱い………、弱いネ………、こいつら。」
合成獣は、どんどん魔物を切り刻んでいく。
「………オレも、負けてられない!!」
アレンも負けじと、魔物を切り伏せる。
「ラァァァァァァァァァァァ!!」
アレンが刀を振る。魔物が2、3匹宙に舞う。
「アレン!後ろ!!」
ヴァルドの声。アレンは後ろを振り向く。
「!!!」
アレンの後ろに、魔物が走ってくる姿が眼に飛び込んで来た。アレンは刀を振り被り、刀を振り下ろす。
しかし、アレンの刀は魔物ではなく、空を切る。
魔物は、アレンの斬撃を避けたのだ。そして、その魔物の爪がアレンの腕に振りかかる。
「(でも、オレには魔石がある!!)」
アレンの腕に痛みが走る。防護のシールドは張られなかった。
「(……どういうことだ………!?)」
アレンは痛みで刀を落としてしまった。
「くっそ……、どうすれば………。」
魔物の爪が、またアレンに襲い掛かる。アレンはそれを腕でガードをしようとする。
「ギャウウン!!?」
そのとき、アレンの手から、光線が迸る。そして魔物が血塗れになりながら飛んでいく。
「えっ?今のって………魔法?」
ネーアが、驚嘆の声を上げる。
「ま、魔法?」
アレンも、驚いたような顔をしている。
「……どうやら、さっきアレンが殺った魔物が、最後だったようだな。」
アレンは周りを見回す。もう魔物はいなかった。
「……オレが、魔法使えた……。」
アレンが、口をあんぐり開けている。
「うそ………、魔石があっても、まだ始動語も教えてないのに……。すごーい!!アレン君、意外と魔法の素質あるのかもね。」
ネーアが、大喜びしている。
「……お、オレが魔法使えたー!!おおおおおおおお!!!!」
アレンも、興奮を抑えきれないようだ。
「それにしても、なんで防護のシールド、展開されなかったのかしら………?」
ネーアが首を傾げる。
「………成る程ネ。」
アミノが、さっきアレンに攻撃していた魔物の傍にしゃがみ込みながら、言う。
「どうした?」
「この魔物の爪………、かなり弱い魔力だが、破魔の魔石になっているようだネ。」
「破魔ぁ?」
ヴァルドがアミノに近寄る。
「恐らく、この破魔の魔石の効果で、シールドが破壊されたのだろう。破魔の魔石の魔力は、あの餓鬼の持っている普通の魔石の魔力と反発し合うのだヨ。あのシールドの魔力は薄いからネ………、破魔の魔石があれば、簡単に破壊できるのだヨ。」
アミノが説明する。
「まあ、アレンの魔法防壁が破壊された理由も判ったことだし、そろそろ出発するぞ。荷物を纏めろ。」
そう言い、ヴァルドが歩き出した。アレンらも、その後についていく。
「もう1時間歩けば、多分町に着く。いくぞ。」