ネズミ捕り
「へえ。これがハカセが開発した最新式のネズミ捕りですか」
新たに我が研究所に配属された助手が、一見何の変哲もないネズミ捕りのカゴを覗き込んでいる。この男、少し前まではほか研究所に所属していたのだが、その研究所の存続が危ういとのかなり確度の高い情報が流れてすぐに辞め、この研究所に流れて来たのだ。何とか存続させようと頑張っている同僚をあっさりと見捨てて。
「どこらへんが最新式なんですか?」
「カゴより大きなネズミが捕れる」
愚問に答えてやった。
「このカゴより? ははは。ハカセも冗談がうまい」
冗談なものか。現にかかっているではないか。
沈みかけの船からはネズミすら逃げ出すとの言葉、知っているか。人は何とか沈まないようにと頑張るものだ。
おしまい
ふらっと、瀬川です。
自ブログに発表したことのある旧作品です。
さくっとお楽しみください。